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植物由来の物質が土壌中の硝化を抑制 分子メカニズムを世界で初めて解明 農研機構2023年12月6日

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農研機構は株式会社アグロデザイン・スタジオと共同で、窒素肥料の農地からの流出をもたらし、温室効果ガスの排出の一因にもなっている硝化という現象を植物由来の物質が抑制する分子メカニズムを明らかにした。この成果は、持続可能な農業と環境保護のために、より安全で高機能な新規硝化抑制剤の開発につながる。

図1:窒素肥料の施肥が硝化作用によって及ぼす環境への影響と硝化抑制の効果図1:窒素肥料の施肥が硝化作用によって及ぼす環境への影響と硝化抑制の効果

硝化菌がアンモニアを硝酸に変換する硝化という現象は地球の窒素循環の重要なプロセスだが、アンモニアを成分とする窒素肥料を農地から流出させ、経済的な損失や周辺水域の富栄養化につながっている。また、硝化の副反応で温室効果ガスの一酸化二窒素(N2O)が放出されるという環境問題も引き起こしている(図1)。

これまで硝化を抑制する硝化抑制剤が化学合成資材として開発され、主に窒素肥料の有効利用のために広く使われているが、既存剤は残留性に対する懸念や抑制メカニズムが不明など課題も多く、新たな硝化抑制剤の開発が求められている。

そこで、農研機構は、窒素肥料の効率的な利用と温室効果ガス排出の削減のための新たな硝化抑制剤の開発に向けて2014年より研究を開始。アグロデザイン・スタジオと共同で研究を継続してきた。同研究では、硝化菌のヒドロキシルアミン酸化還元酵素(HAO)に着目し、植物由来のJugloneが窒素循環を抑制するメカニズムを明らかにした。

図2:Jugloneによる硝化抑制のメカニズム図2:Jugloneによる硝化抑制のメカニズム

Jugloneはクルミ科植物が持つ、アレロパシーを起こす物質として古くから研究されてきた化合物で、硝化抑制剤と同じような作用があることも知られている。農研機構らは、硝化反応を担うHAOからシトクロムc5546)(Cytc554)への電子伝達をJugloneが阻害することで硝化反応を止めることを明らかにした(図2)。

これは硝化抑制剤の抑制メカニズムを分子レベルで明らかにした世界で初めての事例。同成果は、Jugloneの使用法やその化学構造の改良、さらには新しい硝化抑制剤の開発につながる。これまではメカニズムが不明だったため、新しい硝化抑制剤の開発がなかなか進まず、古い薬剤が今も使われているが、同成果の活用により、安全で高機能な新規硝化抑制剤を開発することが可能となる。新規硝化抑制剤により窒素肥料の有効利用と流出の防止、温室効果ガスの排出削減を通じて持続可能な農業と環境保護への貢献が期待される。

同成果は11月27日、科学雑誌『Applied and Environmental Microbiology』で発表された。

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