日本の低賃金は労働運動の低迷が原因だ【森島 賢・正義派の農政論】2023年5月15日
風薫る5月の、いまはド真ん中にいる。
5月といえばメーデーである。メーデーは、労働者のお祭りで、そのスローガンは「万国の労働者よ団結せよ」である。
農村にもお祭りがある。秋の収穫を祝うお祭りである。集落にもめ事があっても、この日を目途にして、それまでに解決する。そうして集落の全員が、ひとり残らずに集まり、豊作を感謝して、和気あいあいとお祭りを祝う。
メーデーも、労働者の全員が集まって、春闘の成果を祝うお祭りなのだろう。だが、日本では分裂メーデーが続いている。いつまで続くのか。
万国の労働者の団結にも加わっていない。だから、ウクライナ紛争の中にあって、労働者・農業者が権力を握っている中国などを敵視している。ベトナム戦争のころの反帝国主義の抗議行動もないし、考えさえもない。
日本の低賃金の主因は、労働運動の分裂にあるのではないか。そして、それは農業者の低所得の原因でもある。
上の図は、労働政策研究・研修機構、つまり労政研のHPから一部を加工して引用したものである。終戦後まで遡って、労働争議に参加した労働者の人数の推移を示した。
それは、終戦直後に急激に増え、70年ころに山を迎えた。そのころの参加人数は1400万人を超えていた。当時の人口は、子供や高齢者を合わせて1億人程度だったから、参加者の割合は極めて多かった。
だが、いまは6万389人で、以前と比べたらほとんどゼロである。いまや、日本の労働運動は見る影もない。
あのころの労働争議を懐かしんでいるのか。そうではない。労働運動の低迷が社会の沈滞の根本原因になっていることを憂えているのである。
労働運動の低迷が労働者に低賃金を強制し、格差社会を招いている。
◇
そうではない、という反論があるだろう。景気が良くないから賃金を上げられない、という俗論である。低賃金は経済の低成長が原因だ、という責任をあいまいにした珍説である。
たしかにそこには相関関係がある。だが、相関関係にすぎない。因果関係ではない。因果関係は逆で、低賃金が低成長の原因である。
労働者が低賃金に耐えているから、技術革新が起こらない。技術革新によって利益を生み出そうという動機がなくなる。賃金をさらに低くして利益を生み出すほうがいい、と考えるようになる。
これでは、低賃金がさらに進む。技術発展による生産力の向上は望めない。それだけではない。社会の活力が失われる。
いま、日本は、こうした迷路の中にある。脱出するには、労働運動の活性化しかない。
低所得の農業者も、連帯を惜しまないだろう。
(2023.05.15)
(前回 文明の交代は近い)
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