【浜矩子が斬る! 日本経済】商品券ばらまきで馬脚 「苦しい日本に向かって『楽しい日本』を振りかざすヒラメ男の無神経」2025年3月21日
「石破さん苦しい日本なんですよ」。筆者が日々愛読している毎日新聞の「仲畑流万能川柳」欄にこの句が投稿されていた。今は「楽しい日本」を目指す時だ、という石破茂首相の言葉に対する怒りの嫌味だ。名句である。
エコノミスト 浜矩子氏
石破氏の「楽しい日本」論は、今年の1月、第217回国会冒頭の総理大臣施政方針演説の中に登場する。いわく「故・堺屋太一先生の著書によれば、我が国は、明治維新の中央集権国家体制において『強い日本』を目指し、戦後の復興や高度経済成長の下で『豊かな日本』を目指しました。そして、これからは『楽しい日本』を目指すべきだと述べられています。私もこの考え方に共感するところであり、かつて国家が主導した『強い日本』、企業が主導した『豊かな日本』、加えてこれからは一人一人が主導する『楽しい日本』を目指していきたいと考えます」。
さらに、この「一人一人が主導する『楽しい日本』」がどんな日本なのであるかという点については、次のように言っている。「『楽しい日本』とは、すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、『今日より明日はよくなる』と実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていける。そうした活力ある国家です」。
よくもまぁ。ここまで歯が浮く内容空疎な美辞麗句をてんこ盛りに出来たものである。安心・安全・夢・多様な価値観・自己実現・活力。今時風なフレーズをありったけご用意してみました。そんな感じである。こんなにも、下手な厚化粧で塗り固められた日本のどこが楽しいのだろうか。
そもそも、今は「楽しさ」を追い求めている場合か。もっと真面目に、真摯に、重く今日の内外情勢を受け止めてもらいたい。上出の「石破さん苦しい日本なんですよ」の名句には、「楽しい日本」論がいかに読み手の神経を逆なでしたかが実によく滲み出ている。「今日より明日はよくなる」という言い方にも、カチンと来た国民は多いだろう。苦しい今日を何とか生き抜こうとしている人々の目の前に「よりよい明日」をぶら下げることが、どんなに空しくどんなに苛立たしい感情を呼び起こすか。筆者が「ヒラメ男」と命名した石破首相には、この辺のところがまるで解らないらしい。
確かに、ヒラメ男さんの感性は我々一般人とはかなり違うようだ。そのことが、ここに来て発生した「商品券配布事件」の中にしっかり現れていた。ご本人が主催したパーティへの出席者に、もれなく10万円相当の商品券を配った。参加者へのおみやげのつもりだったし、自腹で調達した。だから、政治的に何ら問題になるようなところは無い。そうご本人は言い放った。こんなおみやげを差し上げた方も、頂いた方も、さぞかし、いい気分だったろう。双方にとって、その場はとても「楽しい日本」だったに違いない。
市井の人々がコメやキャベツの高値で苦しんでいる今この時に、ああいう楽しさに浸っていることを恥じ入る気持ちはないのか。ヒラメ男が棲息する海底においては、他者の状況に思いを馳せるような習わしは共有されていないのか。そういう習慣を持ちわせていないヒラメ男に「多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い」などと言われても、片腹いたし。
ウクライナの人々が筆舌に尽くし難い辛酸を耐え忍んでいる。ガザで悪夢が日常となっている。綱渡りの日常の中で、闇バイトに誘い込まれてしまう若者たちがいる。こんな現実の中で、一国の政治の最高責任者が、その公式発言の中で「楽しさ」を口にする。そういうことでいいのか。そこには、どうしても不謹慎さを感じてしまう。
今の日本が目指すべきなのは、「優しい日本」なのではないのか。世界中で、世界中に対して最も優しい。そんな日本を目指してほしい。
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