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【書評】書評 石田正昭編著『JA女性組織の未来-躍動へのグランドデザイン』を読んで 先﨑千尋 農業協同組合研究会理事2021年8月30日

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『JA女性組織の未来-躍動へのグランドデザイン』
石田正昭 編著
(家の光協会)
定価:2700円+税

『JA女性組織の未来-躍動へのグランドデザイン』『JA女性組織の未来-躍動へのグランドデザイン』

立花隆と農協

「反骨精神持つ水戸っぽ」、「知の巨人」と言われた立花隆(本名:橘隆志)さんが4月30日に亡くなった。長崎市で生まれ、中国に移り、戦後は水戸市で育った。右翼思想家の橘孝三郎は彼の父のいとこにあたる。

立花さんを一躍有名にしたのは、1974年に月刊『文藝春秋』に「田中角栄研究-その金脈と人脈」を発表し、田中首相が失脚するきっかけを作ったことだ。彼の著作は田中角栄や日本共産党、天皇と東大、宇宙、脳死、インターネットなどあらゆる分野にまたがり、私にはとても読み切れない。その中で、私の書棚にある1冊は、1080年に出た『農協-巨大な挑戦』(朝日新聞社)だ。

その「はじめに」に、「農民にとっての農協は、その生活のあらゆる側面がかかわってくる存在である」、「いまや農業問題が経済大国日本の最も弱い脇腹となってしまった」、「農民と農外の人々の間には、深い意識の断絶がある。(両者が)敵対的な関係に立つという不幸な状況には一刻も早く終止符が打たれなければならない」とある。

その問題意識を受けて、本書は北海道士幌農協のルポに始まり、最後に「1980年代日本農業の課題と農協の対策」を分析し、「原始生物型バラバラ組織の農協が、コンピュータの活用によって、ユニークで強力な組織に進化していく可能性はきわめて強い」と結んでいる。

農業の分野でもコンピュータの活用が進んでいることは事実だが、現在の農協が「ユニークで強力な組織」になっているか、私には疑問だが、全国の農協を歩き、立花流の見方で書かれた本書は、今読んでも面白く、新鮮さを失っていない。

生活基本構想と私の農協での経験

そうした折、JCA(日本協同組合連携機構)から表題の本をいただいた。私は、農協の現場から離れて12年になるので、農協全体の最近の動きをよく知らないし、個別の農協の動きや優良事例もほとんど知ってはいない。ただ、私は1970年の全国農協大会で決議された「生活基本構想」を高く評価し、この構想こそが今後の農協運動の軸になるべし、と主張してきた。

私はこのことを主張するだけでなく、群馬県前橋市永明農協、水戸市農協、瓜連町農協と仕事の場を変えながらも、広報活動、地権者会運動とともにずっと生活活動に関わってきた。その中心となったのは農協婦人部だった。健康管理、農産物自給、青空市、農産加工、共同購入などを展開したが、学習活動がその基本であり、県内だけでなく、県外の多くの仲間とも手をつなぎ、学び合うことで活路を見出していった。

かつての農協には、地域組合か職能組合かという議論がずっと続き、兼業化、混住化が進み、准組合員が増加する中では、方向として地域組合にという趨勢だった。しかし、農協陣営がTPPの批准に反対したため、全国農協中央会は組織替えされ、それだけでなく、国から職能組合としての農協という方向を示され、法律もそのように変えられてしまった。改めて農協は国の下部組織なのだと意識した。

では、農協活動の一翼を担う婦人部(現在は女性部)はどうなってしまったのだろうか。本書はその疑問に答えてくれる。ピーク時に344万人を数えた農協女性組織のメンバー数は現在50万人弱にまで減少している。半減どころか、10%強という数値である。確かに、私の所属する常陸農協でも、女性部員の数は少なく、高齢化も進んでいる。活動内容も、私が担当していた時よりはるかに後退していると思われる。

石田さんは本書第1章で、農協女性組織のどこに、どのような問題があるか、停滞の原因は何かを摘出し、「ジェンダー平等の声を上げにくい。当事者意識が欠けている。農協が基礎組織、集落組織依存の運営を続けている」が三すくみの構造になっている、と整理し、その突破口を見つけ、示すことが本書の課題、としている。

新たな地域社会保全組織を

この石田さんの問題意識を受け、本書は「農協女性組織の展開過程」、「女性組織と教育文化活動」、「女性組織メンバーの意識・参加の態様」や事務局の支援活動、リーダーシップなどが取り上げられており、松本ハイランド、東びわこ農協の事例も紹介されている。

最後に石田さんは第9章「未来に向けたグランドデザイン」を描いている。石田さんは、そのためにまず「だれのための女性組織なのか」を問い、「自分のため、家族のため、仲間のため」だけでなく、「見知らぬ他者のための女性組織でなければならない」と強調している。「地球規模で考え、地域規模で行動せよ」は私たちが1991年に環境自治体会議を立ち上げた時のスローガンだったが、農協組織も同じ考えに立つという。

さらに石田さんは、女性組織が「楽しい活動から役立つ活動」を展開することを提唱している。私がかつて関わった健康管理活動や農産物自給運動などは、婦人部員の生の声を生活活動の柱にした。今私は地元の農協支店で「レインボーサロン」を立ち上げ、農家のお母さんたちが地元の食材を使った料理教室を開いているが、集まる人たちは、参加できる、みんなに会えることを楽しみにしているようだ。事務局の役割は、メンバーの困りごとややりたいことをつかみ、それを運動に展開していくオルガナイザーなのだと、今でも考えている。

石田さんはさらに70年代の市民生協の誕生とその後の発展過程を取り上げ、その活動を踏まえ、新たな地域社会保全組織を作ることを提唱している。その地域社会保全組織は、(1)農産物の直売・加工活動、(2)子どもたちを対象とした食農教育、(3)消費者(大人)を対象とした食農教育、(4)都会と農村の相互交流活動、(5)地域の食文化・食生活の継承活動から構成される。私がやろうとしている「レインボーサロン」の狙いを的確に整理していただいた。生活基本構想が描いた「生活の防衛・向上機能の発揮と農村地域社会建設への取り組み」こそが農協の果たすべき役割、と一致する。また宇沢弘文氏が説いてきた「社会的共通資本」としての農協の役割とも合致するではないか。

私は、本書をそうだそうだと肯きながら読んだ。問題は、この本で書かれていること、石田さんたちの提案を、役員を含め農協現場の人たちがどれだけ掬い取れるか、だ。狭い範囲でしかないが、私に見える農協の光景からは、ため息しか出ないのだ。

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