飼料用米の本作化を-日本飼料用米振興協会2020年11月25日
米の需給安定のため2021年産で主食用から飼料用米など非主食用米に作付け転換することが求められているが、短期的な生産調整の手段ではなく飼料用米を国産自給飼料の基幹として明確に位置づけるべきだとの声は多い。将来の水田農業を見据えた政策検討が求められるなか、(一社)日本飼料用米振興協会はこのほど米政策と飼料用米の今後を考える意見交換会を開き、畜産関係者も交えて議論した。
第1回座談会の様子
政策に不安 拡大進まず
千葉県旭市では2008年に畜産農家(養鶏・養豚)と耕種農家、飼料メーカーと行政で旭市飼料用米利用者協議会を設立、飼料用米の作付け取りまとめや価格決定、販売代金の管理などを行ってきた。
2019年産の飼料用米生産者は131人で協議会では413ha、2500tを受け入れた。同市内の飼料用作付けの9割以上を協議会で扱った。北総養鶏組合理事で宮澤農産の宮澤哲雄代表理事は飼料を「輸入にだけ頼ってはだめ」と飼料用米を使った鶏卵を生産し、採算を取るためにブランド化をめざす。ただ、米を給餌するとオレイン酸が増えて美味しくなるが「白っぽい黄身」はまだまだ消費者に認知されず、飼料にパプリカなどを追加して調整しているのだという。稲作・養鶏・消費者のサイクル形成が必要だという。
ただ、地域の飼料用米生産は減ってきている。2017年には3000tを超えたが2019年産は2700tだった。協議会を設立した2008年は世界の穀物価格が高騰したとき。当時は飼料用米もキロ50~60円で契約したが、その後、国際価格が落ち着くなか現在は20円程度だという。そこに主食用米の価格が維持されてきたため、今年も飼料用米から備蓄米に切り替えた生産者もいたという。技術上の課題もある。飼料用品種「ゆめあおば」は多収だが茎が太くてコンバインに負担がかかるといい、複数品種で作期を分散させる必要がある。そうした課題を現場では分かりつつも「政策がいつ変わるか分からないから、主食も作って販路を確保し、苦労しながら経営している」と地域の稲作農家の実情を話す。
米の機能をエサに活かす
(株)フリーデンの澤田一彦調査役は、米を飼料とするメリットを国が研究して畜種ごとに示すべきだと指摘した。米ヌカを飼料として活用することも考えられるという。米の機能性をいかに飼料に活かし、畜産物の付加価値につなげるかという観点だ。同時に家畜を健康に育てるため害虫に強いインディカ米を品種開発して農薬使用量を減らし家畜へのリスクを下げることも重要になるという。
飼料用米を自給飼料と位置づけることは「輸入を減らしカーボンフットプリントに貢献する」と指摘し、とくに若い世代は世界中でどのような過程で生産された食料かに関心があるとして、飼料用米を使った畜産物も生産プロセスをアピールすることも大事になると指摘した。
一方、現状の支援策は稲作農家への助成などに限定されており、畜産農家の飼料保管料や輸送費用などの支援も検討すべきだと主張した。
栽培技術の向上も課題
元東京農大教授で飼料用米振興協会の信岡誠治理事は飼料用米が拡大しない理由は「政策」と指摘。米価が上昇すれば生産者は当然、実入りのいい選択をするからだ。増産するには政策誘導する必要がある。
ただ、飼料用米の生産にも土地利用や技術などに課題がある。団地化してコストダウンを図るのはもちろんだが、単収が上がらない理由に「水」を指摘する。多収米は晩生で十分に登熟させ収量を得るには10月中旬まで水が必要になる。
そのためには10月まで湛水できるよう、水系ごとに団地化するなどの取り組みが求められる。もちろん個人の農家ではできず、土地の特性をふまえた地域全体の戦略として土地利用計画を描き、飼料用米の本作化をめざす必要がありそうだ。農地と同様に大型機械の導入、さらにコントラクター制度の整備、JAの倉庫やカントリーエレベータの利活用も視野に入れて考える必要性も指摘された。また、今年はトビイロウンカの被害が各地で目立ったが、澤田氏も指摘したように家畜への農薬リスクを減らすために抵抗性品種の開発が必要とされるなど、飼料用米生産に求められることは何か、という観点も必要になる。
同振興会は飼料用米を主食用米の従属的な役割にとどめるのではなく、国産自給飼料作物の基幹として明確に位置づけるべきだと主張してきた。これによって転作の手段ではなく、自給率向上という日本の食料政策の根幹としての政策が鮮明になる。同会副理事長の加藤好一生活クラブ連合会顧問は「食料主権に基づく飼料用米生産という国民の納得も得られ理解も広がる」と指摘する。
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