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通商協定のあるべき『規範』を考える【近藤康男・TPPから見える風景】2022年3月4日

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前回のコラムで日本の通商協定・通商戦略を振り返り、貿易を規定するだけでなく、“ルール=社会的枠組み”として国民の暮らしや公共・地域を規定するものに拡大した、と書いた。今回は、TPP反対運動から見えてきた日本政府の対応や、通商協定のあるべき枠組みについて考えたい。

米国・EUの法治主義に対する日本の放置主義という落差

米国は大統領貿易促進権限法TPA法(昨年7月失効の法律は2015年超党派議会貿易優先事項説明責任法)で交渉目標・議会への説明責任・透明性などを規定、TPP離脱後の日米交渉では18年12月21日公表の22項目の「対日交渉目的概要」では、かなり具体的な獲得目標・要求項目を明らかにしている。 

EUも同様だ。欧州委員会としての立場を常に明らかにし、例えば19年1月の、米国による24項目の「対EU交渉目的概要」に対して、1月19日には欧州委員会(EU Commission加盟国閣僚級から成る政策執行機関)から欧州理事会(EU Council EU大統領や加盟国首脳からなる政策レベルの最高協議機関)宛ての対米交渉に関する文書を公表するなどの対応をしている。また市民団体との対話の実施も公的に位置づけている。

これに対して日本政府は、(1)02年外務省「日本のFTA戦略」(省の立場)(2)10年「包括的経済連携協定に関する基本方針」(3)13年「日本再興戦略」((2)と(3)は閣議決定)が公表されているが、国民・立法府に対して具体的な獲得目標や目的などを示すことなく交渉に飛び込んでいるとしか思えない。

TPP交渉参加では、農産物の重要品目の例外を求める姿勢を事前交渉に向けて示していたが、多くの場合、国会答弁に見られる具体性ゼロの「国益を守る」という念仏のみだ。

そして、実質的には立法府からの拘束を受けることなく密室での通商外交を行っている(放置主義≒ほったらかし)。

日本政府の説明責任・透明性の欠如と立法府軽視

秘密性が必要な場合は当然あるが、交渉期間中の米国・EUの政府による立法府・市民社会に対する対応や情報提供は、日本政府とは大きな差があることを感じさせられた。それだけでなく、日EU・EPA交渉では、EU議会の国際貿易委員会が来日して日本の議員・市民団体・労組などから意見聴取までしている。

しかし、日本政府は、立法府に対しては、18番の「交渉中の事項については差し控える」の一点張りだ。交渉相手には勿論明らかにしている筈で、"知らぬは国民と国会のみ"、という喜劇がまかり通っている。立法府の関与は、質問主意書や合意署名後の承認法案の審議だけといっていいだろう。

通商協定も情報も本来国民のモノだという意識が欠落している、と言わざるを得ない。
※TPP交渉については、適宜、また交渉会合の都度「説明会」が開催され、それ以降も市民団体の求めに応じ、意見交換会への担当部署の出席という対応はあったが...

これでは、協定の条項の多くで散見される発効後の「見直し協議」では、更に官僚主導で、国民・国会を素通りしたまま、気が付いたら様々な"見直し"されるのではないか、と懸念せざるを得ない。

通商協定に含まれる分野は限定的であるべきだ

"ルール=社会的枠組み"にまで拡大した経済連携協定だが、果してそれでよいのか、力不足を承知のうえで、敢えて考えてみたい。

基本的視座は、通商交渉・協定は国民のものであり、透明性・説明責任・法治主義を基本に、国民・立法府の関与を担保することが欠かせない、という点にある。更に、決めるべきではないことは決めるべきではないし、決めるべきことは決める、という点も強調したい。

発効済みの協定を無くすことは現実的でないかもしれないが、視座を整理するためにいくつかの分野を取り上げてみたい。

〇生存権、人権、命と暮らし・ベイシックサービス(教育・医療、社会保障・安心できる居場所など)への権利、地域経済・地域社会の循環と持続を担保するための地域主権、公共に係る分野は生存権・人権・地域主権に基づく規範を優先することとし、経済連携協定から除外する。
※TPPでは、15章「政府調達」、17章「国有企業及び指定独占企業」、25章「規制の整合性」などが典型的だ。

〇多くの発展途上国におけるバランスのとれた国民経済の育成を優先すべき分野は一義的には当該国の政策に委ね、経済連携協定では、柔軟で幅広い例外適用を可能とする。
※TPPでは2章「内国民待遇及び物品の市場アクセス」、9章「投資」などでは、発展途上国に対する柔軟で大幅な例外措置が欠かせない。

〇法治主義と相いれないISDS(投資家対国家間紛争処理)条項は廃止し、係争事項は投資先・進出先の裁判や所轄官庁との交渉に委ねる。

〇自然条件により絶対的な不利条件に左右され得る基礎的産業の支援・保護・育成などについては、各国の規範を尊重・優先する。
※輸出補助金の規制は強化されて然るべきだが、農林水産業、食品の安全基準(含む・予防原則)などは、改めて位置づけが必要だ。

〇既に、あるいは今後、国際機関や国際協議が市民団体・労働団体なども参加して、開かれた形で協議される分野は、閉ざされた秘密交渉(経済連携協定)とは別の枠組みでの協議が適当だろう。
※TPPでは19章「労働」、20章「環境」など

〇生物多様性と生態系・環境の持続性が問われている中、生物資源は知的財産権の対象から除外し、地域主権を基本に国ごとの規範に委ねることとすべきだ。そして、他の動植物も生態系における平等な命であり、その命の主権は彼らにある、という謙虚さが求められるだろう。
既存の知的財産権は否定しないが、植物資源・動物資源の生産・利用などの運用・量的側面については、生物多様性・生態系の持続可能性・環境・動物福祉などの観点から、地域主権を基本に国ごとの規範に委ねるべきだろう。
そして、先住民族が伝統的に利用している生物資源については、先住民族の権利・規範を尊重すべきだ。
また、TRIPS協定の、医薬品特許について緊急事態には新興国の後発メーカーなどが特許を使える「強制実施権」を、経済連携協定でも充分に尊重するべきだろう。

〇グローバル化の中ではモノ・カネの移動が自由になっているが、それ以上にヒトの移動の自由が尊重されるべきだ。
就労・長期滞在を認める場合は、外国籍の人々とその家族には、彼らが居住する国の国籍保有者と同様の権利・自由・公的サ-ビスが認められるべきだろう。

〇最後に、日本が欧米の後塵を拝している個人情報保護・個人情報利用規制については、基本的に個人ごとに事前合意を都度求め、また個人の求めに応じて個人情報の利用状況を当人には開示することを求めたい。
日本は、依然、20年1月のOECDの会議での経産省報告"デジタル企業が作る構造は変化も早く官が把握することは難しい"ので"民間がルールの設計者、官が監督者となる共同規制が適している"、との認識からあまり変わっていないようだ(20年2月18日付け日経記事からの筆者解釈)。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人のコラム【TPPから見える風景】

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