(067)米国の家族農場の種類と品目別特徴(2016年版)2018年1月26日
毎年、年末に米国農務省は前年の家族農場のまとめを公表しているが、年末はよく見ないまま過ぎることが多い。そこでいつも年を越した1月にレビューをしている。
米国農務省によると、家族農場(Family farms)は4種類に分類される。基準はGCFI(Gross Cash Farm Income)、つまり農場粗収入の規模である。ここで農場粗収入とは、農産物の販売高だけでなく、政府からの助成金や、農地の賃貸料収入、農作業受託による収入なども含むいわば農場の年間総収入である。
1.小規模家族農場(Small Family Farms:GCFIが35万ドル未満)
2.中規模家族農場(Midsize Family Farms:GCFIが35万ドル以上100万ドル未満)
3.大規模家族農場(Large-Scale Family Farms:GCFIが100万ドル以上)
4.上記1~3以外の農場(Nonfamily farms:非家族農場)
このうち、1の小規模家族農場は184万農場だが、内訳は3つに分類される。
・リタイヤメント農場(Retirement farms)
→リタイヤした人が行っている農場。全米で約37万農場、全体の約18%)
・兼業農場(Off-farm occupation farm)
→農場以外に主要な収入源がある兼業農場。全米で約86万農場。全体の42%)
・専業農場(Farming-occupation farm)
→農場を主要な仕事としているもの。ここはさらにGFCIが15万ドル未満の小規模専業農場(Low-sales)と、15万ドル以上35万ドル未満の中規模専業農場(Moderate-sales)に分かれている。前者は50万農場、全体の約25%、後者は11万農場、全体の約5%である。
中規模家族農場は約12万農場あり、全体の6%を占めている。
大規模家族農場は、年間総収入100万ドル以上500万ドル未満の農場で53,763農場、全米の2.6%を占めている。さらに年間総収入500万ドル以上の超大規模家族農場が6,449農場、全米の0.3%を占めている。
また、農場の主要な作業者が当該農場の持ち分の過半数を所有していない農場(例えば、農家以外の企業が所有している、パートナーシップ制度により運営されている農場、非公開の家族企業により所有されている農場、公開企業が所有している農場、農場作業員と所有者が全く関係ない農場など様々である)は非家族農場として24,992農場、全体の1.2%を占めている。
これらはいずれも数字は2016年のものである。
以上をまとめ、上で述べていない元の統計データの内容を加えると、米国の農場の9割は家族農場であり、農地の約半分を占めている。このうち、生産金額においては大規模家族農場が全体の半分弱を占めているということになる。
こうした情報は毎年公開されているが、意外に見逃しがちであるため、備忘録がてら、年の初めにアップデートしておくと良い。
なお、全体像とは別に興味深い内容は、上で述べた農場を品目別・畜種別に眺めて見ることであろう。
例えば、牧草(下図のHay)の生産農場は50%が小規模農家であることや、綿花、酪農、高付加価値商品の生産農場は過半数が大規模農場であることがわかる。畜産も分野別に規模拡大の進展度合いが大きく異なる。牛肉は非家族農場が2割弱と最も多いが、これなどは「やはりな...」という感を強くする。
下に掲げたグラフは、その内容を示したものである。各々の関心に従って見て頂ければ、現在の米国の農業がどのようなタイプの農場により構成されているのかがわかる。
また、全体の詳細を確認したい場合は、下記サイトより参照可能である。
USDA ERS - America's Diverse Family Farms: 2017 Edition(アメリカ合衆国農務省)
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