【JCA週報】協同組合としてのアイデンティティ2019年8月5日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「協同組合としてのアイデンティティ」です。
協同組合研究誌「にじ」2019年夏号の特集「協同組合としてのアイデンティティ-多様性の中から共通の思いを探る-」の座長をお願いした明治大学 大高研道教授の特集改題を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2019年夏号
「特集:JCA設立1周年記念 協同組合としてのアイデンティティ-多様性の中から共通の思いを探る-」
大高 研道 明治大学政治経済学部・教授
自己責任ではない「自助self-help」
協同組合は出資=利用=運営(出資=労働=経営)の三位一体を組織原理とする非営利協同事業体である。そこで重視されてきたのは、組合員の主体性である。つまり、共通の思いをもつ人びとが自ら出資すること。そして、お金を出すだけでなく口も手も出すこと。さらにその組織(協同組合)の運営に責任をもつことが協同組合らしくあるための基本条件といえる。ヨーロッパの協同組合では、そのような特質を"self-help自助)"と表現する。それは、巷で言われているような「自己責任」ではなく、自分たちの暮らしを豊かにするために、自分たちでできることは自分たちでやる、という主体性の原理として理解される。
ただし、そのニーズの実現は一人では成し得ない。よって、共通の思いを実現するための協同が不可欠となる。その意味では、協同組合の本質にある思想は"mutual self-help(相互自助)"(J.ホリヨーク)といえよう。
「多様性の中の統一性」と「統一性の中の多様性」
他方で、協同は矛盾に満ちた営みでもある。共通のニーズをもつ人びとの集まりであっても、その思いは多様であり、また人的結合体であるがゆえに、社会変化や組織の発展段階に応じて意見の相違が生じ、目的が変質することも間々ある。(略)歴史を遡ってみても、協同組合の生成・発展のプロセスは、意見対立の連続であった。(略)このように、先人たちはすでに協同の難しさを認識しており、その歴史的教訓から「立場や考え方の違いを超えて協同すること(「多様性の中の統一性」)」の大切さとともに、共に歩む中で多様性を認めあい尊重すること(「統一性の中の多様性」)の二つの視点から「協同」を捉え実践することの重要性が語られてきた。しかし、それを実践することは容易なことではない。(略)
協同組合間協同の取り組み
(略)
本企画は、2018年4月に発足した日本協同組合機構(JCA)設立一周年記念特集としての性格を有している。実は、当初からそのような意図があったわけではない。偶然にも遡ること1年半前に、本号を担当することになった筆者が提案・企画したテーマが、違いを認め合いながらも共通し、共有しうる協同組合としての価値とアイデンティティを再確認することを目的としたものであった。それは、JCAの存在意義を確認するというテーマと重なり合う部分が多い。かくして、本企画は、協同組合のネットワーク、そしてプラットフォームとしてのJCAへの期待も込めて編まれた。
違いを認め合いながら、共通の価値を不断に追求し続ける実践・理論へ
以上の問題意識を踏まえ、本企画では、同質性を前提とした協同(組合)実践論ではなく、むしろ、さまざまな矛盾や意見対立を受け止めあいながら、協同的な営みが生成・蓄積・発展する論理を実践的・理論的に明らかにしたい。(以下、各論文の紹介)
論文を通読し、あらためて本特集テーマである「多様性の中にある共通の思い」について沈思した。多様な人びととの交わりは、違いを認め合い、共に行動するうえで不可欠である。しかし、協同組合が大切にしてきたものは、他者との接点がないままに個人の自由な振る舞いを許容する「多様性」とは一線を画する。JCAをひとつの核としながら、多様な協同組合が共通の思いを語り合い、行動する対話的文化の担い手としての役割を発揮できる空間と関係性の構築がいまこそ求められている。そのための小さな一歩を踏み出す勇気を我々一人一人が持てるような社会でありたいと切に思う。
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