東電に営業損害賠償 緊急要請書 手渡し2015年10月20日
「離農のリスクも」
JAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会の大橋信夫会長らは、10月6日、東京都内の東京電力本店でJAの営業損害賠償に関する緊急要請書を手渡した。
東京電力が9月17日に示した「平成27年3月以降のJA等農林業団体の営業損害に関する新たな賠償方針(協議案)」に対し、JAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会は10月6日、協議会の大橋会長、結城副会長と被災JA組合長(JA新ふくしま、JAたむら、JAふたば)が要請書を手渡した。同日、同要請団は自民党県選出国会議員、農林水産省、経済産業省、復興庁にも緊急要請書を渡した。
要請書を渡すに至った経緯として、東京電力が9月に示した案が、JAや農林業団体の特性を理解していないことが上げられる。
今回の要請では、主に次の3つのポイントを強調している。
(1)復興し事業再開すると、逸失利益が発生する
東京電力の示した案では、27年2月の時点で、逸失利益がでていないJA等に対しては3月以降の賠償を打ち切り、27年2月の時点で逸失利益が発生しているものに関しては今後も賠償を続けていくというものだった。
しかし事故発生後の避難指示区域内の多くは、事故により職員などを大量に解雇せざるを得ない状況にあった。人件費は事故前より大きく減ったため、計算上逸失利益が発生していない状態にある。
しかし今後復興が進み農業再開となると、以前のようにJAとして資材や営農再開準備など行っていく必要が出てくる。その場合、再開のための職員の再採用が行われ、人件費は増加することが確実である。しかし収益はもどらない。これにより逸失利益が新たに発生することが見込まれるため、今回の案のように、2月で逸失利益がでていない事業所は打ち切りという考えではその後の事業に支障が発生する。
(2)建物再使用するためには、修繕費がかかる
財物賠償に関しては帳簿価格で一度支払いを受けているが、避難が終わり事業再開となった場合、修繕費が発生する。
建物は長期間使用していなかったため、動物の侵入などで荒れている。水道工事なども含めて行わなければならず、使用できる状態にするには、膨大な修繕費がかかる。実際に、あるJAの施設の修繕費の見積もりでは、受け取った帳簿価格の5倍の費用がかかるとされ、問題となっている。
(3)従来通り、事業ごとでの賠償に変える
東京電力の案では、従来行っていた事業ごとの逸失利益を認めるのではなく、会社全体の利益水準で比較していくというものだった。さらに事故前の利益水準にもどれば、その後の賠償は行わないといった内容だった。
現場では生産減退や風評被害による直売所などの減収で逸失利益が発生しており、会社全体収益の計算を行われても、影響の受け方はそれぞれで違う。
しかもJAは法的制約等により、民間企業のように他の地域で新たに事業展開を行うことが不可能である。その場所にあるJAの営業をやめた場合、その地域には穴があいたままで、埋まらない。
農協の特性に関して理解されていないとしか受け取れず、従来通りの賠償を続けてほしいといった考えだ。
また上記以外にも、28年12月まで賠償が決まっている農畜産物について、29年以降の賠償要請や、返答のないままになっている避難指示区域外の風評被害での農畜産物の赤字についての賠償の要請を行った。
あるJAの損害賠償に関する担当者は「赤字のまま米を作り続けていくのかといった不安を生産者は持っている。このままでは離農してしまうリスクがある」と話した。
(写真:JA福島中央会より提供)東電の村永常務(左)に要請する大橋会長
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日