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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「搾るな」、「牛乳飲んで」では解決しない2021年12月23日

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コロナ禍の影響で落ちた消費と好調な生乳生産の下、生乳をしっかり受け入れた乳業メーカーの乳製品在庫が積み上がり、年末年始の学校給食の休止期を迎え、乳製品製造能力がパンクする「生乳廃棄」の危険さえ報じられている。都府県の生乳生産が伸びない中、増産を求められてきた北海道の酪農家に一転して生産抑制が要請されることになってきた。なぜこうなるのか。

増産一転減産誘導~根本原因を考える必要

北海道農協酪対とホクレン生乳受託販売委員会の合同会議が決定した2022年度の生乳生産目標数量は21年度の生産目標数量対比101%という水準で、これは21年度の生産見込み数量対比で99%ほどなので、実質的には減産計画といえ、先行きを不安視する声が多く上がっているという。

Jミルクは年末年始の20日間程度を対象期間にした緊急的な出荷抑制対策として2億5,000万円を措置することを発表した。また、北海道農協酪対は、既貸付金の償還猶予や利子補給、輸入品の国産品への置き換え、北海道に偏らない全国的な需給調整の実施に向けたより積極的な国の関与、国産チーズの需要拡大に向けた取り組みなどの政策提案を決めた。

個々の対処療法は重要だが、増産誘導が一転して減産誘導になってしまうような、このような事態が繰り返し起きてしまう根本原因を捉え、ベースになる根本的対策、生・処・販・政策の分担・負担体系を確立しないと根本的解決につながらない。

食料買えない人が増加~人道支援こそ必要

コメも酪農も類似の側面がある。コロナ禍で困窮家庭が増えたが、それ以前から先進国で唯一20年以上も実質賃金が下がり続けているから食料需要が減退している一因は買えなくなったということだ。つまり、食料は余っているのでなく足りていない。今必要なのは食べられなくなった人たちに政府が農家からコメや牛乳・乳製品を買って届ける人道支援だ。

政府は「コメは備蓄用の120万トン以上買わないと決めたのだから断固できない」「乳製品はすでに一切買わないことにした」と意固地に拒否して、フードバンクやこども食堂などを通じた人道支援のための政府買い入れをしない。バター・脱脂粉乳の製造能力がパンク寸前の事態なら、どうして飲用牛乳を政府が買い付けて困窮世帯に届けられないのだろうか。

財務省中心の硬直した法・制度運用は緊急時に冷酷だ。苦しむ国民を救えば、在庫が減り、価格も戻り、苦しむ農家も救われるが、政府はそれをできぬと言い、「作るな、搾るな」、「牛乳飲んで」と言う。

必要なのは減産でなく出口対策・需要創出

日本がコメや生乳を減産しているときではない。増産して国内外への人道支援も含めた需要復元・創出で消費者も農家も共に助かる前向きな出口対策に財政出動すべきだ。生産抑制は農家の意欲を削ぐ。

酪農については、畜産クラスター事業で、機械設備を増強し生産を大幅に増やさないと補助金を出さないとして増産誘導を政府が強力に主導してきた。その矢先に「搾るな」と要請して「2階に上げて梯子(はしご)を外す」ことになった。消費者に「牛乳飲んで」と呼び掛けるだけでは政府の責任は果せない。

基本政策の欠如

米国では、コロナ禍による農家の所得減に対して総額3.3兆円の直接給付を行い、3,300億円で農家から食料を買い上げて困窮者に届けた。そもそも緊急支援以前に、米国・カナダ・EUでは設定された最低限の価格(「融資単価」、「支持価格」、「介入価格」など)で政府が穀物・乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持している。

さらに、その上に農家の生産費を償うように直接支払いが二段構えで行われている。命・地域・環境・国土・国境を守る国家安全保障の要の営みを、国を挙げて守るのが欧米の常識だが、それが日本にはない。この差はあまりにも大きい。

選択肢を狭める米国の影からの脱却

日本政府関係者が「援助」という言葉に拒絶反応を示すは背景には「米国の市場を奪う」ことへの恐怖がある。また、他国なら輸入量を調整できるのに、なぜ日本はコメの77万トン、乳製品の13.7万トン(生乳換算)の輸入をこんなときにも履行し続けているのか。それにTPP11(米国抜きのTPP=環太平洋連携協定)、日EU協定などの乳製品輸入枠も加わった。

米国・カナダ・EUの乳製品のミニマム・アクセスは消費量の5%だが、せいぜい2%程度しか輸入されていない。それは日本の言うような最低輸入義務でなく需要がなければ輸入しなくてよい。かたや日本は、すでに消費量の3%をはるかに超える輸入があったので、その輸入量を13.7万トン(生乳換算)のカレント・アクセスとして設定して、毎年、忠実に満たし続けている、唯一の「超優等生」である。

「日本は必ず枠を満たすこと、かつ、コメの36万トンは米国から買うこと」との密約は重い。しかし、今こそ、その制約を乗り越えて、他国の持つ基本的な安全保障政策を我々も取り戻し、血の通った財政出動をしないと日本を守ることは難しくなってきているように思われる。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

鈴木宣弘・東京大学教授のコラム【食料・農業問題 本質と裏側】 記事一覧はこちら

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