【森島 賢・正義派の農政論】資本のための原発の安全性2018年7月9日
先週の4日に、原子力安全委員会が東海第2原発は「安全」だと判断した。世界でいちばん厳しい安全基準の審査に合格した、というわけである。
専門の科学者たちが安全だというのだから、間違いなく安全なのだろう、それなら再稼働しても安心だ、と誰もが思う。
しかし、それは違う。
この科学者たちの安全宣言は、資本財である東海第2原発の保全についての宣言である。壊れて鉄クズになるリスクは比較的少ない、というだけである。つまり、資本のための安全であって、国民にとっての安全ではない。
科学者たちは、そのことを充分に知っていながら、安全審査に合格した、といっている。科学者たちの罪は重い。そういう罪ある科学者を悪用する政治家の罪も重い。両者は共犯関係にある。
科学者たちは、科学者らしく正確に、そして誤解の余地がないように、説明すべきである。つまり、東海第2原発が自然災害によって物理的に破壊され、原子炉の中にある超高濃度の放射性物質が外部に漏れて出る確率は、過去の自然災害の資料から推定すると、それほど大きくない、と言うべきである。
そうしないと、政治家から悪用されるし、小バカにされる。それだけでなく、国民を騙すことになる。そして、科学に対する国民の信頼を失墜させる。だから、職を賭してでも、政治家に「安全だ」などと言わせるべきではない。
政治家たちは、つい40年前、「人の命は地球より重い」と言った当時の総理大臣の言葉を噛みしめるべきである。
そうして、両者が協力して、名前の「原子力安全委員会」から、欺瞞のための「安全」を削って、せめて「原発再稼働検討委員会」に改名したらどうか。
◇
さて、考えるべき問題は多い。
はじめに、物理学的な問題である。
「安全」だとして、再稼働に一歩進めたことに問題がある。つまり、稼働すること自体に安全問題がある。
これは最近、小泉純一郎元首相などが力説していることだが、稼働の結果、出てくる高放射性廃棄物の処理方法がない、という問題である。つまり、原発は稼働そのものが危険の原因になる、と言っている。
つぎは、生物学的な問題である。委員会の各氏とも、絶対に安全だ、とは言っていない。つまり、事故が起こる可能性がゼロだ、とは言っていない。科学者なら、それほど傲慢ではないだろう。実際に福島では事故が起きたのだ。
もしも、委員会の各氏が科学者なら、この問題を科学者として考えねばならない。事故が起きたばあい、放射能を浴びた生物に何が起るか。生物の遺伝子に何が起こるのか。
われわれ人類がその経験をしたのは73年前である。僅か73年間の経験しかない。500万年の人類史からみれば、最近の一瞬に過ぎない。この経験から何が言えるのか。分からないことばかりではないか。それでも、安全だ、と言うのか。
◇
最後に、社会科学的な問題である。
事故の可能性はゼロではないのだから、事故のときの対策を、あらかじめ考えておかねばならない。
それなのに、この安全委員会は、避難路や避難住宅の確保も考えていないし、避難のための移動手段さえ考えていない。
さらに、社会科学として言えば、原発の人為的な破壊、たとえば、テロ攻撃による破壊も想定していない。最近の地中貫通爆弾による破壊も想定していない。
やはり「原子力安全委員会」ではなく、「原発再稼働検討委員会」と改名すべきである。そうして、資本の側に立ち、国民を危険に曝すまでして、資本の利益の追求を考えるのではなく、原発の再稼働の、国民にとっての危険性を明らかにすべきである。
(2018.07.09)
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