【今川直人・農協の核心】農産物需給見通しが示す農協の方向(2)2025年3月24日
拡大に向かう米粉・飼料用米
アジアでは米の輸出が増加し、小麦・大豆は需要と輸入が増加する。日本の政策は米を小麦粉に代わる米粉、トウモロコシに代わる飼料用米としての利用に転換し、かつ麦と大豆を増産することである。
令和7年は「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」(2009年制定)の基本方針策定の年(5年ごと見直し)である。米粉の需要は平成29年度まで2万トン程度で推移していたが、米粉に適した品種の開発、商品開発・コストダウン等により需要が増加し、原料米の生産拡大が課題となっている。飼料用米作付面積は令和3年産以降4年連続で基本計画の令和12年目標の作付面積9.7万haを上回っている。行政・農協による省力技術普及努力、農協による一元集荷、飼料用米の活用による畜産物のブランド化等の成果である。課題は主食用と同水準の単収の大幅引上げである。研究機関の実証単収で720Kg(12俵)を超える品種が10指に余る。
異業種の農業参入
ソ連のコルホーズ(集団農場)は生産協同組合であった。ロシア移行(1991年)前から土地改革・集団農場改革が進められ、現在の経営形態は、①農業組織(コルホーズ構成員の集団的持ち分を借りて穀物・食肉を中心に生産する大規模経営)②個人副業経営(小規模自給経営)③農民経営(個人独立農場)の三つである。ロシアは農産物純輸入国であるが、純輸出国になるのも近いと思わせる輸出の成長が続いている。日本の政府系研究機関のロシア農業研究が盛んである。
研究機関の報告等で、「アグロホールデング」がしばしば取り上げられる。コルホーズを継承する前掲①の農業組織を傘下に収め巨大な農地集積と農業生産、輸出に進出する企業グループの総称である。様々な業種が参入し、貿易相手国(日本を含む)参加もあり、大規模なものでは数十万 haの農地を有し、拡大を続けている。異業種の経営感覚、資本力=技術力がロシアの農業生産力を押し上げているものと思われる。
農協に求められる高い自由度
「食料・農業・農村基本法」改正時に「食料自給」が後退したと言う指摘があった。相手国の自給率を低下させる輸出を促進するとしながら自国は「食料自給」とする訳にいかないからではと理解していた。しかしそういう時代ではないようである。農水省の「食糧・農業・農村基本法改正のポイント」(令和7年3月版)は、拡充・新設された項目に解説を加えている。食品産業の発展では「海外における事業展開の促進」、輸入の安定化では「輸入の相手国への投資の促進(民間企業による主要な穀物生産国の集出荷施設や港湾施設に対する投資への支援)」、新設された輸出促進では「輸出品目団体の取組の促進」・「輸出相手国における販路拡大支援(輸出支援プラットフォーム等)」などが記されている。ロシアのアグロホールデングは「輸出品目団体の取り組み」とイメージが重なる。
組合貿易は農産物の輸入も行っていた。現在農協は、開発輸入に近い飼料穀物は別にして、農業振興を促進する立場から熱帯産品、端境期、特定部位(畜産)に限るなど農産物輸入については慎重である。このことは原則的に妥当である。しかし、加工部門、店舗そのたの食品供給の場で消費者の期待を背負う立場にもある。
ロシアの農業経営体「農業組織」は生産協同組合である。社会主義国で多く見られた農業における生産協同組合(生産手段の共有)は不効率性等の故に停滞気味である。日本では、農業は個人経営や、高々(小規模の)法人に限定して考えられる。何か意義があるのであろうか。「農業組織」が単協の農業経営部門で、アグロホールデングが連合会という形態が共存しても何ら不都合がないのではなかろうか。生産協同組合は市場経済下にあって一種の(民主的運営の)「株式会社」である。農業振興・正組合員主体の枠組みの中で、より自由度の高い活動を期待したい。
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