ため池の耐震診断が低コスト・短期間で 農研機構ほか2019年12月20日
農研機構は、低コスト・短期間で行えるため池の耐震診断手法「SIPニューマークD法」を開発した。
地震時にため池の堤体の強度が低下する
東日本大震災などの巨大地震では、地震による繰り返しの力を受けることで、ため池堤体土(ていたいど)の強度が常時より低下する現象が発生し、堤体が大きく沈下して、決壊などの被害が発生するおそれがある。
このため強度低下を考慮した安全性を診断する必要があるが、特殊な土質試験が必要で、防災重点ため池に対して「詳細診断」を進めていくには多額のコストや期間が必要となる。
そこで農研機構は、一般的な土質試験だけで、ため池の決壊などにつながる、ため池堤体の沈下量を予測するモデルを作成し、地震時のため池沈下量を予測する手法「SIPニューマークD法」を開発した。
この手法は、「ため池防災支援システム」に組み込まれ簡易な条件設定で概略的な診断"一次スクリーニング"を行うことが可能な「サーバー版耐震診断システム」と、より具体的で詳細な条件設定が可能なPC版ソフトウエア「SIP?NewD」"二次スクリーニング"の2種類がある。
このシステムは、国や地方公共団体、民間企業などの担当者が、ため池の耐震診断評価を行う際に活用できる。
農研機構では、今後、さらに予測精度を向上させて耐震設計に利用するための研究開発を行うとしている。また、現状では3種類の堤体土(礫質土、砂質土、粘性土)について適応しているが、火山灰質土やマサ土といった特殊土にも適応できるよう研究開発を行う予定だという。
ため池耐震診断フローの例。詳細診断が必要なため池数を合理的に絞り込むことができ、診断コスト削減が可能に。
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