【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】2重苦でなく7重苦2022年10月27日
NHKさんが農業の苦境をよく伝えてくれている。ただし、2重苦でなく7重苦だ。限界を超えている。これ以上の放置は許容できない。
①生産資材暴騰
一昨年に比べて肥料2倍、飼料2倍、燃料3割高、と言われる生産コスト高。
②農産物の販売価格は低迷
コストが暴騰しても、価格転嫁ができない農畜産物価格の低迷。
③副産物収入の激減
追い討ちをかける乳雄子牛など、子牛価格の暴落による副産物収入の激減
④強制的な減産要請
さらに、これ以上搾っても授乳しないという減産要請が追い討ちをかける。
⑤乳製品在庫処理の多額の農家負担金
脱脂粉乳在庫の処理に北海道の酪農家だけで100億円規模の負担は重くのしかかる。
⑥輸入義務でないのに続ける大量の乳製品輸入
「低関税で輸入すべき枠」を「最低輸入義務」と言い張り、国内在庫が過剰でも莫大な輸入は続ける異常事態の継続。
⑦他国で当たり前の政策が発動されない
コスト高による赤字の補填、政府が在庫を持ち、国内外の援助に活用するという他国では当たり前の政策がない。
乳製品需給の緩和は畜産クラスター政策による増産誘導とコロナ禍による在庫増が主因で酪農家のせいでない。需給緩和だからと言って赤字で苦しむ酪農家の乳価を上げられないというのも、乳価を据え置いて乳製品在庫処理の多額の負担金を酪農家に出させるのも不条理である。
コロナ禍の在庫増分は余っているのでなく足りてないということ。搾るな、牛処分しろ、でなく、政府が増産促し、他国のように買い上げ、国内外の援助に活用するのに財政出動すれば、消費者も助け、在庫も減り、食料危機にも備えられる。それをせずに、強制的な減産が要請されている。しかも、牛処分しろと言いながらクラスター事業による増産誘導はなぜ続けるのか。
さらに、生乳換算13.7万トンもの乳製品輸入(低関税を適用する枠)は国際的な輸入義務でないのに、なぜ需給緩和のときにも日本だけが莫大な輸入を履行し続けるのか。欧米は所得の100%を超える補助金や「乳価-餌代」のマージン補償で酪農家の赤字を政策で埋めている。
自ら命を絶たれてしまう農家が後を絶たない。もう限界を超えている。政府は動いてほしい。消費者も小売業界もメーカーも輸入依存を脱却し、国産を支えよう。国際乳製品需給は逼迫基調で各国の乳価、乳製品価格も上昇し、日本酪農の競争力も高まりつつある。今を凌げば未来は拓ける。酪農家さん、踏ん張って下さい。
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