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コラム:地方の眼力

【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

2020.01.15 
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 過去と他人は変えられない。しかし、未来と自分は変えられる。変わった自分の姿を見て、他の誰かが変わるかもしれない。その小さな変化が集まり大きな変化を生み出せば、未来は必ず変えられる。

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生)◆アホウ副総理のアホウ言2連発

 最近、あの放言、妄言が聞こえないと思っていたら、早速期待に応える2連発。もちろん麻生太郎副総理。
 1月12日に福岡県直方市であった成人式来賓あいさつで、「皆さんがた、もし今後、万引きでパクられたら名前が出る。少年院じゃ済まねえぞ。間違いなく。姓名がきちっと出て『20歳』と書かれる。それだけはぜひ頭に入れて......」と、ライヒンならぬゲヒンなごあいさつ。自民党議員さんたちにこそ聞かせるべき台詞。ハレの日に、異次元の低レベルスピーチを聞かされた新成人の心はさぞや曇ったことだろう。
 翌13日にも、同市で開いた国政報告会で「2000年の長きにわたって一つの民族、一つの王朝が続いている国はここしかない」と述べた。ここってどこですか。政府は昨年5月にアイヌ民族を「先住民族」と明記したアイヌ施策推進法を施行しており、この発言は政府方針と矛盾する。また一般的に、「王朝」とは天皇が実権を握っていた時代をさすが、我が国は長きにわたる王朝国家ではない。今回もまた、雁首そろえた閣議で歴史を変えるおつもりか。


◆全否定される現政権の方針。しかし変わらぬ岩盤支持。

 共同通信社が全国の有権者を対象に1月11、12日に行った世論調査(対象者1962人、回答率52.8%)が、現在の政治情況を示している。その要点は次のように整理される。
(1)カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備を進めてよいかについて;「進めてよい」21.2%、「見直すべきだ」70.6%。
(2)海上自衛隊を中東に派遣することについて;「賛成」34.4%、「反対」58.4%。
(3)「桜を見る会」に関する安倍晋三首相の説明について;「十分説明している」8.1%、「説明は不十分」86.4%。
(4)安倍首相の下での憲法改正について;「賛成」35.9%、「反対」52.2%。
(5)日本経済の先行きについて;「不安」37.6%、「ある程度不安」48.6%、「あまり不安ではない」10.7%、「不安ではない」2.1%。大別すると、「不安」86.2%、「不安ではない」12.8%。
(6)安倍内閣について;「支持」49.3%、「不支持」36.7%。
(7)支持する政党について;「自民党」(43.2%)、「公明党」(2.9%)、「日本維新の会」(4.4%)の与党系は50.5%。野党(立憲、国民、共産、社民、れいわ)は、16.1%。「支持する政党なし」31.5%。
(8)立憲民主党と国民民主党の合併への期待について;「期待する」22.8%、「期待しない」69.3%。
 以上のように、IR、自衛隊の中東派遣、桜問題への説明、そして憲法改正について、世論の多くは、政府・与党の方針等を否定している。経済の先行きについても、9割近くが「不安」を覚えている。結局、現政権の方針は全否定されている。
 にもかかわらず、安倍内閣と自民党を中心とする与党系に対する支持は堅固である。不満や不安が高まる中で、その解決を元凶である政権・与党に求めている。
 しかし、現政権・与党に依存する限り、悪くはなっても良くはならないことを、不満や不安の多さと高まりが教えている。それを解消するためには、政治への関心を高め、現政権に変わるものをつくり出すしかない。


◆社会はきっと変えられる

 西日本新聞(1月13日付)の社説は、「日本財団が昨秋に実施した18歳意識調査では『自分で国や社会を変えられる』と思う人はわずか2割で、諸外国より極端に少なかった」、「若年層の政治参加意識は依然として低い。昨年の参院選の20代投票率は全体平均を下回り、60代の半分にも届いていない」ことから、「まずは政治にもっと多くの若者の声を届けたい」とする。
 「社会全体が余裕を失う中、閉塞(へいそく)感を抱く若者もいる」一方で、「カネやモノという尺度から離れ、人とのつながりや精神的な豊かさに価値を見いだす風潮が芽生えている。多様性を大切にし、ボランティアなどで社会に貢献する若者も増えている」ことを明るい兆しと位置付け、「こうした変化の芽は、未来の希望だ。大きく育みたい」とする。そして、「若い力で社会はより良く変えられる-そんな気概と自信を持ち、大人の一歩を踏み出してほしい」と、背中を押している。
 京都新聞(1月13日付)の社説も、昨年、スウェーデンの少女グレタ・トゥンベリさんらが各国政府に実効性ある温暖化対策を求め、大きな注目を集めたことから、「世の中を動かす力は、未来を担う若い世代にこそある。そんな事実を、改めて教えられた。社会制度も地球環境も、大きな曲がり角にある。人生100年時代を迎え、22世紀が人生の視野に入るみなさんの世代には切実な問題のはずだ」とし、「世の中の変化を見逃さず、おかしいと思った時にはためらわず声を上げる。それが人々の新たな知恵と行動を呼ぶことになる。若い世代の主張が未来へのうねりをつくると信じたい」と、エールを送る。


◆「新農本主義」への期待と警戒心

 日本農業新聞(1月1日付)の論説は、「包容力や自治の力など農の価値は、農業・農村だけでなく社会の持続可能性の展望に貢献する」ので、「年明けと共に日米貿易協定が発効し農業は厳しい船出となった」が、「農の価値を国民が共有すれば強い追い風になる」として、「新農本主義」を提唱している。
 そして「規模拡大に偏った農業振興や、担い手を支えることを目的にした資源管理中心の農村振興など成長産業化政策の限界が見えてきた」ため、「多様な農業経営と農家以外の住民や移住者を含め、地域経済が成り立つ政策が必要」とする。
 これはまさに安倍農政への挑戦状である。当コラム、その内容には賛意を表すが、その成就のためには「国民の理解が不可欠」である。当然、安倍政権と一線を画すことなくして、国民の理解を得ることはない。JAグループにそこまでの覚悟があるのか。
 さらに同紙も指摘するように、農本主義には「軍国主義と結び付いたとして敗戦と共に否定された」暗い過去がある。
 「新農本主義」には軍国主義と結び付く可能性はないのか。国会の審議も経ずして中東へ自衛隊を派「兵」する情況下で、この言葉が前面に出てきたことに、警戒警報のアラームが鳴る。
 偶然であったとしても、いつか来た道にならないために、「新農本主義」について深める責任を日本農業新聞は負っている。
 「地方の眼力」なめんなよ


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