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崩れる量と質の食料安全保障~ジャガイモもついに~【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】2021年9月16日

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米国産ジャガイモについて、(1)ポテトチップ加工用生鮮ジャガイモの通年輸入解禁(2)生食用ジャガイモの全面輸入解禁に向けた協議(3)防カビ剤の農薬から食品添加物への分類変更(4)その残留基準値の20倍緩和(5)遺伝子組み換えジャガイモの立て続けの認可(6)冷凍フライドポテトの関税撤廃、と続く措置のメッセージは明確である。

量と質の食料安全保障

日本の食料自給率が最低を更新したと報じられた。自給率目標が掲げられても、それに向けて上がる兆しは一向に見られない。食料安全保障には量と質の両面がある。まず、国民の命を守るために量を確保することが必要だが、同時に、食料の質、すなわち、安全な食料が確保されることが不可欠である。

畳みかける貿易自由化はとどまることを知らず、量と質の両面で食料安全保障のリスクが高まりこそすれ、緩和はしない厳しい状況にある。そういう中で、ジャガイモについても着実に量と質の両面の安全保障に懸念が高まる動きが出てきている。

生食用ジャガイモ輸入解禁への流れ

従来、米国にはジャガイモシストセンチュウが発生していることから米国産生鮮ジャガイモは輸入を禁止していた。しかし、米国からの要請に応じて、2006年に、ポテトチップ加工用に限定し、輸入期間を2月~7月に限定して輸入を認めてきた。しかし、2020年2月に、農水省は、米国産のポテトチップ加工用生鮮ジャガイモの通年輸入を認める規制緩和を行い、さらに米国の要求を受けて、ポテトチップ用にかぎらない生食用ジャガイモの全面輸入解禁に向けて協議を始めることに合意した。協議を始める=近々解禁する、と同義と理解される。

防カビ剤の農薬から食品添加物への分類変更と残留基準値の20倍緩和

加えて、厚労省は、2020年6月、ポストハーベスト(収穫後)農薬として、動物実験で発がん性や神経毒性が指摘されている殺菌剤ジフェノコナゾールを、生鮮ジャガイモの防カビ剤として食品添加物に指定した。併せてジフェナコナゾールの残留基準値を改定し、ジャガイモについてこれまでの0.2ppmを4ppmと20倍に緩和した。日本では収穫後の農薬散布はできないが、米国からの輸送のために防カビ剤の散布が必要なため、食品添加物に指定することで散布を可能にしたのである。1970年代のレモンの農薬(防カビ剤)の食品添加物指定と同様である。しかも、残留基準値の大幅緩和という「おまけ」付きである。

続く遺伝子組み換えジャガイモの認可

さらに、もう一つ懸念事項がある。食品安全委員会は、2017年に、米国シンプロット社が開発した遺伝子組み換え(RNAi干渉法という遺伝子操作による)ジャガイモ(加熱した際に生じる発癌物質のアクリルアミドを低減、打ち身で黒ずむのを低減)を承認し、2019年にも新たな品種を承認、2021年には低アクリルアミドとともに疫病耐病性を付加した2品種が安全と評価された。

RNAi干渉法とは、RNAを用いて遺伝子の働きを止める技術だが、目的とする遺伝子の働きを止めるだけでなく、ジャガイモの他の遺伝子の働きを止めたり、ジャガイモ以外の生物の遺伝子の働きを止めたりする可能性があり、様々な生物に劣化などの問題を引き起こしかねないとの指摘がある(※)。

外食では表示されない

シンプロット社は米国マクドナルドのジャガイモ納入業者だが、米国マクドナルドは消費者の遺伝子組み換えジャガイモへの拒否感を背景に、このジャガイモを取り扱わないと表明している(※)というが、このジャガイモが日本のポテトチップスやファストフード店などのフライドポテトなどに使われる可能性が指摘されている。外食産業で利用された場合、遺伝子組み換え表示の義務がないため、消費者は遺伝子組み換えと気づかないままにこのジャガイモを食べてしまう可能性がある。消費者は外食に際して遺伝子組換え食品を選択的に避けることはできない。これまでのところ、「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」の公開質問状に、ポテトチップスメーカーや多くの大手外食チェーンは、遺伝子組み換えジャガイモを使うつもりはないと回答している、とのことである。

冷凍フライドポテトの関税撤廃

さらに、2021年4月から、日米貿易協定による冷凍フライドポテトの関税撤廃も行われた。こうして、着実にジャガイモについても量と質の両面の安全保障が崩されてきている。日米貿易協定はもちろんだが、そうしたまとまった協定でなくとも、日本の食品輸入規制の緩和は随時進められていることに注意しなくてはならない。

ジャガイモについては長い米国との攻防の歴史があり、ここまでよく踏みとどまってきたとの感もある。「歴代の植物防疫課長で頑張った方は左遷されたのも見てきた」(農水省OB)との指摘もある。「ジャガイモもついに」だが、ジャガイモがここまで持ちこたえてこれたのは、我が身を犠牲にしても守ろうとした人達のおかげでもある。しかし、米国からの要求リストは従来から示されており、それに対して拒否するという選択肢は残念ながら日本にないように見える。今年はどれを応えるか、来年は......と、差し出していく順番を考えているかのように、ズルズルと応じていく。なし崩し的に要求に応えていくだけの外交では国民が持たない。

(参考)
http://organic-newsclip.info/log/2020/20081051-1.html

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

鈴木宣弘・東京大学教授のコラム【食料・農業問題 本質と裏側】 記事一覧はこちら

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