農薬:防除学習帖
畑地雑草の防除4【防除学習帖】第80回2020年12月4日
畑地除草剤は、処理方法によって大きく、土壌処理除草剤、茎葉処理除草剤、非選択性茎葉処理除草剤の3つがあり、前回までに土壌処理剤、茎葉処理除草剤を紹介したので、今回は非選択性茎葉処理除草剤について紹介する。
1.非選択性茎葉処理除草剤の上手な使い方
(1)非選択性茎葉処理除草剤の特性を把握する
非選択性茎葉処理除草剤は、前回紹介した選択性茎葉処理除草剤と異なり、すべての雑草、言い換えると作物を含めた植物という植物を枯らすことができる除草剤である。
そのため、作物に除草剤がかかってしまうと、作物が枯れてしまうので、作物の生育期に使用することが難しい除草剤である。
近年、飛散防止ノズルを装着して、大豆にかからないように畝間に散布する方法もあるが、基本的に作物が畑に植えられていない状態である耕起前や、作物がない農道や畦畔などに使用される。
非選択性茎葉処理除草剤の有効成分は、グリホサート、グリホシネート、パラコート・ジクワットの3種で水に希釈し、噴霧器等を使用して雑草の茎葉を目掛けて散布する。この際、グリホサートとグリホシネートは、茎葉の一部分に薬液が付着すれば成分が浸透移行して枯らすことができ、特にグリホサートについては、茎葉に散布するだけで根まで枯らすことができる。これに対し、パラコート・ジクワットは浸透移行性が無く、薬液が付着しなかった部分は枯れないので、均一に丁寧に散布する必要がある。
一方、枯らす速度に差があり、パラコート・ジクワットは、朝散布すれば夕方には枯れ始めているのがわかるほど早いが、グリホサートとグリホシネートは雑草が枯れるまでに1週間から2週間程度の時間が必要になる。
これらの特性を整理すると、以下のとおりになる。
○浸透移行力(根まで枯らす力)の強い順:グリホサート > グリホシネート >> パラコート・ジクワット
○枯らす速さ(早い順):パラコート・ジクワット >> グリホシネート > グリホサート
(2)「使用時期」を守る
非選択性茎葉処理除草剤の「使用時期」は、選択性の茎葉処理除草剤よりは幅広いが、あまりにも雑草が大きくなると効果が落ちる場合もあるので、ラベルをよく読んで、適正な時期を守るようにする。たとえば、「一年生広葉雑草は、雑草の草丈が25cm以下で使用する」などと書いてあれば、雑草草丈が25cm位までだったら完全に枯らすことができるが、それを超える草丈になると完全に枯らすことができないこともありうるということだ。非選択性茎葉処理除草剤の場合、草丈の上限を超えていても、中途半端に葉は枯れて茎だけ残ってしまうなど、影響は起こり、全く効かないということはほとんどない。ただし、安定してきれいに枯らすのであれば、ラベル記載の使用適期を確実に守るようにしてほしい。
(3)「10アール当たり使用量」を守る
選択性と同様に、「10アール当たり使用量(薬量ミリリットル,希釈水量リットル)」を守って使用する。薬量は、スギナなど頑固で枯れにくい多年生雑草の場合は薬量も多く必要になるし、図体が小さい雑草の場合は、少ない薬量で済む。いずれにしても、枯らしたい対象の雑草をよく確認し、それにあった薬量を守るようにしてほしい、
薬量ミリリットルとは除草剤のボトルに入っている原液をどれだけの量を散布するかを示し、希釈水量リットルとは散布する水量そのものとなる。
例えば、「10アール当たり薬量50ml、希釈水量100l」と登録されている除草剤を10アールに散布する場合、浄水100リットルをタンクに用意し、除草剤50ミリリットルを除草剤製品ボトルから取り出してタンクに入れてよくかき混ぜて、均一に散布すればよい。もし、散布対象の土地面積が5アールの場合は、半分の量でよく、浄水50リットルをタンクに用意し、除草剤25ミリリットルを除草剤製品ボトルから取り出してタンクに入れれば5アール分の散布液ができるので、それを均一に散布する。
グリホサートとグリホシネートは、少量散布ノズルを使用し、散布された薬滴がまだらに雑草茎葉に表面に付着しても十分に枯らす力を持っている。特にグリホサート(ラウンドアップマックスロード)は、ULV5という技術があり、専用に散布機を使用すれば、10アールあたり希釈液量5リットルでも、十分に高い効果を発揮するので、散布時間と散布労力を大幅に軽減できる。
2.非選択性茎葉処理除草剤の抵抗性雑草
除草剤でも殺虫剤や殺菌剤と同様に、ある一つの成分が効かない抵抗性雑草が発生している。抵抗性雑草も殺虫剤や殺菌剤と同様に、同じ成分を何年も使い続けることで発生する。なので、もし抵抗性雑草の発生が確認されたら、その除草剤は使用せずに作用性の異なる除草剤を使用するようにする。以下、有効成分ごとに抵抗性雑草の発生事例(発生年)を紹介するので、もし、下記の雑草が優先して残るような畑があったら、抵抗性雑草を疑い、指導機関などに対応を相談するようにすると良い。
[国内において発生した抵抗性雑草]
○パラコート抵抗性:ハルジオン (1981)、ヒメムカシヨモギ (1983)、アレチノギク (1989)、オオアレチノギク (1989)、オニタビラコ (1989)、チチコグサモドキ (1992)、トキワハゼ (2010)
○グリホサート抵抗性:ネズミムギ (2013)、オヒシバ (2015)、ヒメムカシヨモギ (2015)、オオアレチノギク (2017)
○グルホシネート抵抗性:ネズミムギ (2016)
このシリーズの一覧は以下のリンクをご覧ください
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(1)2024年4月27日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(8)【防除学習帖】 第247回2024年4月27日
-
土壌診断の基礎知識(17)【今さら聞けない営農情報】第247回2024年4月27日
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日
-
農水省『全国版畜産クラウド』とデータ連携 ファームノート2024年4月26日