農政:迫る食料危機 悲鳴をあげる生産者
【迫る食料危機】「総合営農指導制」で包括的な地域づくり目指すJAえちご上越 新潟県上越市ルポ(2)2022年7月28日
新潟県のJAえちご上越は、今年度から営農指導体制の再構築に取り組んでいる。これまでの「分野別指導制」から「総合営農指導制」に切り替え、かつ地域密着型の体制に向け活動拠点を営農センターから各支店や資材店舗に移し組合員の幅広いニーズに対応する。食糧基地で米作地帯である新潟県南西部の上越地域でも、人口減少や高齢化の進行で地域社会の崩壊が進んでおり、単に作目別の営農指導ではなく、それを支える活力のある包括的な地域づくりに取り組む方針だ。
JAえちご上越 岩崎健二常務
農業と地域社会崩壊に危機感
同JAの岩崎健二営農担当常務は、「農業・農村の現状からみて、いまほどJAの指導と対策が求められるときはない」と強調する。背景には、短期的にはコロナ禍やウクライナ紛争などによる生産コストの急騰、中・長期敵には農業者の高齢化、担い手不足、荒廃農地の拡大、鳥獣被害などによる農業と地域社会崩壊の危機感がある。
これまでのJAの営農指導は、どちらかというと生産指導が中心だったが、いま求められているのは農家の経営指導であり、農家の経営を安定させることで、地域社会の維持が可能になる。その手助けをするのがJAであり、その第一歩として、担当エリアの農業者や地域の相談機能を強化する。具体的には、WEB簿記を利用する生産者などをモデル農家として選び、訪問活動などを通じて、営農や生活についてのニーズを聞き、農業経営方針を営農指導員とともに策定、生産者は安定経営の基礎を、営農指導員はより実践的な経営指導の経験を得ることを目指している。
地域密着型指導体制への移行について岩崎営農担当常務は「営農指導員はJAの顔であり、営農指導を含め、地域の文化や伝統、家族構成も頭に入れ、その地域のエキスパートとして、組合員とともに地域営農ビジョンを描き、実践する存在になって欲しい」と期待する。
地域密着型指導へ営農指導体制を再構築
一方でJAを取り巻く環境が厳しい昨今、営農指導事業の収支改善が求められている点も営農指導体制再構築の後押しとなっている。今年度からの中期3カ年計画では、支店機能の再編成に取り組んでおり、基本となる考えは、①地域の拠り所としての支店の統廃合は避け、これまで画一的だった支店機能を見直す、②組織活動の活性化や対話を通じて組合員との関係強化に取り組むことにある。
営農指導体制の再構築もこの考えに基づいたもので、メインは、地域密着型指導体制とするため営農指導員の活動拠点を各支店や資材店舗に移し、これまで3カ所の営農センターに配置されていた営農指導員が24の支店あるいは資材店舗で活動している。併せて従来の作物・園芸・経営指導の分野別指導制を総合営農指導制に変更。より専門的な指導は本店等の専任指導員がフォローする。営農指導員のスキルアップ支援が前提であるが、従来、複数人で対応していた案件も支店に配置された営農指導員が一元の窓口として対応することで前述のJAの顔としての意識と知識が向上し、組合員との関係強化に資することを期待している。
「営農指導員の意識変化で地域も変わる」
支店を活動拠点とする営農指導員の任務は、生産者とともに策定した支店別農業振興計画に基づいた農業技術の検討と農業生産品目の開拓、JA女性部が取り組む「一地区一特産づくり活動」なども含む。対応しきれない問題に対しては複数の支店をまたいで配置されたエリアリーダーが後方支援を務める。
岩崎営農担当常務は「営農指導員は、地域のエキスパートであり、オルガナイザーでもある。また地域活性化のためのマネジメント能力も求められる。地域におけるリーダーであることを認識し、アンテナを高くしてさまざまな情報を集めて欲しい。営農指導員の意識が変わると地域や組織も変わる。そのための営農指導体制の整備だ」と営農指導員の意識改革・資質向上に力を入れる。
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