「小さな協同」実践 JA松本ハイランドの自己改革 新世紀JA研究会全国セミナー2024年7月17日
全国のJA役職員でつくる新世紀JA研究会と長野県のJA松本ハイランドは7月11、12日、松本市で第31回の全国現地セミナーを開き、「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力」をテーマに、同JAと同県JAみなみ信州の取り組み事例の報告とディスカッションを行った。
自己改革の取り組みを報告するJA松本ハイランド・田中均組合長
「アクティブメンバーシップの確立を目指して~『小さな協同』の実践~」のテーマで報告したJA松本ハイランドの田中均組合長は、「JAが協同組合として取り組んでいる〈協同〉が、『大きな協同』に偏っていないか」と問題提起した。
連合会による事業統合やJAの広域合併など、経済合理性(スケールメリット)の追求にとらわれ、地域(支所)での組合員の悩み、困りごとの解決、願いごとの実現がおろそかになり、アクティブメンバーシップ、つまり当事者意識が希薄になっているのではないかとみる。
そこで、これまで取り組んできたJAの「自己改革」は、組合員にとってお仕着せになっているのではないかと指摘。その主な要因を、戦後の農協が、いわば「官製組織」の面があったことに求める。従って「JAの本来の自己改革とは、当事者意識をもって組合員自らが考え実践することではないか」と、JA事業への組合員の主体的な参加の重要性を強調する。
JAみなみ信州 寺沢寿男組合長
支所運営委を実践組織へ
この考えから同JAは、従来、組合員の意見を聞く場であった支所運営委員会を「支所協同活動運営委員会」に改組した。「組合員が主体となって、組合員の願い事や困りごとを話し合い、その実現や解決に向けて協同活動を実践することを目指す」という。
「組合員の声を聞く対話は入口に過ぎない」として、同JAは協同活動実践の組織として「夢あわせ大学」(夢大)を設け、そのなかで「協同活動夢あわせ塾」を開いている。毎年20人ほどの塾生が、講義やグループワークなどを通じて、1年間、じっくりJAの歴史や役割について学ぶ。これまでの200人近い卒塾生は、JAの組合員組織など、さまざまな分野で地域のリーダーとして活躍している。
有機農業に取り組み、「夢あわせ塾」で講師も務める1期生の菅谷信さんは「自らの思いを地域で実践してきた。取り組んできたことを塾で発表することで、自らも進化できる。仲間と一緒に地域を元気にしたい」と、仲間づくりに努めている。
このほかセミナーではJA松本ハイランド女性参画センター運営委員会議長の大島澄子さんが女性参画の取り組みを報告。同JAの女性総代比率は20%を超え、女性理事は10人に達する。大島さんは「女性が家族の健康や家計を心配するように、組合員の立場で考え、ささいなことでも参画して発言することでJAは変わっていく」と、主体的な参画を強調した。
報告者をパネラーにディスカッション
行政と協働で担い手支援
セミナーでは行政と協働で取り組む、同県JAみなみ信州が「担い手就農プロデュース」事業を紹介。同JAは管内にある14市町村と協働して農業の担い手の勧誘・研修体制・就農計画・営農管理などでの支援し、成果を挙げている。
同JAの寺沢寿男組合長は、「新規就農支援は単に農業者を確保するだけでなく。次世代のJAのリーダー・牽引車を育てることでもある。それには多様な経歴を持つ新規就農者の知識・創造の力を引き出すことが求められる」と組合員大学を開講するなど、人材の発掘・育成に努めている。
◇
なお、セミナーには全国のJAから役職員など約100人が参加し、JAが取り組むべき以下の7つの課題を大会アピールとして決議した。
①農業振興を農と食・環境で支える新総合JAビジョンの確立と運動の展開、②食料・農業・農村基本法見直しへの対応、③農水省の監督指針改定、早期警戒制度への対応、④地域に根差した信用・共済事業の強化と営農・経済事業収支の全JA黒字化への挑戦、⑤教育活動、ネットワークづくりの強化、⑥頻発する自然災害、人為的災害への対応、⑦貯金保険制度の掛け金凍結。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日