【熊野孝文・米マーケット情報】外国産米に市場を奪われる国産米2018年4月3日
大手米菓メーカー亀田製菓(株)(本社新潟市)が4月9日出荷分から量販店向け6品目、コンビニ向け2商品を5月28日出荷分から内容量を変更して出荷する。
内容量が変更される商品は4月9日出荷分が、ハッピーターン120gが108gに、揚げ一番155gが138gに、ぽたぽた焼22枚入りが20枚入りに、サラダうす焼93gが85gに、通の枝豆76gが70gに、通の焼海老76gが70gになる。コンビニ向け5月28日出荷分はハッピーターン100gが90gに内容量が減少し、実質的に10%程度値上げされることになる。同社によるとこの内容量変更理由は、原料米の高騰に加え、人件費、包材、物流費などが値上がりしているためとしている。特に原料米は、国産米の主原料になっている特定米穀が29年産は28年産に比べ40%という大幅な値上がりになったことが大きな要因だとしている。
特定米穀とはいわゆるくず米(網下米)のことである。一般にはどのようなコメなのか分かりづらい特定米穀という名称になったのか解説するとこの紙面が埋まってしまうので止めるが、要するに低品位米の価格が大幅に上がったことが内容量を減らさざるを得なくなった大きな要因だと言っているのだ。
その特定米穀の需給がどうなっているのかに触れると、まず供給面では農水省統計情報部が実に細かく発生量を調べている。それによるとふるい網目1.9mmから1.7mmでは29年産は54万8000tになっている。28年産に比べると8万1000t、率にして17%も多い。ライスグレーダーの使用網目は産地によって違うので、この数量が全て網下米として流通するわけではないが、統計のデータでは昨年より網下米の発生が多かった。にもかかわらずなぜ価格が40%も上昇したのか? 最大の要因は主食用米の需給ひっ迫にある。一般主食用米の価格が上昇、白米価格のコスト上昇を抑えるために特定米穀の中で主食用に使えるようなものを増量原料として使用したからである。特定米穀業者はこうしたコメを"頭"と呼んでいる。特定米穀の価値はこの頭の混入比率によって変わって来る。要するに特定米穀が主食用米に吸収されたことによって供給量が減少した。特定米穀が減少した理由はそれだけではない。飼料米増産政策で29年産飼料用米作付面積は9万3000haに拡大しており、この面積から発生する特定米穀は飼料用に供給されるため加工用に仕向けられることは原則的には無い。それだけではなく一般主食用米の圃場から発生した特定米穀も飼料用米増量原料として使われているのがあるのではないかとみられており、それが特定米穀供給量減少に繋がっていると指摘する業者もいる。わかり易く言うと政策的要因で特定米穀の需給の振れが大きくなっていることになる。
特定米穀の価格が上昇すると米菓、味噌などコメ加工食品業界はより割安な原料米の手当てに走る。より割安な原料とは加工業界向けに売却されているMA米である。
亀田製菓のMA米買受実績を見ると定例販売分は平成26年4月から平成27年3月までの1年間で1万3800t購入していた。今年度3月分までの購入実績は公表されていないので29年1月から12月までの1年間合計では1万8500tに増加している。別表に示したグラフは全国米菓工業組合が買受窓口になっているMAアメリカ産うるち精米の買受数量推移と価格動向を示したものだが、特定米穀の価格が安かった26年から28年にかけてMA米の買受数量は減少しているが、29年に入って急激に買受数量が増加している。
農水省の調査によると清酒、焼酎、米菓、味噌などコメ加工食品業界が使用するうるち米の数量は77万tになっている。もち米も19万t使用しているのでトータルでは100万t近いコメを使用していることになる。
農水省で深くコメ政策に関わって来たOBは「他の業界で言う、下がった品質レベルに応じて利用するカスケード利用というものですね。日本民族は、コメを大事にしてきたので、食用米でいちばん高い品質から外れたものが業務用になって、加工用になって、米ぬか油をつくってというように、すべてを活かして全体を支え合うことで産業として成り立ってきたわけです。飼料用米や加工用米の政策は、これをポンと抜いてしまったので、そういう人たちが廃業せざるを得なくなってしまいます。そうすると、品質の低いコメをどう利用するかという技術も無くなっていきます。それは、民族的に問題だと思います」と言っている。
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