JAの良さ生かす内部統制 役員の役割、具体例から学ぶ コンプライアンス実践トップセミナー2025年10月20日
JA全中は10月16日、東京都内で令和7年度全国JAコンプライアンス実践トップセミナーを開いた。内部統制とコンプライアンス、ハラスメント防止について情勢報告と講演を受け、「JA版3線モデル」(業務執行が「1線」、リスク管理が「2線」、内部監査が「3線」)の強化について実践的に学んだ。

JA全中の山野徹会長のあいさつの後、JA全中の福園昭宏常務理事が情勢報告。アクセンチュア株式会社プリンシパル・ディレクターの信森穀博氏、国広総合法律事務所の國廣正弁護士、みのり監査法人理事長の大森一幸氏(公認会計士)、木島絵里子氏(弁護士、公認会計士)が講演した。
JAの経営環境と内部統制
JA全中の福園常務理事
JA全中の福園常務理事は、まずJA経営を取り巻く情勢を概説。人材育成に関連して2024年度のエンゲージメント調査にふれ、「達成感」「貢献」は7割超と高いが「推奨意向」は36.4%と低く、将来性への懸念がうかがえると述べた。不祥事件等は2015年まで減少してきたがその後横ばいに転じ、重大な不祥事も発生しているとし、危機意識を持とうと提唱した。
それを踏まえ、「JA版3線モデル」強化のポイントとして、2線の体制整備、専門人材育成を強調。何か起きてからの「事後対応」中心から、主体的・能動的にリスクを把握し牽制機能を発揮すること、事務の堅確性とともに業務運営の適切性を確保することを説き、公益通報窓口「全国JAヘルプライン」の運用を説明した。

アクセンチュア株式会社プリンシパル・ディレクターの信森穀博氏
アクセンチュアの信森穀博氏は、内部統制と経営戦略とが「車の両輪」だとし、農協経営を取り巻くリスクとその対応策を具体的に説明。内部統制と3線管理が「役立つ」ことを解き明かし、内部統制の確立によって「農協の強み」がさらに生かせると参加者を鼓舞した。
お天道様が見ている
國廣正弁護士
國廣正弁護士は、「法令遵守からのアプローチ」ではなく「不祥事の実態からのアプローチ」を採る必要性から切り出し、法令に違反しない不祥事でもリピテーション・リスクが生じると指摘。「トップにはインテグリティ(真摯さ)が求められる。日本でいえば『お天道様が見ている』という感覚だ」と述べた。「有事(不祥事)対応」では「隠すと損」(バレるとさらに叩かれる)なので、初動から専門家も入れて徹底調査し、説明責任を果たすことで信頼回復を、と説いた。役員のハラスメントが重大リスクになることも、実例を上げて説明した。
「あれっ」と感じたら上司が訪問
みのり監査法人の大森一幸理事長
みのり監査法人の大森一幸理事長は、コロナ禍以降、不祥事の若年化、凶悪化が進み、従来の内部統制では対処にしくくなっていると問題提起し、内部統制で人事部の役割が大きくなっていると提起した。「高齢者が短期間に多額の預金を引き出すなど『あれっ』と感じたら上司がお客様を訪問して欲しい」とアドバイス。國廣弁護士と同様、「不祥事は、正直にタイムリーに報告し、調査し、再発防止策を講じることが何よりも重要」と力説した。
木島絵里子弁護士・公認会計士
木島絵里子弁護士・公認会計士は「機会、動機、正当化」という不正のトライアングルのうち、動機と正当化をつぶすのが「統制環境」で、人間の弱さを自覚しつつ誠実性、倫理観の醸成、適切な人事方針と管理を図るべきと説いた。大森氏は最後に、「米の安定供給でもJAに期待している。JAグループとしての誇りこそ、最大・最強の内部統制だ」と締め括った。
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