(292)コメとパンの支出金額推移【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年7月29日
家計においてコメとパンの支出金額はどのくらいなのでしょうか。もちろん家計といっても様々ですが、全体をざっくりと見てみましょう。
今回使用したデータは総務省統計局が公表している家計調査(家計収支篇)のうち、総世帯と単身世帯の支出金額であり、以下はこの内容を単純に比較したものである。
まず、総世帯数だが、2000~2021年の単純平均で集計世帯数は約8,500世帯、世帯人員は2.5人、年間総支出金額は約306万円である。ただし、この金額は2000年の337万円が、2021年には282万円に低下している。21年間で概ね▲16%だ。この間、支出に回る金額が55万円減少したことになる。
さて、この状況で個別の年間支出金額を見ると、2000年当時はコメに2万9539円、パンに2万2506円、合計で5万2045円の支出であった(いずれも年間支出金額、以下同じ)。これが2021年にはコメ1万6962円、パン2万5415円、合計4万2377円である。こちらは▲19%である。
もちろん、コメとパンは単純には置き換えられないことは百も承知だが、いくばくかの示唆を与える結果ではないだろうか。ちなみに、家計調査において総世帯ベースでコメとパンの支出金額が逆転したのは東日本大震災の前年、2010年である。この年、コメは2万3315円、パンは2万3773円となった。その後、現在に至るまで支出金額はパンがコメを上回るだけでなく、その差は年々拡大している。
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同様の数字を単身世帯で検討してみたい。対象となる単身世帯数は約700世帯である。対象期間の年齢は2000年の50.8歳から2021年には58.1歳、21年間の平均は56歳である。
単身世帯の支出金額は、2000年当時、コメ1万2139円、パン1万2203円であり、両者は同水準だが、パンの方が既にコメの支出金額をわずかに上回っていたことがわかる。
合計金額は2万4342円である。その後の数年間、両者は余り乖離していないが、2007年以降、パンの支出金額が少しずつ上昇し、逆にコメの支出額が減少する。2021年になるとコメ8034円、パン1万4582円、合計2万2616円と、そのウエイトが大きく変化している。先に総世帯の支出送金額の減少率が▲19%と述べたが、こちらは▲7%に留まっている。
以上をグラフにしたものが下図である。
ここでは1990年代以前は対象としていないため断定はできないが、単身世帯では2000年代前半、そして総世帯では2010年代に入り、家計支出ではコメとパンの地位が逆転したことが示されている。背景には複数の要因が絡んでいるが、少なくとも我々の消費生活のうち、主食に対する支出がこの10年でまた一段、いわばパン食化に動いたと考えられる。
興味深い点をもう少し追加しておけば、2000年時点での外食支出は単身世帯が23万95円、総世帯が18万8496円だったが、2021年には各々10万4858円、12万1060円へと激減している。これは新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う行動制限の影響が大きい。
単身世帯の外食支出が大きく減少したのはわかりやすいが、問題はそのシフト先である。結論を言えば、外食が減少した分をコメは十分に吸収できていないようだ。コロナ禍でもパンは着実に伸びている。日本の農業や食料自給率問題を検討するには、こうした状況を踏まえて具体的に何をすべきかをフードシステムの各段階でいろいろと考える必要がある。
以下はあくまで筆者の想像の一端である。行動制限当初はそれなりに自炊を楽しんでいた単身者も時間が長くなるにつれ、調理パンや総菜パンなど、手軽に食べられるパン食にかなりシフトしたのではないだろうか。
なお、2010年代に入り、家計支出に占める調理食品の支出は総世帯でも単身世帯でも大きく伸びている。抽象論ではなく日本人の食生活の詳細をよく見る事が必要であろう。
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個人的にはパンは朝昼OK、おにぎりだとベストフィットは昼、夜は基本ご飯ですが状況に応じてどちらでも...という感じですが、さて、皆さんはどうでしょうか。
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