「グルタミン酸は植物保護細菌の機能を高める」重要土壌病害の防除へ持続可能な技術を開発 農研機構2024年2月15日
農研機構は、アミノ酸の一種で環境負荷が少ないグルタミン酸を用いて、キュウリなど重要土壌病害の防除に有効な病害抑制の機能を持つ植物保護細菌の機能を高める技術を開発した。同成果の活用により、新たな環境負荷の少ない病害防除法の開発が可能となり、土壌消毒用の化学農薬の使用量低減につながると期待される。
土壌中には様々な微生物が生息しており、その中には植物にとって有用なもの、また逆に病気を引き起こすものがいる。土壌中に生息する病原が引き起こす植物病害は土壌病害とよばれ、主にカビ等の病原微生物が原因で、農作物のロスを引き起こす深刻な問題となっている。
土壌病害の防除には主に化学農薬が使われるが、継続的な化学農薬の使用は、薬剤耐性菌の出現を招くなど課題がある。持続可能な農業の実現には、自然界に存在し植物の生育に有用な微生物を農業に役立てることが有望視されているが、生きたまま用いるため環境に左右されることもあり、化学農薬と比較して効果が弱くコストが高いなどの問題があった。
農研機構はこれまで、国内でも生産量が多い野菜の一つであるキュウリを対象として、微生物を用いた病害防除法の開発を進めてきた。そのために、土壌病害の防除に有効な植物保護細菌(Pseudomonas protegens)を利用。さらにその効果を安定的に高める物質を探索。また、過去に、様々な天然素材について、植物の病気を抑える効果がある物質を探索し、アミノ酸に効果があることを明らかにしていた。
今回、キュウリの幼苗を用い、重要土壌病害の病原菌の一つであるピシウム病菌(Pythium ultimum)に対して植物保護細菌の効果を検証。また、その機能を安定化させる目的で、環境負荷の低いアミノ酸に着目しそれらを一緒に添加し、病害防除効果を評価した。
土壌中にピシウム病菌をまん延させた状態でキュウリの幼苗を栽培しても、大きくなることはできない。そのため、農研機構が過去に見出していた植物保護細菌(Pseudomonas protegens)を水に溶かしてピシウム病菌をまん延させた土壌に加え、本葉が出始めるまで(2週間)キュウリを栽培したところ、キュウリの生育状況に回復が認められた。このことから、今回与えた植物保護細菌を使用することでピシウム病害)を抑えられることが実験室レベルで確認された。
図1:ピシウム 病菌感染土壌におけるキュウリ幼苗の植物重量の比較
次に、アミノ酸を植物保護細菌と一緒にピシウム病菌をまん延させた土壌に加えてキュウリの幼苗を栽培し、ピシウム病害を抑える効果の変化を調べた。その結果、加えたアミノ酸の中ではグルタミン酸添加時のみにピシウム病害の抑制効果が高まることが分かった。また、その効果も植物保護細菌のみのときと比べてキュウリ幼苗の植物重量が2倍にまで増加しており、効果が高いことが分かった(図1)。
図2:ピシウム病菌感染土壌におけるキュウリ幼苗の生育の様子と、植物保護細菌およびグルタミン酸の効果
さらに、苗を圃場に移植するまで温室で1か月間栽培しても、植物保護細菌およびグルタミン酸の効果が持続することが分かった(図2)。これまでの知見からピシウム病害に対しては幼苗期の防除が重要であることから、同手法が有効であることが分かる。
植物保護細菌とグルタミン酸を同時に使用する技術を用いることで、これまで土壌中での効果が不安定とされていた植物保護細菌の機能が維持され、病害防除効果が向上すると期待される。また、環境負荷が低い病害防除法でもあり、土壌消毒用の化学農薬の使用量低減につながることが期待される。
同成果は、科学誌『Molecular Plant-Microbe Interactions』(2023年7月28日)で発表された。
重要な記事
最新の記事
-
(394)Climate stripes(気候ストライプ)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月26日
-
地域医療の実態 診療報酬に反映を JA全厚連が決議2024年7月26日
-
取扱高 過去最高の930億円 日本文化厚生連決算2024年7月26日
-
【人事異動】JA全厚生連 新理事長に歸山好尚氏(7月25日)2024年7月26日
-
【警報】果樹全般に果樹カメムシ類 県下全域で最大限の警戒を 鳥取県2024年7月26日
-
【注意報】イネに斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2024年7月26日
-
今が旬の「夏酒」日本の酒情報館で提案 日本酒造組合中央会2024年7月26日
-
ヤンマーマルシェ、タキイ種苗と食育企画「とりたて野菜の料理教室」開催 カゴメ2024年7月26日
-
「ごろん丸ごと国産みかんヨーグルト」再登場 全国のローソンで発売 北海道乳業2024年7月26日
-
物価高騰が実質消費を抑制 外食産業市場動向調査6月度2024年7月26日
-
農機具王「サマーセール」開催 8月1日から リンク2024年7月26日
-
能登工場で育った「奇跡のぶなしめじ」商品化 25日から数量限定で受注開始 ミスズライフ2024年7月26日
-
東京・茅場町の屋上菜園で「ハーブの日」を楽しむイベント開催 エスビー食品2024年7月26日
-
鳥インフル 米国オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年7月26日
-
大玉すいか販売大幅減 小玉「ピノ・ガール」は前年比146.8% 農業総研2024年7月26日
-
千葉県市原市 特産の梨 担い手確保・育成へ 全国から研修生募集2024年7月26日
-
水産・農畜産振興 自治体との共創事例紹介でウェビナー開催 フーディソン2024年7月26日
-
新規除草剤「ラピディシル」アルゼンチンで農薬登録を取得 住友化学2024年7月26日
-
自由研究に「物流・ITおしごと体験」8月は14回開催 パルシステム連合会2024年7月26日
-
高槻市特産「服部越瓜」の漬け込み作業が最盛期2024年7月26日