豚熱 神奈川で69例目発生――ワクチン接種農場のリスク管理徹底を 農水省専門家チーム2021年7月9日
農林水産省の拡大豚熱疫学チームは7月7日に豚熱の新たな発生予防対策を提言した。豚熱ワクチンを接種した農場での発生が確認されていることから、ワクチンだけで感染を完全に防ぐことはできないことを改めて認識する必要を強調している。
豚熱は今年1月から5月にかけて和歌山、奈良、群馬、三重、栃木、山梨で発生が確認されている(62~68例目)。これらはいずれもワクチン接種農場であり、調査チームの検証では「作業着、手袋、長靴の交換と交差汚染の防止」、「免疫を獲得していない豚群への対応」が不十分であることが確認された。
そのため改めて発生予防対策を提言した。
新たなに提言したのは「ワクチン接種農場における免疫を獲得していない豚群への対応」。
問題となるのは子豚。ワクチン接種した母豚から初乳によって移行抗体がもたらされ、それが一定量保持されている時期にワクチンを接種しても抗体価は上がらないため、移行抗体が低下してから接種する必要がある。
しかし、そうした移行抗体が低下しつつあると見られる離乳豚舎に移動した群は逆に感染のリスクが高いといえ、むしろ高リスクの個体が一定数存在することも念頭におく必要があると指摘した。とくに分娩舎から離乳豚舎へ集めたときで、提言では飼養衛生管理指針で定めている豚舎に出入りする際の靴や衣服の交換や手指と一輪車の消毒、豚舎開口部への防鳥ネットなどの設置が重要になる。また、健康観察と異状が認められた際の早期通報をとくに徹底する必要がある。
さらに子豚だけでなく肥育豚でも感染確認例があることから、肥育豚舎でも綿密な臨床観察を行い、早期通報に努めることが必要だと提言した。
新たなに「適切な豚熱ワクチン接種」についても提言した。
ワクチンの適切な温度での保管と溶解、接種前の臨床観察のために知識、母豚からの移行抗体の消失時期をふまえた適切な時期での接種などの重要性や、新たに認められた知事認定獣医師制度にもとづく接種者の知識、技量の確認なども求めた。
そのほか大規模農場でリスクが高くなることも指摘。飼養頭数が多いだけでなく、飼養に関わる人間も増え、外部との出入りが多くなるため、豚舎ごとの長靴、衣服、手袋の用意、交換の際の交差汚染防止などが改めて重要になる。
教育訓練も提言し、衛生対策は、作業に携わるすべての人が「漏れなく毎日欠かさずに統一したやり方で実施することが重要」と指摘した。マニュアルを農場ごとに作成し、さらに従業員の状況に応じて分かりやすい図や多言語での説明なども求めている。
また、疫学調査チームは陽性イノシシが周辺で確認されていても、農場主がイノシシを直接見ていないことなどで農場側の防疫意識が必ずしも十分ではない事例が確認されたことから、感染は「陽性イノシシそのものではなく野生動物等を介してウイルスが侵入した可能性が指摘されている」ことを改めて強調している。
なお、7月8日に神奈川県相模原市の農場の死亡子豚で豚熱の発生が確認された。国内69例目。神奈川県では初。飼養頭数は4328頭。農水省は同日対策本部を開催し、飼養豚の殺処分などすみやかな防疫措置の実施などを確認した。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日