シンとんぼ(53)食の安全とは(11)毒性を考える2023年7月22日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。現在、「毒性とは何か」をテーマにすえており、毒性を科学的にとらえて身近なものと比較しながら毒性を考えている。
前回、毒性を調べつくされている農薬と、何らかの健康被害を起こす可能性があるが詳細が分かっていない普通の食べ物に含まれている物質とを比較した場合、どちらが本当にリスクのあるものなのだろうかと述べた。
農薬は、害虫を含む我々昆虫、あるいは菌類などの病原菌、雑草にとってみれば確かに毒性物資に違いないが、体重が数グラムの害虫を駆除するために必要な量は極わずかな量であり、体重が害虫の数万倍も大きな人間にとっては全く問題のない量だろう。
といっても、これだとイメージがわかないと思うのでかなり乱暴だが具体例を示してみよう。
まず体重2gの害虫Mがいたとして、それを駆除する農薬Aをナスに散布した場合の有効成分付着量を1平方センチメートルあたり1マイクログラムとする(農薬によって異なるが実測でその位と言われている)。これが直径5㎝、長さ10㎝のナスに散布されると、ナス1本(表面積157平方センチメートルとする)あたりの農薬Aの有効成分付着量は157マイクログラムとなる。
害虫Mは農薬Aの1マイクログラムで駆除されるので、体重2gの害虫Mの致死量は体重1gあたり0.5マイクログラムである。かなり乱暴だが、体重1gあたりの致死量は人間も同じとすると、日本人の平均体重50kg(50,000g)の人の致死量は、50,000×0.5マイクログラム=25,000マイクログラムとなる。この量を農薬Aが散布されたナスで摂取しようとすると、ナス1本に付着している農薬Aの量は157マイクログラムなので、25,000マイクロg÷157マイクログラム=159本となる。農薬Aを散布したナス159本を一気に食べることで体重50kgの人の致死量に達する。
実際にナスを致死量に達する159本も食べることはまずないだろうし、農薬Aが付着したナスを3本程度食べても、それで摂取する農薬Aの有効成分量は3×157=471マイクログラム程度であり、致死量の約53分の1に過ぎない。なので、農薬が残留している野菜を通常の食べ方で食べても健康被害が出る心配は全くなく、しかも、流通している農産物の大半は残留農薬不検出なので、正しく農薬を使用して生産された農産物をバリバリ食べても健康被害が発生することはまずないだろう。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(171)食料・農業・農村基本計画(13)輸出国から我が国への輸送の状況2025年12月6日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(88)ジチオカーバメート(求電子剤)【防除学習帖】第327回2025年12月6日 -
農薬の正しい使い方(61)変温動物の防除法と上手な農薬の使い方【今さら聞けない営農情報】第327回2025年12月6日 -
スーパーの米価 前週から23円上昇し5kg4335円 過去最高値を更新2025年12月5日 -
支え合い「協同の道」拓く JA愛知東組合長 海野文貴氏(2) 【未来視座 JAトップインタビュー】2025年12月5日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】『タコ市理論』は経済政策使命の決定的違反行為だ 積極財政で弱者犠牲に2025年12月5日 -
食を日本の稼ぎの柱に 農水省が戦略本部を設置2025年12月5日 -
JAの販売品販売高7.7%増加 2024年度総合JA決算概況2025年12月5日 -
ポテトチップからも残留農薬 輸入米に続き検出 国会で追及2025年12月5日 -
生産者補給金 再生産と将来投資が可能な単価水準を JAグループ畜酪要請2025年12月5日 -
第3回「食料・農林水産分野におけるGX加速化研究会」開催 農水省2025年12月5日 -
新感覚&新食感スイーツ「長崎カステリーヌ」農水省「FOODSHIFTセレクション」でW入賞2025年12月5日 -
(464)「ローカル」・「ローカリティ」・「テロワール」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月5日 -
【スマート農業の風】(20)スマート農業を活用したJAのデジタル管理2025年12月5日 -
「もっともっとノウフク2025」応援フェア 農福連携食材を日替わりで提供 JA共済連2025年12月5日 -
若手職員が"将来のあるべき姿"を検討、経営層と意見交換 JA共済連2025年12月5日 -
IT資産の処分業務支援サービス「CIRCULIT」開始 JA三井リースアセット2025年12月5日 -
「KSAS Marketplace」に人材インフラ企業「YUIME」の特定技能人材派遣サービスのコンテンツを掲載 クボタ2025年12月5日 -
剪定界の第一人者マルコ・シモニット氏が来日「第5回JVAシンポジウム特別講演」開催2025年12月5日 -
野菜との出会いや季節の移ろいを楽しむ「食生活に寄り添うアプリ」リリース 坂ノ途中2025年12月5日


































