JAの活動:第67回JA全国女性大会特集
【第67回JA全国女性大会特集】里山と生きる 石坂産業女性専務に聞く(2)「産廃から土」循環のカギ2022年1月21日
埼玉県三芳町の石坂産業は約50年前から産業廃棄物を「ごみにしない技術」に挑戦。98%の再資源化を実現するなかで、工場周辺の平地林の整備と農園づくりにも取り組み、自然と地域と共生する企業の姿をめざしてきた。こうした産業廃棄物処理業の大きな転換に取り組んできたのが、現在の石坂典子社長と石坂知子専務だ。石坂専務にこの20年の歩みとめざす姿を聞いた。
里山保全が評価され農業生者に取り組み数多くの野菜が生産されている
一方、産業廃棄物の処理からは「土」も生まれている。そこから「農」への関わりも始まった。
受け入れる廃棄物のうち、コンクリートと木屑は破砕することによって100%再資源化製品に生まれ変わります。一方、家の解体で出る屋根、基礎、柱などいろいろなものが混ざった混合廃棄物は分けることが困難です。
環境省の調べでは2016年でリサイクル化率が全国平均58%です。そのなかで私たちは98%以上のリサイクル化率を誇っています。手選別も含めて、あらゆる機械装置を複合的に使って分別していった結果です。ただ、ここに満足しているわけではなく100%再資源化することが、創業者の夢であり、私たちの夢でもあるということです。
情報公開することによって、有識者の方々も訪れ、こんな技術がある、こんな研究を共同でやっていかないかという声もかかるようになりました。今では「分ける技術」を共同研究中です。また、コンベアを流れる廃棄物の一部をAIを使って適切にピッキングするロボットなども開発しています。夢としては人が行っている危険な作業はすべてロボットに置き換えたスマートファクトリーです。
実は廃棄物のなかに含まれている土砂を加工して製品化し、農業に使えないかという研究もしています。建物を解体することで空気が入り、土砂のなかに含まれている微生物が活発化しているということが分かったのです。その土を使ったビニールハウスでミニトマトを育てましたが、糖度14度以上の甘いトマトができました。
再資源化が「土」へ
6年前に石坂オーガニックファームという農業法人も立ち上げました。この地域でも高齢化が進み、後継者がいないということから、私たちの里山保全への取り組みなどを評価してもらったのか、農家の方から農業をやってほしいといわれるようになりました。そこで法人を立ち上げて農地をお借りしています。
今は四季折々の120種類の野菜を育てつつあります。最終的には80種類ぐらいに絞り有機栽培をして、その価値が評価される価格で売っていきたいと考えています。
収穫された野菜は、三富今昔村内での販売や、食育プログラム「おいしい体験」の食材として提供しています。また、キッチンカーを購入し東京都内でマルシェにも出店しています。農地面積は6000坪(1坪3・3平方メートル)で4000坪は購入し、2000坪を借りています。この地域に江戸時代から続く、落ち葉たい肥を入れるなどして土づくりから取り組んでいます。 地域の困りごとを解決しようということですが、キーワードは循環です。そのなかで私たちが大事にしているものは「土」ということです。産業廃棄物の処理からそこに行き着いたということです。
こうした事業展開の原動力はどこにあったのか。
やはり産業廃棄物の処理がなければ日本の循環経済が回らないと思うからです。とくにこのエリアは都心の廃棄物が50%、残りが関東です。
一般廃棄物は年間4700万t、それに対して産廃は年間4億t近く排出されていて、この水準は変わっていません。これを処理しなければ今のような衛生的な環境は保たれないということです。
そこでぜひいろいろな方に私たちの産廃処理工場を見てもらい、実際を知ってもらって、この価値を理解していただきたいというのが私たちの思いです。
今はSDGsの観点から外資系の取引先も増え、世界40カ国以上の方々が見学に来ています。
社長と専務のコンビは今年で21年になります。今までの産廃処理業のイメージを払拭(ふっしょく)したかったというのが私たちのいちばんの原動力ですね。後は次につなげたいという使命感です。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日