【コラム・キサクな老話】秋始末と財布2013年11月20日
手刈り時代の稲作は、やらねばならぬ仕事でテンテコ舞いである。一把を刈るのに3~5株をひと握りにし、右側の刈り済んだ稲株の上に置き、もう一手分を刈りそのクズ藁(わら)をむしり、前の刈った上に交差して置き、鎌を土に刺してクズ藁で縛るが、できるだけ残った藁クズを束の中に入れてきれいに根元を揃えて結束する繰り返しである。
私は鎌を置いて束ね、そして鎌を取って刈るの繰り返しを止め、刈り倒し専門にした。後で結束を専門にすることで、天気のよいときは稲は乾燥するし、随分能率が上がったが疲れが大きい。農作業は次の作業を考えてやらないと、次の仕事に手間ばかりかかる。
稲刈り前に神前に飾る「稲飾」用の抜き穂や、来年の種子用の抜き穂をして陰干しも忘れてはならない。稲飾は苗代を失敗した時の種籾になるし、自家採種の時に優良変異種の選抜にも重要な意味(亀の尾種など)がある。
刈り束を10把に数え、杭に5束50把を十字に架けていくが、その架け方で乾燥の速さが違う。途中杭返しして平均に藁を乾燥させないと、籾の乾燥も完全にいかない。
藁も大事な資源で、あらゆる道具に加工しなければならない。乾燥出来ると、雨天の多い当地は納屋に藁ぐるみ収納して納屋で脱穀し、藁も7、8把を丸め、これを雨に濡れないようにニオに積んで置く。そして籾摺りし、俵に60kg詰め、縄で梱包する。この包装も定めがあり、よりしっかりとしないと入庫できない。
これを米かぎを使い、担いで運搬するのだ。俵扱いは帆前掛けと足を使うと楽にできる。籾殻も大事な資源で、その始末もしなければならない。不要になった杭の収納、田面に排水路や用水路の泥上げ掘りと、雪の降る前は忙しい。
さて、当時の農家には財布が一つしかなく、総て戸主が取り仕切っていた。部屋住みの長男は籾摺り時、1俵を夜に失敬し、村の食堂に納める。今でいうボトルみたいなもので、何時でも食事や支那そばが食べられるようにしてあるのだ。これが戸主の無言の報酬であったのが農村である。
よくこれで満足? したものだと思い出される。当時は農協などの会合で、昼食に出前の支那そば、戦後は中華そばで皆満足していたのであった。今は財布は家族全員が持ち、へそくり財布と2つも持つようになったのだから、裕福になったというべきか。それにしても昔は夢を持って頑張ったものだよ。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】ダイズ、野菜類、花き類にオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年9月3日
-
【農協時論】小さな区画整理事業 生産緑地保全と相続対策の要に JA東京スマイル 眞利子伊知郎組合長2025年9月3日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 愛媛県2025年9月3日
-
【注意報】ねぎ、キャベツなどにシロイチモジヨトウ 府内全域で多発のおそれ 大阪府2025年9月3日
-
【注意報】いちごに炭疽病 県下全域で多発のおそれ 愛媛県2025年9月3日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の仕上げ防除 カメムシ対策は必須 暑さで早めに対応を2025年9月3日
-
ミサイルは兵糧攻めに有効か【小松泰信・地方の眼力】2025年9月3日
-
「コウノトリ育むお米」4万4000円 JAたじまが概算金 「消費者も付加価値を理解」2025年9月3日
-
【人事異動】農水省(9月2日付)2025年9月3日
-
8月大雨被害に営農支援策 農機修繕、再取得など補助2025年9月3日
-
緑茶輸出 前年比9割増 7月の農産物輸出実績2025年9月3日
-
JA貯金残高 107兆337億円 7月末 農林中金2025年9月3日
-
よりよい営農活動へ 本格化するグリーンメニューの実践 全農【環境調和型農業普及研究会】2025年9月3日
-
フルーツプレゼント第3弾は新潟県産日本ナシ 応募は9月23日まで にいがた園芸農産物宣伝会2025年9月3日
-
9月9日を「キュウリの日」に 行政と連携して"キュウリ教室"初開催 JA晴れの国岡山と久米南町2025年9月3日
-
大学協同組合講座設置促進シンポジウム 9月16日にオンラインで開催 JCA2025年9月3日
-
脱炭素と環境再生へ 農林中金のコンソーシアムが本格始動2025年9月3日
-
『農地六法 令和7年版』発売 農地法関連政省令・通知を完全収録2025年9月3日
-
「アウト オブ キッザニア in えひめ」で「だしの伝道師」担当 マルトモ2025年9月3日
-
大阪・関西万博で「EARTH MART DAY」開催へ 食と農の未来を考えるイベント クボタ2025年9月3日