国旗と国歌になに思う【小松泰信・地方の眼力】2025年12月10日
「令和八年通常国会において、『日本国国章損壊罪』を制定し『外国国章損壊罪』のみ存在する矛盾を是正する」(自由民主党・日本維新の会 連立政権合意書 令和七年十月二十日)

君が代は戦争の記憶と結び付く
「石垣市議会与党会派の議員が、市内の小中高校に通う児童生徒に国歌『君が代』を歌えるかなどを聞く独自のアンケートを実施していたことが明らかになった」で始まる沖縄タイムス(12月10日付)の社説には、「君が代は、天皇の名の下で進められた戦争の記憶と結び付いている」という重い一文も記されている。
調査を巡っては9月、市議会が市や市教育委員会に実施を求める決議案を可決した。しかし君が代の指導に関しては、当時の阿部俊子文科相が、「児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようとする趣旨ではない。あくまで教育指導として進めていくことが重要だ」との見解を示し、市教委も実施しないと決めていた。
しかし11月下旬以降、自由民主党系の2会派が、知人を通じて協力を呼びかけ、54人の児童生徒から回答を得ることに。
1999年の国旗国歌法は日の丸を国旗、君が代を国歌として初めて法的に明確化したが、当時の小渕恵三首相は国会答弁で「法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務づけを行うことは考えておらず、したがって、国民の生活に何らの影響や変化が生じることはない」と表明した。
同市教育長は、調査を実施しないと決めた判断は「間違っていない」と述べ、今後も実施しない考えを示した。
参政党の賛成できない「国旗損壊罪」法案
10月27日、参政党は日本国旗や自衛隊旗などを損壊した場合に罪に問う刑法改正案(「国旗損壊罪」法案)を参院に単独で提出した。
東京新聞(11月8日付)の社説は、「憲法が定める『表現の自由』を侵害しかねない」として、法案撤回を求めている。
さらに、「戦前の植民地主義や戦争動員に利用された史実から、日の丸自体を否定的にとらえる人もいて、罰則の制定で国旗への敬意を強要することになれば『思想・良心の自由』を脅かすことにもなる」とする。
さらに、改正案が「日本を侮辱する目的」を損壊罪適用の条件としていることに対して、「国家への侮辱という条件は曖昧であり、恣意的解釈を許さない刑法の原則に反する」と問題点を指摘する。
そして、「国や郷土に愛着を持つことは、人々の自主性に委ねられるべきであり、権力が強いるものではない。寛容さや自由を尊重する国柄を守ることこそが、国に対する信頼を国民から得る道である」とする。
愛国心は強制されるべきものではない
この問題に関して毎日新聞は、岩屋毅前外相(12月9日5時30分・有料記事)と志田陽子氏(武蔵野美術大教授・憲法、12月9日5時31分・有料記事)のインタビュー記事を掲載している。その概要は次の通り。
まず岩屋氏。「現在社会問題化しておらず、立法の根拠となる『立法事実』がないので、立法の必要はない」とした上で、 「一部の人たちの心情に訴えることを目的とするような立法がなされるべきではない」と断じている。
参政党が、日の丸にバツ印をつけた抗議者の存在を問題視していることについては、「それは国家を侮辱しているのではなく、参政党の主張に対する抗議」と小気味良い。
「立法事実がないのに、あえて立法を行うことは、何かしら国民の精神に圧迫を加える」ので要注意とする。
愛国心については、「本来、涵養されるべきものであって、強制されるべきものではない。こういった立法が一種の強制に近いようなものだと受け止められることは、決して好ましいことではない」と言い切る。
そして、「刑法は何かしらのアピールや主張のために立法されるべきものではない。実際に起きている問題を解決するため、やむを得ず禁止規定を設けて罰則を設けている。そういった規制はできるだけ抑制的で、最小限でなければならない。国民のさまざまな自由をできるだけ束縛しない、強制しないという『構え方』が、人権を尊ぶ民主主義国家としては大切」とくれば、異議なし。
日の丸の×もヤジも受忍せよ
志田氏は、まず保護法益(特に刑法が保護しようとする利益や価値。例えば、殺人罪の保護法益は「人の生命」)は何かを考えることが必要とする。「外国国章損壊罪」の保護法益は「外交の安定性」。日本の国旗を損壊した場合、「こんな日本ではやっていけない」という気持ちを示すために、日本の国旗にバツ印を書くことは表現の自由に属する部分。政治的な表現の自由は、特に強く保障されるべきもの。これを禁止する正当な理由、まして処罰によってやめさせる理由が見当たらない。
次に、国旗(章)損壊罪に該当する要件が限定されていない。公の機関が所有している国旗を損壊するなどの行為を罰するのであれば、保護法益はある。ただし、既に器物損壊罪や公務執行妨害罪がある。無限定の場合、「日の丸弁当」について「日本国なんか食ってやる」と言って、崩して食べる行為が処罰対象になる可能性だってある。法律の仕立てが甘いと「過剰包摂」が起き、非常に怖い法文になる。(小松;例えば、治安維持法時代の因縁つけを想像すれば納得)
一方で、芸術と称して国旗を引きちぎってみせる行為などを、愛国心に反する表現だから許さないというのが法律の真の目的だとすれば、表現の自由や思想・良心の自由に不当に踏み込むことになる。
日の丸にバツ印を付ける行為やヤジも、選挙の候補者としては受忍すべきも。警察力を使って抑える理由はない。
構成員の平等な発言が民主主義の成立には必要。民主主義と自由、平等のセットが今、米国を中心に世界中で揺らいでいる。
その中で日本こそが、このセットを守る姿勢を貫くことで、国際社会に「名誉」を示す国であってほしい。
みっともない国ニッポン
岩屋氏のような見識こそ、保守政治家なら備えておかねばならないものだろう。悲しいかな、絶滅危惧政治家か。
志田氏の指摘は、法の世界ではイロハのイのはず。それも踏まえず、このような法案を出してくる連中が肩で風切る国会に、暗澹たる気持ちを禁じ得ない。もちろん、国際社会に「名誉」を示す国にはなれない。だって、みっともない国ニッポンだから。
「地方の眼力」なめんなよ
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