(003)世界の人口:インド2016年10月21日
欧米人の主食を小麦とし、アジア人の主食をコメと考えた場合、現代社会の中で非常に興味深いポジションにいる国はインドである。
まず、世界の小麦生産量は、EUが1億4322万トンで第1位、中国が1億2800万トンで第2位、インドは9000万トンで第3位である(※1)。 第4位はロシアの7200万トンである。また、インドの小麦はほとんどが国内消費向けである点に特徴がある。
一方、コメはどうか。世界の生産量第1位は中国の1億4650万トン(精米ベース、以下同じ)だが、インドは1億650万トンで第2位であり、第3位インドネシアの3660万トンの3倍近い。
さらに興味深い点は、コメの輸出量である。現在、世界のコメ輸出量は4108万トンと見込まれているが、最大の輸出国は1000万トンのインドである。第2位がタイの950万トン、第3位がヴェトナムの580万トンである。世界のコメ輸出量の約4分の1がインドという事実は残念ながら日本では余り知られていないかもしれない。
「瑞穂の国」日本のコメ生産量は、今や世界ランキングでは10位ギリギリ、輸出量はほとんど無いに等しい。つまり、仮にコメの世界を語るのであれば日本以外のアジア諸国やブラジル(生産量803万トン、輸出量65万トン)なども踏まえた上で語る必要があるということになろう。
* * *
さて、話をインドに戻すと、2015年時点でアジア人約44億人の中には中国人約14億人とインド人約13億人がいる。これが2070年には総数が52億人に増加し、中国人12億人とインド人18億人になる。アジアの総人口ピークは2060年(約53億人)である。前回述べたように中国の総人口ピークは2028年(約14億人)であるが、インドの総人口ピークは2068年(約17.5億人)と半世紀以上先である。アジアにおける消費者のニーズも、将来的には中国からインドへと動く可能性が高い。
では内訳はどうか。ここでは高齢者の割合を見てみよう。2015年のインドの65歳以上人口は7360万人と、全体の5.6%にすぎないが、2070年には3.6億人、20.5%にまで増加する。そして、2100年には4.6億人、インド人の28%が65歳以上となる。
さて、一般に総人口に占める65歳以上人口の割合を「高齢化率」と呼ぶが、今後半世紀余りの高齢化率の上昇カーブは、日本、中国、インドで大きく異なる。
グラフが示すところだけを見れば、中国が2015年の日本と同じ高齢化率に達するのは2040年頃であり、インドは2090年頃となる。日本が25年、75年進んでいることになる。
* * *
こうした状況を支えるフードシステムの在り方については、各国の研究者が関心を持っているが、中国とインドについては、その規模が大きいだけに、まだまだ不明瞭な点が多い。実践的な部分では各企業や地方自治体が地域の現実と正面から向き合った上で対応していかざるを得ないというのが正直なところであろう。75年先の将来のことなど、第二次大戦終了直後に現在の生活を想定せよということに「時間的には」等しいからだ。
では現在出来ることは何か。例えば、可能な限り、将来直面するであろう課題や障害を、「夢想」ではなく現実的に「予想」することである。
市町村単位でも良いし、県単位でも国単位でも良い。自分が住む地域の将来の人口構成に近い事例を世界中から探してきて、そこでどのような課題が生じ、どう"現実的に"対応されているかを学ぶことが一番である。
わが国の場合には、国立社会保障・人口問題研究所がWebでも公表している「日本の地域別将来推計人口(都道府県。市区町村)」などが活用できる。
日本で起こり、中国で起こっている大きな変化は、経済成長に伴う生活水準の向上と、食肉需要の増加、さらにそれに伴う飼料穀物・油糧種子の需要増加である。中国の需要増加には南米の生産増で対応してきた世界であるが、今後、インドの需要が本格的に拡大したときにどう対応していくのかがあらためて問われることになる。
※1:USDA、"Grain: World Markets and Trade", 及び"Oilseeds: World Markets and Trade", October 2016. 以下、穀物・油糧種子関係の数字は全て両資料に基づく。
重要な記事
最新の記事
-
(394)Climate stripes(気候ストライプ)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月26日
-
地域医療の実態 診療報酬に反映を JA全厚連が決議2024年7月26日
-
取扱高 過去最高の930億円 日本文化厚生連決算2024年7月26日
-
【人事異動】JA全厚生連 新理事長に歸山好尚氏(7月25日)2024年7月26日
-
【警報】果樹全般に果樹カメムシ類 県下全域で最大限の警戒を 鳥取県2024年7月26日
-
【注意報】イネに斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2024年7月26日
-
今が旬の「夏酒」日本の酒情報館で提案 日本酒造組合中央会2024年7月26日
-
ヤンマーマルシェ、タキイ種苗と食育企画「とりたて野菜の料理教室」開催 カゴメ2024年7月26日
-
「ごろん丸ごと国産みかんヨーグルト」再登場 全国のローソンで発売 北海道乳業2024年7月26日
-
物価高騰が実質消費を抑制 外食産業市場動向調査6月度2024年7月26日
-
農機具王「サマーセール」開催 8月1日から リンク2024年7月26日
-
能登工場で育った「奇跡のぶなしめじ」商品化 25日から数量限定で受注開始 ミスズライフ2024年7月26日
-
東京・茅場町の屋上菜園で「ハーブの日」を楽しむイベント開催 エスビー食品2024年7月26日
-
鳥インフル 米国オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年7月26日
-
大玉すいか販売大幅減 小玉「ピノ・ガール」は前年比146.8% 農業総研2024年7月26日
-
千葉県市原市 特産の梨 担い手確保・育成へ 全国から研修生募集2024年7月26日
-
水産・農畜産振興 自治体との共創事例紹介でウェビナー開催 フーディソン2024年7月26日
-
新規除草剤「ラピディシル」アルゼンチンで農薬登録を取得 住友化学2024年7月26日
-
自由研究に「物流・ITおしごと体験」8月は14回開催 パルシステム連合会2024年7月26日
-
高槻市特産「服部越瓜」の漬け込み作業が最盛期2024年7月26日