組織に求められるガバナンス・内部統制と理事の役割 アクセンチュア・プリンシパルディレクター信森穀博氏2025年10月20日
JAは地域に不可欠な存在だが、内部統制の不徹底から「残念でもったいない」状況に陥るケースがある――。アクセンチュアの信森穀博プリンシパルディレクターは、経営戦略と内部統制とは「車の両輪」であり、組合員本位のサービスと職員満足度の向上に直結すると強調。内部統制と「3線管理」の実践についてかみ砕いて提言した。

経営戦略と内部統制は「車の両輪」
JAは地元に不可欠で大切な存在ですが「残念でもったいないな」と思うこともあります。その一因は、内部統制について十分に機能させられていない、活用できていないことです。
内部統制・3線管理態勢を現場に根付かせるためには「3つの〝や〟」、すなわち「やさしく、やくに立つ、やる気になる」が必要です。これは、内部統制を単なる規制ではなく、現場の仕事の進め方を効率化・透明化し、職員が自発的に取り組むためのツールと位置づけることを意味します。ワイワイガヤガヤ、楽しく身に付けたいものです。
内部統制はトレーサビリティと同じで、仕事の進め方を見せていくことです。内部統制が機能すると、組合員へのサービスが向上し、職員の満足度が高まり、長期的な収益確保につながります。逆にやらないと困ったことになります。
経営戦略と内部統制はよく「アクセルとブレーキ」にたとえられますが、少しミスリードです。私は「車の両輪」と言っています。
「外部の声」を経営に
役員の役割は、経営戦略を立てて儲ける仕組みを作るとともに、その仕組みから生じるリスク、不都合を防止することです。車のタイヤがはまっているか、締まっているか、同じ方向を向いているかを確認するのです。
ガバナンスは、経営層が「外部の声」を踏まえた経営を行っているか監視することです。JAには社外取締役はいませんが、地域に密着しいろいろな声が聞こえくるので、それらの外部の声を把握し経営に反映させることは十分可能です。
早期発見の「発見統制」
金融の世界でのリスクは不確実性を意味します。株価は明日上がるか上がらないかわかりません。それがリスクですが、リスクを取らないと収益は上がりません。リスクを取りながら、顕在化しないようにバランスを取るのがリスク管理です。
今は「法令以上」が求められる時代です。共済の一斉推進は今はしていないと思いますが、投信やファンドラップに力を入れているとすると、それはリスクになりえます。リスクの所在がどんどん変わっていることに留意が必要です。リスクに早めに気づいて対応する「発見統制」(問題の予兆を早期に察知する仕組み)が重要になります。
マネーロンダリング防止も重要です。マネロンの手口は巧妙化し、知らず知らずに引き込まれます。異常取引を検知し口座を止めるなどの対応を取れば、顧客の資産を守れ職員は感謝されます。
不祥事を防止するために職員を縛るのが内部統制だというのは間違いです。内部統制で一定程度防ぐことはできますが、それだけで不祥事は防げません。「不正のトライアングル」は「動機」と「正当化」と「機会」。それらが重なった時、不正は起きます。やみくもに強化するのではなく、不正の機会を減らすなど、肝心要のところを押さえることが必要です。
3線管理の実践
3線管理は内部統制の一つの枠組みです(本店・事業部門・各支店が「1線」、リスク管理部門・コンプライアンス部門が「2線」、監査部門が「3線」)。
1線はひたすら売りまくるのではなく組合員意向をしっかり把握する。2線は「この規程を守れ」と教えるのではなく、現場に行きながら必要に応じて規程を作っていく。牽制とともに現場への支援が重要です。3線は、大切なルールがしっかり守られているかを見ます。
経営陣が関与し、カタチを作ったら実際に機能させる。2線にはしっかりした人、1線でエースクラスだった人を置きましょう。そういう人は何がいいか、悪いかわかっているし、「あの人が言うことなら」と職員も聞いてくれます。
JAの強みを活かす
通帳と印鑑がないと預金は下ろせないというルールの上で、災害時には顔パスで緊急に下ろせる「農協ならでは」のサービスができ、顧客の期待を超えるサービスが感動を与えます。
農協では利用者と出資者と職員が概ね一致しています。3線管理の目的は組合員本位、従業員本位を実現することです。内部統制が定着すれば、その強みがさらに活かせます。
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