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【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】【日米貿易協定】新たな虚偽と隠ぺい発覚2019年10月17日

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【鈴木宣弘・東京大学教授】

 TPPで約束した米国の関税撤廃は、日本から米国への輸出の4割を占める完成車と自動車部品の関税撤廃の約束は得られず、さらに米国へ輸出する牛肉の関税撤廃も反故にされ、日本の牛肉輸入は「TPP超え」となり、日本にとって非常に「片務的」なトランプ大統領の選挙対策のためだけの「つまみ食い」協定であることが一層明るみになってきた。

◆自動車関税撤廃の虚偽と隠ぺい

 署名後にわかった米国側の約束内容(譲許表)は「Customs duties on automobile and auto parts will be subject to further negotiations with respect to the elimination of customs duties」、 つまり、「自動車関税の撤廃についてはさらに交渉することになっている」としか言っていない。撤廃が明記されたとの日本側説明は完全な虚偽で、それを隠ぺいして国民をだまして署名してしまったことが明るみになった。今も、和訳は出していない。和訳すると虚偽が明白になるからであろう。このような虚偽と隠ぺいが許されてよいのであろうか。

25%の追加関税はいつでも発動されかねない

 しかも、協定本文に、協定のいかなる規定も安全保障上の措置をとることを妨げないと明記されていることは、安全保障を理由にした自動車への25%の追加関税はいつでも実施できることを意味し、追加関税は阻止できたというのも虚偽である。逆に、安全保障のために食料の国境措置は守ると我が国も主張する気概が必要だ。

◆関税撤廃率51%程度の前代未聞の国際法違反協定

 だから、米国側で92%、日本側で84%の関税撤廃という日本政府発表は虚偽である。92%から自動車関連41%を引くと米国側は51%しかない。過去のFTAで85%を下回った協定はほぼ皆無なので、いかに前代未聞の国際法違反協定かがわかる。

◆「日本からの牛肉輸出をTPP以上に勝ち取った」も虚偽

 米国へ輸出する牛肉は、TPPより勝ち取ったというのも虚偽だ。TPPでは低関税枠の拡大(200トン→6250トン)のうえ、枠外関税(26.4%)も15年目に撤廃され、完全自由化のはずだったが、今回は実質的にはわずかな枠の拡大(200トンを少し超えても枠内扱いが可能になる程度)にとどまり、関税は撤廃されない。TPPで合意していた米国の牛肉関税撤廃は反故にされた(表参照)。

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◆米国からの牛肉輸入増に合わせて枠が増えていく?

 日本は米国にTPP11協定よりスピードアップして牛肉関税を38.5%から9%まで削減する上、牛肉の低関税が適用される限度(セーフガード)数量は、米国向けに新たに24.2万トン(→29.3万トン、2033年)を設定した。TPP11で設定した61.4万トン(→73.8万トン、2033年)は、TPPで米国も含めて設定した数量がそのままなので、日本にとっては、米国分が「二重」に加わることになり、「TPP超え」の低関税枠となった。
 TPP11諸国が61万トンに含まれる米国分を差し引く交渉に簡単に応じるとは思えない。豚肉やホエイについても同様である。
 しかも、枠を超過して高関税への切換えが発動されたら、それに合わせて枠を増やして発動されないようにしていく約束もしていることが判明した。これではセーフガードではない。

◆自動車のために農業を差し出し続ける意思表示

 今のところ、2020年1月に協定を発効させてから4か月のうちに第2ステージの交渉をまとめるかのような見込みが示されている。記者会見で日本の交渉責任者は米国との今後の自動車関税撤廃の交渉にあたり、「農産品というカードがない中で厳しい交渉になるのでは」との質問に答えて「農産品というカードがないということはない。TPPでの農産品の関税撤廃率は品目数で82%だったが、今回は40%いかない*」、つまり、「自動車のために農産物をさらに差し出す」ことを認めている。

*実際には37%。総品目(タリフライン)数 2594のうち1634が除外。農の総品目数1332、林・水1262。林・水はすべて除外なので、1634-1262=372 が農の除外品目。 つまり、農だけの撤廃率は72%と思われる。

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