農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち - 挑戦・地域と暮らしと命を守る農業協同組合
【座談会】日本農業は"存亡の機" 現状打破へ"行動の時"(下・4)2019年1月9日
・「現代の老農」に聞く農と地域・食といのちの未来
【座談会出席者】
・星寛治氏(農民・詩人)
・山下惣一氏(農民・作家)
・大金義昭氏(文芸アナリスト)
「老農」とは明治時代の経験に富んだ在来農法による農業指導者のことを言う。現在は栽培技術のマニュアル化が進み「老農」の出番はなくなったかのように見えるが、農業を支える農村社会そのものが崩壊しつつあり、今日的な農業・農村のリーダーが求められる。その意味で、「現代の老農」ともいえる存在で、農民であり作家の山下惣一さんと、同じく詩人の星寛治さん、それに文芸アナリストの大金義昭さんに登場していただく。
都市の住民とも"共生"
農業があって国が存立
星 私たちの大先達の一樂照雄さんが、50年前に未来を洞察しながら、協同組合の本来の役割・使命は、必ずしも構成員の利益とか生活とかを守るということだけに止まらず、公正な社会の実現にあるんだと言い切っているんですね。市場経済が多国籍企業に首根っこを押さえられ、管理・支配されている現在のグローバリズムのなかで、不公正と格差がますます拡大していくという流れをせき止め、公正な社会の実現を目ざすことこそが、協同組合の基本的な役割であると私は思い続けています。
山下 しかし、国はその協同組合をつぶそうとしている。国家の中の組織だから、そうした国と対峙することが難しいんだよね、これが。
大金 しかし、ぶつかるところでは、しっかりぶつからないといけない。
山下 組合員がムシロ旗になってだね。(笑い)
世界中どこに行っても、農業のない国はありません。香港やシンガポールは別として、一定の農民がいて一定の食料自給率を確保出来ないと、国そのものが立ち行かない。日本だけがアメリカの属国みたいなかたちで、つぶされようとしている特殊な状態なんですよ。しかも日本には1億人を超える人間がいるじゃないですか。そういう異常な事態をわれわれは生きている。若い時に農村の「近代化」だとか何とか言ってきたけれど、こういうところに辿り着こうとは思わなかったね。
星 「近代化」の行きつく果ては、市場経済が行き詰ってしまうということを意味すると思うので、もうひとつの新たな経済のあり方、公正な新しいシステムを創っていくうえで、JAの力が大変重要です。
農民の健康寿命の長さは、同世代の都市の市民と格段の差があるという農水省の研究機関のデータがあります。農民の方が健康で生き甲斐を持ち、長生きしているデータからしても、幸せとはいったい何なのかということを、改めて考えさせられます。田園の幸せを享受しながら、都市の市民とも絆を結んで共に生きていくという関係を創り出していくことに尽きるのではないかなと思います。
大金 ありがとうございました。
座談会を終えて
新年だから「遺言」というわけにもいかないな、という談笑で始まった。星さんは「求道者のようなボケ」、山下さんは「過激なツッコミ」。漫才の名コンビのような二人を結ぶ信頼の絆が印象に残った。昭和・平成時代を生きてきた「労農」の本音に触れ、どんなに困難な時代でも「百姓」には生き延びる道があることを教えられた。ご両人の健康長寿を祈りたい(大金)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日