物流対策と適正な価格形成対策を重視 全農2024年3月27日
JA全農は3月26日の臨時総代会で2024年度事業計画を正式に決めた。2024年物流問題への対応と生産コストを考慮した適正な価格形成、環境に配慮した農業の実践などに力を入れる。
東京・大手町のJAビルで行われた会見。野口理事長(中央)、桑田専務(左)、安田専務
4月からの改正労働基準法の適用で農畜産物を運べないリスクや配送コストの上昇が懸念されており、全農は物流問題を「2024年の最重要課題の1つ」と位置づける。
米穀事業では米穀の積み降ろしの手荷役を削減するため、全農統一フレコンや一貫パレチゼーションシステムの普及・拡大に取り組んでおり、さらに昨年11月からは米専用列車「全農号」の定期運行を開始した。青森から福井までの日本海側路線の各地で米を積み込み、大阪から西日本と東海地方に配送する。
1回の運行で500tを輸送、月2回の運行で年間約1万2000t程度を輸送する。
また、日清食品と連携し原料となる米を同社工場に輸送し、復路は同社の即席食品を輸送するなどラウンド輸送を進めている。そのほか、青果物のJA域を越えた広域出荷施設の整備、他企業の消費地拠点を活用した効率的な輸送体制の整備などを行う。
一方、物流コストの上昇は産地の負担となる。野口栄理事長は臨時総代会後の会見で「物流コストの上昇を販売価格に転嫁するよう要請していくほか、生産現場の負担抑制と価格形成に対する政策要求、消費者の理解醸成など負担が産地に偏らないよう努めていきたい」と強調した。
とくに日々の需給で価格が決まる青果物については業界への要請やCМなどで情報発信に力を入れながらも桑田義文専務は「食料安全保障の論議が進んでいるなか、既存の価格補てん対策の強化や、生産者の所得が確保される今までにない政策も要請していく」と話し、「価格転嫁の結果、消費者が最後にすべてを負うという姿ではないかたちを追っていかなければならない」と生産者の所得を保障する政策の必要性も指摘した。
適正な価格形成については基本法改正の焦点の一つ。審議が始まった基本法改正について野口理事長は食料・農業をめぐる情勢が大きく変化しており「改正は当然のこと。(改正の方向は)生産基盤を保護して国内農業の発展に資するもの」と評価し「国の動向に応じた取り組みをさらに強化していきたい」と述べた。
その基本法改正案では環境と調和のとれた産業への転換も柱で全農は「グリーンメニュの実践」も進める。グリーンメニューは「化学肥料低減」、「化学農薬低減」、「温室効果ガス削減」に効果がある農法や資材などで48のモデルJAで実証が行われている。
安田忠孝専務は「実証内容をまとめ水平展開していき、(実践内容を各地の)栽培暦に落とし込む」ことをめざす考えを示した。
また、肥料では東京都との連携で下水回収リンの肥料利用の実用化に向けた取り組みを進めているほか、鶏糞燃焼灰も化成肥料の原料として使用しており、肥料製品としては全国で約10万tが流通、24年度は堆肥や燃焼灰に加え、回収りんなど新たな資源活用も含め15万tを目標に取り組みを進める。
24年度は中期事業計画の最終年度。全農は2030年のめざす姿として「持続可能な農業と食の提供のために"なくてはならない全農"であり続ける」を掲げている。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日