【リレー談話室・JAの現場から】人・地域が幸せに2015年6月4日
いま私たちが暮らす社会は、時代の変化とともにみんなが幸せになる方向に進んでいるとは言いがたい。確かに便利で物も豊富であるが、その豊かさが公平に行き渡っていないように思う。
経済の衰えに加え、雇用不安、少子高齢化による地域や家族の問題、年金問題など、行く先が不透明なことに戸惑い、頼りにしていたものが崩れていくような世相に老後の不安を抱える人も少なくない。さらに、自然破壊、食の安全性の不安など問題は山積し、犯罪なども減ることなく社会不安が拡大しているように思えてならない。
また世界に目を向けみても、戦争、飢え、地球温暖化の進行など深刻な問題を抱えているが、私たちは次代を生きる人たちに夢と希望を与えていかなければならないと強く感じている。
神奈川県秦野は、かつて葉タバコの産地として知られ、秦野葉は茨城県水府、鹿児島県国分と並んで日本3大葉タバコ産地の一つとして名を高め、300年以上の伝統を持つ土地柄で、我が家も代々葉タバコ栽培に取り組んできた。
その生活は、朝から晩まで農作業に明け暮れ、余裕もなく過酷な作業と貧困な生活を強いられてきた。だが今から68年前の昭和22年、日本に農業協同組合法が制定され、各地に農業協同組合が創設されたときに、「農協に結集することで暮らしはいつか良くなる」との思いを胸に抱いて、自分さえ良ければ良いという利己主義の考えを排除し、近所隣り、地域内で話し合い、助け合って農作業に励んできたということを祖父からよく聞かされた。まさに地域協同活動によるものだ。
昨今、規制改革のもとに進められている「JA改革」はどうなのだろう。この改革は、農業の担い手、後継者不足、高齢化など農業不振はすべてJAの責任だとして、総合JAそのものを解体しようとする改革だと受け止めている。
また、「新自由主義」として、市場開放による自由な経済競争を基本に、農産物の輸出入の自由化はもとより、金融・保険まで自由化して規制緩和を進めている。国や地域の単位ではなく、世界を一つの共同体とみなし全体を見る考え方で、協同組合の特徴をすべて否定したものではなかろうか。
これは協同組合の考え方である「共存同栄」「共存共栄」「相互扶助」、あるいは二宮尊徳が指導した精神的・物質的・経済的な「助け合い」の精神そのものの考え方とは正反対の動向だと思う。
JAはだのは協同組合原則を大切にし、正組合員、准組合員は同じ組合員として扱い、地域に密着した事業活動を展開してきたが、今後、「JA改革」という重い課題にどう立ち向かうか正念場を迎えている。
今日の世相を考えてみても、JAが運動や事業活動を通じて行う地域づくりは、明るく住みよい社会、幸せな暮らしを実現する活動である。そのために、お互い同士が尊重し合い、相手の立場と利益を守り、仲間や地域の人々が助け合い、みんなで心を合わせて協力する活動が、これまで以上に必要とされているに違いないはずだ。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日