世代を超えた職員・職場の「やる気」を高めよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年9月13日
JA職員に「考える」「工夫し、実行する」の欠乏症
A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次
JAの事業が伸びない、一つの要因は、職員が自ら考え、工夫して、やってみる、結果が出なければ別なことを考えて実行する、という姿勢が足りないのではないか、というJAの経営者が多いですね。
先日、JA職員として総務・企画畑を長く経験し、常勤役員を10年近く務められて退職された方と食事をしていて、「やり残したことは何ですか」とお聞きした時、「JAに必要とされる職員を育てることができなかったことです」、とても残念そうに話されました。
常勤役員になって、会議などで管理職と議論をしたり、考えをレポートにまとめてもらったりした時、「最初は、いままで何十年も何をやってきたのか、と腹立たしく思うことが多かったです」。でも、冷静に考えれば、自分も含めて、考えて行動する、考えて目標を作る、といった仕事はほとんど経験しなかったと言います。「管理職になって、突然、戦略を考えろ、計画を作れ、と言われたってできるわけがないのは当然です」と。
JAに必要とされる人材育成が難しい理由について、次のように話しました。JA組織が誕生し、成長を続けてきた経緯を振り返れば、1990年代までは、連合組織が事業活動や商品政策を決定し、JAに商品とともに、商品の売り方、マニュアル・推進要領を下ろして、JAはひたすらそれで事業を行ってきた。担当するJA職員を対象に業務研修を行うだけ。「職員は自分で考える必要がないんです。困ったことがあれば、連合会に電話を入れて教えてもらう。それで、仕事ができてしまう。これを何十年も続けてきたのですから」。
シニア世代の管理職だけの問題ではなく、現場を長く経験してきた一般のシニアの職員の問題にも共通すると言います。職場内の若手・中堅職員との考え方、行動力などの大きな違いがはっきりしてきています。世代ギャップによる一体感がなくなり、深刻な問題だと悲鳴をあげる職場マネジャーも少なくないようです。
そこで、どんな対策が有効かの質問に、「決定打のようなものはないが、とにかく、職場内での話合いが大事、世代を超えて、職員同士で考えや意見を発表し合い、共感すること、違いを知ることからではないか」とのことでした。
「話し合うこと」の大切さの再認識と職場での対策
JAに勤めて30年以上、事業や組織活動に貢献されてきたシニアの職員のみなさんは、本当にご苦労さまでした。でも、もう一踏ん張り、お願いをしたいというのが、JAの経営者や組合員のみなさんの願いでもあります。
ところで、最近、"働かないシニア世代、ベテラン社員"の存在が話題になっています。ある調査会社が行った「働かないおじさん・おばさんに関する調査」(従業員300名以上の会社の20~39歳の社員対象)があります。面白い調査なので紹介します。
まず、働かないおじさん・おばさんはいるか、との問いに49%が「いる」と答えています。なぜ、働かなくなってしまったのか。その理由は、「仕事への意欲がないから」が最も多く、次いで「年功序列で成果を出さなくても給与が上がるから」が4割を超えています。そのほかにも、「仕事を任されないから」、「目標がないから」、「成果を出しても評価されないから」、「評価する人がいないから」、「体力・気力が落ちているから」、「周囲が遠慮して仕事を頼まないから」などが続きます。
ついでに、仕事をしないで何をしているのか、を見てみましょう。トップの御三家は、「休憩が多い(タバコを吸っている・お菓子を食べているなど)」、「ボーっとしている」、「無駄話をしている」が、ともに5割近い回答でした。
JAに限ったことではないようですので、安心した経営者もおられるでしょうが、放ってはおけない問題です。そこで、対策ですが、働かないおじさん・おばさんは、なぜ、働かなくなったか、にヒントがあります。私の経験ですが、質問の逆を考え、実行することです。実際に取り組んだ例も含めて紹介します。
仕事への意欲をかき立てるようなきっかけ(プラン・イベント)の提案、年功序列の仕組みを変更する、ある仕事をしっかり任せる(ミニプロジェクトなど)、目標を示す(一緒につくる)、「評価の仕組みをつくり、評価を公然化する」、「体力・気力アップの定時運動の提案」「周囲は、遠慮しないで仕事を頼む」といったことです。
このような調査やその結果を眺めてみると、世代間の大きなギャップを感じます。職場内での話し合いがやはり重要だと思います。若い世代から「休憩;運動タイム」「おやつタイム」設置の提案や、シニア職員への「感謝メッセージ」、「サンキュー・メモ」などを職員休憩室に貼り出す、などを実施することなど、アナログで、気軽に実行できることを考えてほしいですね。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。
最新の記事
-
発電と営農を両立 荒廃農地再生にまちづくりも 市民エネルギーちば2023年3月30日
-
「国民のための基本法に」有機農業や農地、種子などめぐり意見交換 民間団体、学者と農水省職員2023年3月30日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】食料危機に立ち向かう作物科学~evidenceとfeasibility2023年3月30日
-
搾乳の機械化と規模拡大の進展【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第233回2023年3月30日
-
健診結果チェックを新たに提供 契約者サイトで JA共済連2023年3月30日
-
【人事異動】JA熊本経済連(4月1日付)2023年3月30日
-
鶴岡市など6市町 歴史的風致維持向上計画(2期)に認定 農水省など2023年3月30日
-
「春の茨城県産野菜フェア」アサヒブロイラー直営中食39店舗で開催 JA全農2023年3月30日
-
組合員数は延べ1億人強 預貯金は324兆円に 20年度JCA協同組合統計表2023年3月30日
-
新生活の新習慣に「ひょうごの野菜&お米セット」サブスク新登場 JA全農兵庫2023年3月30日
-
自転車ヘルメット着用安全性を検証 HP掲載 JA共済連2023年3月30日
-
「岐阜県産和牛とお米のフェア」東京・大阪で開催 JA全農2023年3月30日
-
「長崎和牛」、小玉すいか「うり坊」など20%OFF「もぐもぐながさき」年度末大決算セール開催中 JAタウン2023年3月30日
-
春野菜と全国各地のイチゴが集結「JA共済マルシェ」開催2023年3月30日
-
「農業経営計画策定支援システム」開発と社会実装へ 試行者を公募 農研機構2023年3月30日
-
しらかわ七酒 3年ぶり一堂 JA夢みなみ【ほっとピックアップ・JAの広報誌から】2023年3月30日
-
水素燃料電池搭載 環境にやさしい「電動ラジコン草刈り機」開発 ネクスティ エレクトロニクス2023年3月30日
-
メインは「ガッツリ」2022年人気レシピ5部門のベスト5発表 パルシステム2023年3月30日
-
「培養肉未来創造コンソーシアム」設立 大阪大学・島津製作所・伊藤ハム米久など5者2023年3月30日
-
特産の桃 春を迎え花満開「早生桃」栽培盛んな加茂地区で 兵庫県川西市2023年3月30日