農薬:サステナ防除のすすめ2025
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(2)雑草管理小まめに2025年6月17日
令和の米騒動の騒ぎの中でも本年も水稲栽培が本格化し、水稲生育期防除、いわゆる本田防除が必要な時期がやってきた。水稲栽培で少しでも収益を増やそうとすれば、1等米を出来るだけ多く収穫することが必要で、それを実現するには、斑点米カメムシなど穂を侵す病害虫の防除が必須な作業だ。
サステナ防除的には、気候変動による病害虫の発生状況の変化に対応した効率的かつ継続性を持った防除を組み立てることが重要だと考えており、それに沿ったおすすめできる防除の考え方を整理してみようと思う。
雑草管理小まめに
6.畦畔の雑草防除を忘れずに
イネカメムシ以外のカスミカメ類の斑点米カメムシはイネ科雑草を好むため、イネ科雑草が畦畔(けいはん)やその周辺に生育しないように雑草管理はこまめに行う必要がある。稲の出穂後に畦畔雑草の除草を行うと、雑草を吸汁していた斑点米カメムシを稲に追い込むことになるので、畦畔雑草の除草時期には十分に注意する。
以下、この時期に防除が必要な主な病害虫を整理したので参考にしてほしい。
【いもち病】 水稲栽培において最も大きな被害を発生させるいもち病である。
この病害は、糸状菌(かび)が引き起こし、25~28度の温度と高湿度を好む。感染には水滴が必要で、梅雨に入り、稲体に水滴が付着している時間が長いときに発生が多くなる。その理由は、いもち病菌が稲体への侵入する際には水滴が必要であることと、病斑上に形成された胞子を飛散させる場合にも90%以上の高湿度が必要なためである。このような特性があるために、蒸した気候が続くときにまん延しやすくなる。また、いもち病は、水稲生育のどの段階でも発生し、苗いもちが葉いもちの発生に影響し、葉いもちの発生量が穂いもちの発生量に影響する。特に、葉いもちを放置すると生育不良となるばかりか、最も怖い穂いもちが発生し、最終的に白穂やねん実不良、着色米を引き起こし、収量や品質を低下させてしまう、まさに稲の大敵である。
【紋枯病】 紋枯病は、いもち病とは違う種類の糸状菌(かび)が起こす。稲の水際の茎葉部に、雲形で中央が灰白色の病斑をつくり、それから、だんだんと上位に病斑が伸びていき、ひどい場合は止葉にまで達する。止葉にまで病斑が達すると、減収の被害が出る。また、茎葉が病斑によって弱まって倒伏しやすくなるので、コシヒカリなど背の高い品種は特に注意が必要である。
株間の湿度が高いと発病が多くなるので、茎数が多い品種はもちろんのこと、過繁茂も株間の湿度を上げる要因になるので、窒素過多にならないよう施肥量にも注意が必要だ。
【その他病害】 近年は、稲こうじ病やごま葉枯病、白葉枯病(細菌)といった病害が多くなっている。中でも稲こうじ病は、有効な防除時期が穂ばらみ期に限られているので、発生が多い水田では、防除の時期を逃さないように注意してほしい。
【害虫】
一方害虫では、田植え直後から発生するイネミズゾウムシやイネドロオイムシ、セジロウンカ、ヒメトビウンカ、ツマグロヨコバイ、トビイロウンカなどが主な対象害虫である。これらは、まだ幼い稲の葉を加害して初期生育を遅らせたり、ウイルス病を媒介したりする被害を起こすが、初期の防除をきちんと行っていればそれほど怖いものではない。
ただし、ウンカ類には、九州を中心にネオニコチノイド系農薬に抵抗性が発達したものが多く飛来しているので、薬剤の選択にあたっては、ネオニコチノイド系農薬以外の農薬を選ばなければならないことが多い。詳細の対応については、JA等の指導機関に相談してほしい。
一方、稲の栽培期間中に2世代が発生するニカメイガなどは、被害が大きくなる後半の発生を抑えるためにも、1世代目の発生量を減らしておいた方がよい。このため、ニカメイガが常に発生する場合は、本田初期のニカメイガ防除は必須である。
これらに加えて、注意すべき害虫はイネカメムシである。同種の生態の詳細は関係各機関による研究が進められているが、何よりの特徴は「超稲派」であることである。他の斑点米カメムシは雑草の方が好みのものが多く、まずは畦畔のイネ科雑草に発生し、それから本田に侵入することが多い。このため、畦畔雑草をきちんと管理すればカメムシ被害をある程度抑えることができた。ところがイネカメムシは、イネ科雑草には目もくれず、特に出穂直後の稲穂を好み、越冬場所から稲に直接飛来し加害する厄介な害虫だ。このため、出穂期前後に本田での防除を確実に行って迎え撃たなければならない。その際の散布時期が重要で、これまでの斑点米カメムシ類防除対策では、穂ぞろい期から乳熟期後半にかけて複数回の薬剤防除を実施することが推奨され、防除コスト削減を優先する場合は乳熟期後半の防除が中心だった。
ところが、イネカメムシの場合は、乳熟期後半の散布では遅すぎて被害(特に不ねんもみの発生)を防ぐことができない。このため、出穂前にクロチアニジン剤やジノテフラン剤、エチプロール剤などイネカメムシに効果のある薬剤を確実に散布することが重要だ。複数の品種を生産していて出穂期がずれる場合は、出穂の早い品種から確実に出穂期前の散布を行うようにし、どの品種にも出穂期前散布が漏れないように注意してほしい。
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