【熊野孝文・米マーケット情報】元年産からかわる大手コンビニのコメ仕入条件2019年9月10日
日本米粉協会は、9月9日、グルテン含有量が1?/g(=1ppm)以下の米粉を認証する「ノングルテン(Non-Gluten)米粉認証」の第3号が誕生したと発表した。
大手コンビニが米卸等に通知してきた「元年産米の仕入れに関する条件提示」が納入業者の間で話題になっている。このことについて記す前にいわゆる業務用米の世界がどうなっているのか触れてみたい。
農水省のマンスリーリポートによると中食・外食業界が使用するコメの割合は、平成9年度が18.9%であったが、平成30年には30.0%にアップしている。農水省以外の調査では38%と言う数値も出ているが、農水省は4半期ごとに個別企業からアンケート調査を行っており、その最新版がマンスリーリポート8月号に出ている。それによると今年4月から6月までの調査結果では、コメの仕入れ数量が前年同期にくらべ10%以上増えたと答えた企業が18%にも上っている。一方で10%以上減ったという企業も15%あり、全体としては前年同期比100.1%になっている。コメの全体需要が減っている中で前年並みの数量を使用しているという事は、必然的に中食・外食業界のコメ消費量のウエイトが高まっていることを意味している。
では、こうした中食・外食企業がどのような要因で自社が仕入れているコメを決めているのかと言うとまさに千差万別で、個々の企業によって違う。そこで全体の傾向を知るために業務用米の販売ウエイトが高い大手卸に最近の情勢を聞いてみた。
それによるとなんといっても仕入決定の最大の要素は"価格"。これまで4年連続して米価が値上がりしているため価格に対する条件提示はこれまでにないぐらい厳しくなっているという。これまではコメの値上がりは他の食材の値下がり分で吸収するという術もあったが、現状は人件費や食材以外の物財費も軒並み値上がりしているためそうした術を使えなくなっているという。おまけに農協系統から仕入れるコメは運賃の値上げに加え、2等格差が縮小されたことから仕入れ玄米のコストアップが避けられず、頭を抱えている状態。もちろんこの卸は産地側と複数年契約等事前に元年産米の仕入れ数量について協議を重ねているが、肝心の価格については「白紙」状態。
価格以外の要素は、当然のこととしてコメの品位・食味が上げられる。品位については精米段階でこの大手業者が委託している全国150カ所もの精米工場で抜き打ち検査までやるという徹底ぶりで、相手先が求める精米の品位を担保している。中食業者の中には卸任せにせずに自社で様々な検査器具を揃え、精米の歩留りやタンパク値などを検査しているところもあり、ご飯をウリにするところは精米チャックを徹底している。面白いのは食味で、大手の中食・外食企業は自社の品質管理室でご飯の官能テストをやるのは当たり前だが、オーナー一人で決めているところが多いということ。叩き上げのオーナーは自分のベロメーターに絶対の自信を持っているという事なのだろう。
冒頭の大手コンビニも自社で販売する弁当、おにぎり等の食味(美味しさ)に関しては商品部はもちろん経営トップも厳しく、トップの指示で12回も作り直しを命じられたという話もあるほど。
そのコンビニが示した条件提示とは、数量・取引提案条件は(ア)産地、銘柄、30年産食味ランキング実績、最大供給可能数量、着地条件。(イ)従来からの提案産地品種以外の品種についても幅広く提案を求める。(ウ)次年度も継続して供給できるものか、元年産だけかを提案。(エ)提案された数量が確約出来るもの、が示されている。
納入業者側は、こうした提案がなされた背景には、直近の環境として物流費の高騰で、遠隔地からの配送がコストアップに繋がることやコンビニでの米飯類の売上傾向では地元産米を使用した商品の売れ行きが好調で「地元調達を優先する」方針があるものとみている。産地品種の幅広い提案については、おにぎり、弁当以外にピラフ等米飯質の違ったコメを様々にテストしてみたいというコンビニ側の考えがあるためとみている。
付帯条件の中に調達先名は以下の項目から選定することと題して「全農、農協、全集連、一次集荷業者、生産法人、自社集荷、米卸、その他」と記している。
このコンビニは年間コメ使用量が20万tにものぼるため、これまで1産地1銘柄の最低ロット数は1000tであった。とろが元年産から最低ロットを10分の1の100tでも可と言って来た。なぜ、10分の1にしたのか? 単にいろんな産地銘柄を試してみたいという事だけではない。真の狙いは「生産者の囲い込み」である。このままでは自社が必要とするコメを確保できなくなるという危機感をもっているのだ。
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