【現場から考える水田農業対策】持続可能な米 多用途化に活路2026年4月1日
農水省は3月23日の食糧部会に1月末時点の主食用米の作付け意向をふまえると2026年産の主食用生産量は719万t~732万tとなり、27年6月末の民間在庫量は最大で271万tと、適正とされる180万t~200万tを大幅に超える見通しを示した。需給緩和で米価下落が懸念されるなか、持続可能な水田農業に向けて、今こそ「需要に応じた生産」の実現が求められている。今回は埼玉県と栃木県のJAグループの取り組みを取材した。
米粉用で安定経営へ
営農販売課 野中実課長
埼玉県北部の羽生市、加須市などを管内とするJAほくさいは約4700haの水田で水稲を中心に栽培しており、県内一番の米どころである。品種はコシヒカリ、彩のかがやき、彩のきずなのほか、高温耐性品種のにじのきらめき、さらに2026年産からは埼玉県育成品種では高温登熟性がもっとも強い新品種「えみほころ」も栽培する。
米による転作で水田を維持
一方、管内は低地が多く水はけが良くないため麦の作付けは難しい。そのため需要に応じた米生産には、米による転作で対応してきた。
なかでも力を入れてきたのが米粉用米だ。2023年産実績では集荷した30万袋(1袋30kg)のうち、約3万5000袋を米粉用米として出荷した。JA全農さいたまによる水田活用米穀の推進方針に応じて生産者に推進してきた。
品種は問わずJAに出荷した主食用米から仕向ける。生産者にとって労力は変わらず、新たな農機も必要としない。一方では米粉用米には国の水田活用の直接支払い交付金が支払われるため一定の収入のめどが立つ。JAでは「春の時点で一部でも当年産の収入が読める」として集落座談会などで説明し推進してきた。
JAほくさい本店
同JAの営農販売課の野中実課長によると、水田活用の直接支払交付金制度がなかった時には、需要に応じた生産といっても適当な転作作物がなかったため、休耕せざるを得なかったという。
「米による転作はこの地域の水田を維持するためにも重要になっています。とくに大規模な生産者にとって経営の安定にとって大切です」と話す。
ただ、2025年産では米価高騰のため、生産者からの米粉用米への仕向け申込量は大幅に減少した。一方、JA全農さいたまが推進する米粉用米など水田活用米穀の数量は県内をはじめとする実需者から需要をつかんだうえで設定している。
そのため26年産では米粉用米は23年産実績並みの仕向け量となるよう推進し、「米粉需要」にきちんと応えた生産、集荷に取り組みたいとしている。具体的にはまずは、昨年、米粉用米に出荷した生産者との結びつきを強めて出荷契約を推進する。
交付金を有効に
「26年産の主食用米価がどうなるか、不安に思っている生産者は多い。一方、米の需給状況に対してアンテナを高く張っている生産者からは米粉用米にしっかり取り組みたいという声もある。米価ではなく、交付金も含めた10a当たりの手取りで考える生産者も増えてきた」と野中課長は推進への手応えを話す。
JA全農さいたまによると、2025年産では米粉用米の作付け実績は314haと目標を大きく下回ったが、26年産では1480haを目標とする。県内の実需者をはじめとして需要量を確認して積み上げた目標だ。県内に実需者がいることは工場への輸送コストが抑えられるなどメリットもある。
JA全農さいたまでは、国の交付金制度や県独自の支援についてJAや生産者に周知し推進を図る。
米粉用米への支援は、水田活用直接支払交付金の戦略作物助成として10a当たり収量に応じ5・5万円~10・5万円の交付がある。さらに県は25年度の産地交付金では10a当たり5000円とし、24年度の3000円から引き上げた。(26年産の措置は未確定)
このほかに25年度は県単独事業として麦・大豆等作付拡大支援事業で、作付け面積を10a以上拡大した部分に対して10a当たり5000円を交付する措置も実施した。この事業では県と同額が国からも交付される。
こうした支援策を現場に周知、徹底して需要に応じた生産に取り組む。JA全農さいたま米麦課の藤原慶人課長は「実需者に安定して供給することが大切。26年産では需要にしっかり応えて信頼を得ていきたい」と話している。
需要に応じた生産必須 業務用シェア拡大めざす
栃木県の米の主な栽培品種は、コシヒカリ、なすひかり、とちぎの星、あさひの夢の4品種。JA全農とちぎでは主食用米の約8割を外食や大手コンビニ、量販店の総菜部門向けなど業務用に販売している。安定供給ができれば出庫も安定するため、計画的な米販売事業が展開できる。
県産の4品種とも業務用で使用され、米の品質が安定しており事業者からは食味の良さとともに炊飯時の炊きムラがないなど評価を得ている。多くは首都圏で消費され、物流コストを抑えられるという立地も生かして業務用需要に応えてきた。
最近は中京圏、関西圏での知名度アップにも力を入れている。量販店で販売されている弁当に栃木県産米使用のシールを貼ってアピールしたほか、県出身のタレント・U字工事をアンバサダーに起用して店頭でのPRも展開した。弁当に使用されていることをアピールするだけではなく、家庭用でも栃木県産米を選んでもらおうと、イベントに合わせて家庭用精米も店頭に並べて販売促進を図った。
こうした取り組みを進めてきたなか、26年産米の主食用米の作付け参考値として県再生協議会は5万2338haを示した。25年産の作付け実績より1割、約5800ha少ない。
契約栽培取引などを普及
JA全農とちぎでは事前契約に力を入れることにしており、今年からは生産コストをもとにした「営農継続可能な契約栽培取引」に取り組む。JAと生産者、JA全農とちぎと取引先の2者契約を進め、需要に応じた生産を進める。
また、昨年からは集荷対策にも力を入れてきた。JA担当者と同行推進する職員を米麦部に4人配置し、昨年12月までに347人の生産者を巡回した。
さらに今年1月からはJAへの出荷だけでなく米の需給見通しを説明し、需給環境を整えるためにも主食用以外の水田活用米穀に取り組む必要性を生産者に強調している。生産者への訪問だけでなく集落座談会への出席など「あらゆる機会を通して説明している」としており、1~3月までで382人の生産者を巡回した。
栃木県では主食用以外では飼料用米の生産が柱で、産地交付金の県設定メニューは25年産では飼料用米は10a当たり1000円だったが、26年産では同3000円に引き上げられる。こうした支援策についても説明に力を入れる。また、米粉用米の取り組みも重視しており、25年産から初めて取り組んだJAもあるほか、県内メーカーへの供給ルートがあるなど、有利な面を活用してJAや生産者に推進していく。
2月には県本部長や中央会専務などJAグループ栃木の幹部がJAの組合長らを緊急巡回して米の需給状況について情報を提供し、理事会で「需要に応じた生産」の推進を決議してもらうことなどを働きかけた。
JA全農とちぎでは「需給状況や政策的な支援など、あらゆる機会を通して生産者に正確な情報を伝えることがとにかく大事だ」と力を込める。
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