【熊野孝文・米マーケット情報】輸出拡大と国産米需要拡大をイコールにする方策とは?2019年6月11日
全国味噌工業協同組合連合会が行った読後感想文コンクールで最優秀賞を受賞した小学校5年生の女子生徒が書いた作文がある。すこし長くなるが全文を紹介する。
「『おばあちゃんが子供のころは、毎日毎日、おみそ汁が食卓に並んでいたんだよ。』
私の祖母は、よくそう話します。
日本の伝統食であるみそ汁は私の大好物だし、わかめや豆腐、油あげの入ったみそ汁を飲むとほっとした気持ちになります。
そんな昔ながらの日本の料理であるみそ汁について、私が衝撃を受けたのは社会科の授業でした。なんと、日本で使用されている大豆のほとんどは外国産だったのです。みその原料である大豆の自給率は、たった7%で、ほとんどを輸入に頼っています。輸入の半分以上がアメリカからで、あの広大な土地で、大豆は大量に生産されています。日本の国土を考えたら、しかたのないことかもしれません。
輸入された大豆の多くは、豆腐や納豆、みそやしょうゆなどになります。これらも日本の伝統食といわれるものです。私は、原料のほとんどを輸入に頼っている状態で、日本の伝統食といってよいのかと疑問に思いました。 でも、今回『おみそ』という副読本を読んでみると、なるほどと思うことがありました。
一つは、みその種類によって適した大豆を選んで使用し、引き継がれた技術で作り上げているということです。輸入した大豆を見定める日本人の目が必要です。
もう一つは、日本で作られたみそが、世界中に輸出されているということで、日本の技術・伝統を輸出していることにもなると思いました。
『原料である大豆を輸入して、日本人の技術や技で加工したみそを輸出する』。これは自分が苦手なことを友達にしてあげるということと同じだなと思いました。人も物も支えあうことで、それぞれの良さをいかすことができます。私は、『みそ』の学習を通して人のつながりを再確認することができました」
この作文を読んだときは、本当に小学生が書いた作文だとは信じられなかった。次にいまの子供たちはこうした目で世界を見られるようになっているのかと感嘆を覚えるようになった。
味噌業界は業界ぐるみで味噌の情報発信に熱心であるほか、各企業も独自に小学校に出向いて味噌をメインにした出前授業を行っている。ある味噌メーカーが和食応援団と一緒に都内の小学校で出前授業を行ったので、どのようなことを行っているのか取材に行ったことがあった。
授業ではクイズ形式で「日本で一番味噌を作っている県は?」と質問すると一斉に児童が手を上げ「長野県」と答えた。長野県は20万tの生産量で2番目が愛知。続いて主原料(コメ、大豆、麦)によって出来る味噌が違うことを紹介、仙台、信州、東海、西京、九州の5つの味噌サンプルを児童グループに配布、その味噌がどの原料で作られているか当てるクイズも出されたが全て当たったグループもいた。著者よりも味噌のことを良く知っているので驚いてしまったが、これだけ答えられるということは小学校の授業で日本の伝統食品のことが教えられているということなのだろう。
こうした地道な活動もあってか減り続けていた味噌の需要量が下げ止まり、今年に入ってから2、3月と前年同月の生産量を上回った。特筆すべきは輸出の伸びで、今年に入って1~3月までの累計輸出量は4539tで前年同期累計比110.9%と10%増という高い伸びを示している。国別の伸び率を見るとイギリス向けが164.2%、タイ向けが151.4%と高い伸びを示しているところもある。まさに日本人の技術、伝統が評価され、輸出量が伸びているという証である。
味噌業界が使っている原料が外国産であるのは大豆だけに留まらない。コメも主原料はアメリカ産とタイ産であり、年間6万t近くを買い受けている。メーカーの中には1万t以上外国産米を買っているメーカーが2社ある。つまり味噌の輸出が好調で生産量が増えても国産米を使わない以上、国産米の需要拡大にはならないことを意味している。米菓も似たような構造にあり、米菓の輸出量が増えることがイコール国産米需要拡大にはつながらない。これを輸出拡大イコール国産米需要拡大になるようにするには、MA米と同値で国産米が入手できるようにするしかない。現在、MA米の買受価格は60kg換算で7740円程度である。清酒を含め輸出に取り組むすべてのコメ加工食品メーカーがこの価格で国産米を入手できるようにすれば国産米の需要量は飛躍的に伸びるはずである。
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