【熊野孝文・米マーケット情報】産地銘柄別の価格はどうやって決まるのか?2019年12月3日
以前、この欄で産地銘柄別の価格はどうやって決まるのかについて触れた際、需給だけでなく様々な要素が絡み合っており、価格決定要素が複雑過ぎて「相場に聞くしかない」と記してしまったが、この問題は重要なので、改めて実際に行われた取引会を参考に売り買いに参加したコメ卸の見方を交えて具体的に紹介したい。
その取引会は11月27日に日本コメ市場が開催した令和元年度第5回目の取引会で、同社は翌日に取引会の上場概要をホームページにアップする。
上場概要とは、この取引会に売り物として出された総数量と主な産地銘柄の売り唱えの60㎏玄米当たりの加重平均か価格と各会場の参加人数をまとめたものである。
それによると参加した卸は東京・大阪・福岡3会場合計で92卸109名になっている。参加卸のほとんどは全米販の会員卸だが、会員でなくても主催者が条件を満たしていると判断すれば参加できる。ただし、報道関係者は会場に入ることはできない。上場米穀は86産地銘柄もあり、上場数量は6677tで約11万俵。新米の出盛り期とあって前回比173.6%と増えた。
主な産地銘柄の上場加重平均価格(売り唱えの平均価格)は、1等東京着条件税別で、北海道ななつぼしが1万5276円(前回比116円高)、東北ひとめぼれ1万4839円(同11円高)、東北あきたこまち1万5048円(同77円安)、関東コシヒカリ1万4830円(同36円高)、新潟一般コシヒカリ1万6717円(同251円安)となっており、ここまでがホームページにアップされた内容。
取引に参加する卸には日本コメ市場から産地銘柄別に等級、荷姿、数量、着地や引取り条件を記載したものがFAXで送られてくる。その枚数はA4版で12枚程度になる。これを取りまとめているのが全米販100%子会社のクリスタルライスで、同社は事前に農協や集荷業者等から売り希望の銘柄や数量、価格を提示してもらい、それらを整理してまとめている。農協とも基本売買契約を結び代金保証をしているため売り人にとっては安全な市場だということができる。ただし、基本契約を結んでいるからといって農協等から依頼のあった売り玉を全量取引会に出すとは限らない。このことや手数料について触れると本題から外れてしまうので割愛するが、大切なことは価格の欄に記載されていることで、「確認します」や「応相談」という記載は見られるもののほとんどが具体的な価格が記載されている。それを見ると同じ産地銘柄等級でも売り唱え価格にかなり差がある。
例えば秋田県産あきたこまちは15件1万3362俵の売り物が出ているが、売り唱え価格は最も安いものが1万4900円、高いものは1万5300円で400円もの値開きがある。高いものはJA玉で、来年8月末までの引取り条件になっており、保管料等を加算すればそうした価格を希望したいという判断なのだろう。では取引会当日に成約したものはというと、2等米で1万4400円から1万4600円で成約した。量販店での売れ筋商品である新潟コシヒカリはどうなったかというと1等の唱えは1万6900円だが、実際に成約したものは2等玉で1万6300円から1万6350円。卸に言わせると新潟コシヒカリは大半が2等なので「気にならなくなった」とのこと。精米品位に厳しい生協に聞いてみると新潟コシヒカリの乳白米(シラタ)混入率は15%まで認めているとのことで、1等米の品位を条件にしていては必要量が確保できないとの判断。
新潟コシヒカリはあまりにも品位の低下が著しくやむを得ない面もあるが、秋田あきたこまちは1等玉が不足しているというわけではないにも関わらず、なぜ2等しか成約しなかったのか? 卸に言わせるとそれは量販店との値入条件にあるという。要するに1等建値の玉を引いていたのでは自社の利益が確保できないという状況に追い込まれているのである。
注意して見てもらいたいのは、秋田あきたこまち1等の一番安い売り唱え価格と成約した2等の価格差が500円になっていることである。全農系統の建値は1~2等格差は300円だが、実際の取引会では500円格差で成約していることになる。歩留り計算できるわかりやすい等級間格差でも市場ではこうした決まり方をするという1例を示した。まさに相場は生きものであるという証である。
金融工学を応用した株、債券のリスク管理をしている企業から「コメの価格変動をリスク管理するシステムを作りたい」のでコメ業界の現状を教えて欲しいという依頼を受けた。コメを証券化して売買する際、最も重要なことは銘柄間格差や品位格差をどう格付けするかにある。
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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】
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