【スマート農業の風】(11)F1のピット作業風の田植え 直進自動・田植えロボで変わる農業2025年1月29日
スマート農業といわれて、実際に動いているシーンを目にすることは難しいです。数年前に放送のあった無人運転もしくはロボット農機をテーマにしたTVドラマでさえ、無人のコンバインやトラクタが大きな指令室でリモコン操作で動いている空想特撮ドラマのような設定で実感がわきませんでした。もちろん、これは現実とかけ離れすぎているから思った感想です。

この連載でたびたび言っていますが、スマート農業の華々しい場面を目にすることは難しいんです。かなりの部分で目立たない変化が多く、この世界で仕事している人間の目線でいえばずいぶん進んだように見えることも、一般の人の目線で見れば大して進んでいないと見えることが多くあります。
代表的な例をあげると、xarvio(ザルビオ)フィールドマネージャー(以下ザルビオ)という衛星画像とAI分析を活用した栽培管理支援システムがあります。いままでの米の生産は、農家の勘や経験から「このように育てれば大丈夫」「例年の天候と比べると少し寒いので成長が遅れているな」など圃場の状態を、確認しながら栽培するのが普通でした。栽培指導員などが、こまめに回ってくる地域は、指導員の現地調査により、米の生育ステージを確認しながら、収穫時期や栽培のタイミングを見ることもできていました。
さてザルビオは、圃場を電子地図上に登録して、米の品種、田植えをした時の長さ、田植え日、田植えの時にどんな薬剤を投入したかを入力します。それだけで圃場の平均気温などを参考に稲の成長を分析し予測していくことができるのです。あくまで予想なので実際、稲の状態との比較確認は必要ですが、いままで、勘と経験に頼ってきた米の生産と比べると、ランクが別な場所にいることがわかると思います。加えて、日々の温度変化から病気の発生を知らせるアラートや、田植え時に入れた薬剤の切れるタイミングでの次の薬剤の散布提案などをしてくれます。
自動車の運転に例えるなら、手書きの地図や言葉で伝えられた内容をもとに目的地に向かっていた運転から、カーナビの指示で目的地に向かう運転ぐらいの差があるのです。
生育予測とは別な項目となりますが、ザルビオの機能をもうひとつ伝えます。ザルビオで電子地図上に登録した圃場は、衛星写真をもとにした生育マップを見ることができます。生育状態を可視化した地図は、簡単な加工で追肥をおこなう際や、翌年の田植え時に可変施肥をおこなうことが可能となります。もちろん、可変施肥には、可変施肥対応の田植え機やブロードキャスターが必要となります。ただし、可変施肥のデータ作成で困っていた人たちには、ザルビオを導入することで簡単に可変施肥データを作成することができるようにりました。
ここまで、ソフトウエアのスマート農業について説明してきましたが、もうひとつわかりやすいスマート農業があります。それは田植え機の進化によるものです。
現在の新しい田植え機は、直進自動だけでなく、田植ロボといわれる旋回や植え付け開始もすべて自動でおこなうことができるものがあります。田植えの歴史は、この50年で大きく変わっており、親族を集めての大きなイベントであった手植えでおこなう田植えから、歩行田植え機による追従作業を経て、大型の乗用田植え機に移行してきました。乗用田植え機の登場で、作業時の人数は少なくなってきましたが、苗の運搬や補充などで一定数の人間が必要な作業でもあります。
そこで、先に説明した直進自動や田植えロボの登場により、さらに田植えの形が変わってきています。これらの機械は、田植えの最中、オペレータが運転という作業に従事する必要がなく、オペレータが肥料や苗の補充をしながら田植えを続けることが可能となりました。
北陸のとある地区で目にした田植えは、まさにF1のピット作業のような田植えでした。区画整理され、大きめに設定された圃場は、縦長さがあり、往復でじゅうぶん苗の補充が可能となります。道路際には、苗を運搬してきた補助者がおり、畦畔に苗補充でやってきた田植え機に向かって、苗の供給と肥料袋の供給を同時におこないます。その際、田植え機のオペレーターは、邪魔にならないように道路に移動して作業の終わりを待つだけです。
充てんの作業が終わり、オペレーターが田植え機に乗り込み作業を開始すると、補助者は水路で苗箱を簡易的に洗いながら、軽トラから補充用の苗を出して次の準備をおこないます。作業の合間に苗の補填のため、軽トラを使った保管場所から苗を持ってくる作業も同時におこなうんです。これらすべての作業が、きれいにはまっていてとても美しく見えました。1ヘクタールの圃場をものの数分で終わりにする作業時間の短さは、作業時間の低減にも役立っていると言えます。
いまでも、補充用の苗をオペレータが自ら田植え機に運んで作業をおこなっていることもあるでしょうが、新しい技術の搭載された機械があれば、時短につながる活用法を生産者が見つけ、スマート農業を生かせるように進めるのもひとつの方法ではないかと、筆者は思います。
スマート農業はいろいろな形があり、これを使えばすべてが便利になります、と言うような技術は少ないものです。生産者やメーカー・JAが考えながら、新しい技術を有効に使える方法を見出していくのも、スマート農業の形であると言えるのではないでしょうか。
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