「無理しない農業」の実践で就農支援し、「2022年問題」にも取組むNPO法人【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】2021年7月8日
NPO法人「農の未来ネット」と私は、12年前に田沼繁事務局長の呼びかけで東大で設立集会が開かれたときに記念講演をさせていただいたご縁もあり、このたび、理事長をお引き受け致しました。
これまで、「農の未来ネット」は、関係者と会員、イベントへの参加者の一体的な尽力・協力で、「未来体験農場」や「はたけっこクラブ」での作物の栽培や収穫作業への参加を通じて、多くの人達に作物を育て収穫する喜びを体験してもらうなど、様々な活動を通じて、農と人を結び、農業やその関連の仕事に携わってくれる人を育ててまいりました。
今後は、それをさらに進めるために、未来体験農場などで、通常の慣行栽培だけでなく、可能な限り化学農薬や化学肥料を減らし、できれば有機栽培、有機稲作も行えればと思っています。有機栽培は、環境や生態系には優しいけれども、過重な除草労働などで規模拡大が難しいのに、単収は低下し、それに見合うだけの消費者の価格評価が得られないため、慣行栽培に比べて総所得が低く、取組む人がなかなか増えない、と思われがちです。
しかし、「人にも生き物にも環境にも優しく生態系の力を最大限に活用した作物生産が実は生産性が最も高い」(アグロエコロジーの考え方)ということが、民間稲作研究所のデータでも実証されています。こうした知見をみんなで実践してみたいと思うのです。本来、人、牛(豚、鶏)、生態系を酷使せず、無理をしないことは、それらの能力を持続的に、かつ最大限に発揮することにつながるはずです。それを実践することは大きな喜びにつながるはずです。
それを多くの人が体験して学びながら、その優れた「既存技術」を「横展開」して広めることにつなげられれば、スマート農業、デジタル農業的な「新技術」に頼りすぎて、人がいなくなり、地域コミュニティがなくなり、巨大バイオ企業やIT企業だけが利益を得るような不自然な姿で農の営みの本質が失われかねない事態も回避できるはずです。
そこで、これからの日本を担う老若男女に、楽しく無理せずにできる農業や有機栽培のやり方で田植え、除草、稲刈りを実際に行ってもらえればと思います。こうした試みが優れた既存技術の理解と普及にも貢献し、農の営みに興味を持つ人を広げていく一助になると期待しています。
また、「農の未来ネット」は、調査研究事業として、援農ボランティアの実態把握と一層の広がりのための方策の提案や、都市農地の「2022年問題」が間近に迫る中で、市民や子供たちのためにも優良農地の喪失をどう食い止めるかについての方策の提案にも鋭意取り組んでいるところです。
「農の未来ネット」は、これからも、農と人を結び、未来への希望につなげるために、様々な活動を展開していきたいと思います。生産者、消費者、関連業者の皆さん、農に関心を持つ若者や様々な皆さん皆様と、さらに連携を深めて一緒に歩んでいきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】ピーマンにアザミウマ類 県内全域で多発のおそれ 大分県2025年7月10日
-
【注意報】トマト、ミニトマトに「トマトキバガ」県内全域で多発のおそれ 大分県2025年7月10日
-
【注意報】イネカメムシ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年7月10日
-
【特殊報】メロンにCABYV 県内で初めて確認 茨城県2025年7月10日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】コメ増産こそが自給率を向上させる~輸入小麦をコメで代替すれば49%2025年7月10日
-
【第46回農協人文化賞】地道な努力 必ず成果 経済事業部門・愛知県経済連会長 平野和実氏2025年7月10日
-
【第46回農協人文化賞】全ては組合員のため 経済事業部門・宮崎県農協副組合長 平島善範氏2025年7月10日
-
ジネンジョとナガイモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第348回2025年7月10日
-
【2025国際協同組合年】SDGsと協同組合 連続シンポジウム第4回2025年7月10日
-
備蓄米 コンビニの7割で販売を確認 7月9日時点 農水省調査2025年7月10日
-
【人事異動】農水省(7月11日付)2025年7月10日
-
水稲の斑点米カメムシ類 多発に注意 令和7年度病害虫発生予報第4号 農水省2025年7月10日
-
【JA人事】JA加賀(石川県)新組合長に道田肇氏(6月21日)2025年7月10日
-
【JA人事】JA新みやぎ(宮城)新組合長に小野寺克己氏(6月27日)2025年7月10日
-
「田んぼの生きもの調査」神奈川県伊勢原市で開催 JA全農2025年7月10日
-
「米流通に関するファクトブック」公開 米の生産・流通など解説 JA全農2025年7月10日
-
「おかやま和牛肉」一頭買い「和牛焼肉 岡山そだち」ディナーメニューをリニューアル JA全農2025年7月10日
-
本日10日は魚の日「呼子のお刺身いか」など150商品を特別価格で販売 JAタウン2025年7月10日
-
転炉スラグ肥料がイネの発芽・発根・出芽を促進 農研機構2025年7月10日
-
適用拡大情報 殺菌剤「日曹ムッシュボルドーDF」 日本曹達2025年7月10日