農政 シリーズ詳細

シリーズ:与野党の政策責任者に聞く「どう進める? 今後の農政」

2019.08.22 
【与野党の政策責任者に聞く 今後の農政】日本共産党 参議院議員 紙智子農林・漁民局長「家族農業を応援する政治へ転換」一覧へ

--農村の現場からはどんなことを感じましたか。

日本共産党 参議院議員 紙智子農林・漁民局長 農林漁業を国際市場に売り渡していくような、たとえばTPP、日欧EPAなど自由化路線が進み、これが日米FTAなど歯止めなき自由化へと進んでいくことで、大きな影響を受けていると思います。
 とくに日米二国間交渉、私たちはFTAと言っていますが、これは国民に隠したまま農業を売り渡していく方向になっており、私はこれは亡国の農政だと言ってきました。農林水産業とは命を支える産業であり、それを支える生産者が守られてこそ、地域も成り立ち、環境や文化も輝いていくと訴えました。
 それから、今年から国連の家族農業の10年が始まりました。なぜこういう提起が出てきたのかを考える必要があります。やはり効率優先で農業の企業化をすすめ、とにかく儲けを上げればいいということではない。家族農業は農業の持っている多面的な機能を本当に機能させていく、地球にとっても国民にとってもすごく大事なことだということを改めて受け止めていく必要があるのではないか。農林漁業が輝き家族農業を応援する政治に変えていこうということをずっと訴えてきました。
 安倍農政はうまくいっているかのような宣伝をしますが、現実には現場と大きなギャップがあるということをどこに行っても感じました。安倍政権にこれからも農業を任せたいなどという声は1つもないです。
 ある地域では、百姓やって飯(まま)食えるようにしてくれ、と言われました。農業では食べられないという裏返しとして言ったのだと思います。輸出すればバラ色かのように言うが利益を上げられるのはごく一部の人ではないかという指摘もありました。


 --選挙結果をどう見ますか。

 
 比例票は自民党が1771万票でしたが、2016年参院選は2000万以上の票がありましたから大幅に減らした。しかも改選比で9議席減らした。参議院の過半数は123議席ですが、それを下回りました。こういう結果を真摯に受け止めるべきだと思います。
 野党は32の1人区で統一候補を立て10選挙区で勝ちました。東北6県では3年前の2016年は野党が5県、今回が4県で勝ちましたから、12議席のうち野党9対自民3です。そこにも根本にあるのは農業問題がやはり争点になっている。改憲勢力が3分の2を割った点でも、安倍政権への審判が下されていると思います。


 --今後の農政では何を追求しますか。

 まず、日米二国間のFTA交渉は中止すべきだという立場です。
 そして農業を基幹的な産業に位置づけ食料自給率を引き上げていくということです。党としては早期に50%の達成をめざし、さらに引き上げるとしています。食料自給率目標をきちんと据えて、そこに向けて努力をしていくことが大事だと思います。
 それから国連の家族農業の10年が提起されているように、大小多様な農業経営が成り立つような支援をしていくべきだと思います。農村で暮らせる条件を作っていくということに力を注がなければいけないし、党としては以前から主張していますが、価格保障と所得補償を組み合わせた政策の実施が基本だということです。農業大国のアメリカでもその仕組みをつくって農家を支えているわけですから、遠慮なく実施すべきだと思います。


 --秋から基本計画の見直しも行われます。

 基本計画も本来は国会に提出して国会での議論を踏まえて作っていくべきだと思います。各党の意見も踏まえて仕上げていかなければならないのに、とくに安倍政権になってからは十分な国民的な論議もないまま、先に閣議決定してしまうことも多い。逆立ちしてしまっているので、国民の意見を聞き、そのために国会議員は国民の代表としているわけですから国会に審議する場をつくるべきだと思います。
 基本計画の議論では現行の基本計画を総括しなければならないと思います。どこに問題があったのかという検証がなければ次の方向が出てこないはずです。
 大問題だと思うのは、食料自給率の低下の根底に生産基盤の弱体化があるということです。安倍総理は所信表明演説などで過去最高の農業生産額、農業所得だったということを繰り返し言っていきましたが、よくよく分析すると生産額が上がっているのは供給量が減って価格が上昇しているからです。米も肉も野菜も生産量は下がり傾向です。
 農地も農業者も減って全体として生産基盤は減少傾向にある。この問題にきちんと焦点を当てて、なぜそうなっているかを分析し、それを打開するためにどうするのかという話をしていかなければなりません。原因も解明されず政策の総括もなしで垂れ流しの政策ということでは絶対によくなりません。生産基盤の弱体化の現実を踏まえてどうすれば打開できるかを議論すべきだと思います。
 そのなかで私たちは規模拡大一辺倒で本当にいいのかという議論もしています。酪農でも適正規模があり、いちばん所得率の高くなる規模があるということを研究者も出しています。だから、何でも規模拡大がいいわけではないことが分かってきたわけで、所得をあげ、地域社会を守る政策にしていかなければなりません。ところがなかなか政策は変りません。規模拡大の意欲がある農業者には支援するが、現状を維持する農業者への支援は不十分ですので、この政策のあり方も変えていかなければいけないと思います。
 とくに家族農業は地域で働き、その地域を支えています。そういう視点が抜けて効率一辺倒になってしまうと地域が壊れてしまうと思います。
 福井県のある町は地域がなくなってしまうという危機感から、町ぐるみで都会から若い人を呼んできて農業研修をする場をつくっていますが、これまでに26、7人が新規就農者として定着しているということです。聞いてみると地域そのものが魅力だと言っていました。お年寄りもすごく温かく自分の技術を伝えようとしてくれるなど、都会にはない人間関係もいいと思っているということです。生産する喜びも伝えて地域を再生させていこうというこうした取り組みは、あちこちで始まっていますから、そこに光を当てて、政治が応援するべき方向を考えていかなければならないと思います。


 --農協改革はどう考えますか。

 農協はそもそも協同組合ですから、組合員自身が自主的に話し合ってやっていくというでしょう。ですから、それを政府が応援するのはいいけれども、介入するというのは間違いだと思います。本来、自主的にやるべき改革を歪めているという側面も強いと思います。
 そうではなく本当の意味で協同組合の力を引き出していくために組合員の1人ひとりががんばれるようにするのが大事だと思います。
 准組合員の問題も、たとえば北海道では准組合員がいて地域も農協も成り立っています。地域の人たちから農協はじゃまだからなくせ、なんて話はまったくなくて、むしろ農協がそこにあって、農産物の販売だけでなくガソリンスタンドなど地域に役立つことをやっているわけですから、その支え手となっている人を無理やり切る必要もないし、協同組合の自主的な議論のなかで決めていくということが必要だと思います。
 農協の役割は非常に大事でたとえば、昨年も北海道で大きな地震がありましたが、さっと集まってどういう支援が必要かということを聞き取って次々と手を打っていくというのは、地域の目線からすると、本当に助かるね、ということだと思います。そういう組合員があってこその農協という原点に立って考えていってほしいと思います。


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・【与野党の政策責任者に聞く:どう進める? 今後の農政】野村哲郎自民党農林部会長(19.08.08)
立憲民主党・亀井亜紀子農林水産部会長(19.08.20)
国民民主党・玉木雄一郎代表(19.08.19)

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