【今川直人・農協の核心】農産物需給見通しが示す農協の方向(1)2025年3月17日
学者の先見性
2006年に郡山市に福島県農業総合センター(県農業試験場)が設立された。設立間もない時期に郡山市のある業界団体がこれを見学した。参加した知人は感心しきりであったが、畑で目にすることがなくなった大豆の実験圃場(相当広い)があったことに疑問を呈した。
大豆は世界各国で強い関心を持たれている農産物である。将来増加するアジア・アフリカの人口を支える優れた植物性蛋白であること、一旦栽培が途絶えると技術者を育てるのに30年かかること、さらに海外では部位ごとの研究が進められていること等、大豆の重要性を聞く機会があった。昭和40年のことである。それを説明すると知人はすぐ納得し、試験場の意義を再認識したようであった。世界の大豆の70%が油糧用で畜産も支えている。
米大陸・豪洲・欧州からアジア・中東・アフリカへ
農水省は2019年9月に「2050年における世界の食料需給見通し」を公表した。2014年の「気候変動に関する政府間パネル」を踏まえて予測したものである。また、農林水産政策研究所が開発した世界食料需給モデルを用いて10年後の「世界の食料需給見通し」を毎年公表している。国連は2機関共同で、「OECD-FAO 世界食糧需給見通し」(10年後見通し)を毎年公表している。
2050年見通し(2010年が基準年)では、農地と食料について(a)農地(耕地)は微増(オセアニア、中南米、アジアが増加、北米とアフリカで減少)、(b)人口増と経済成長で食料需要量が1.7倍、穀物生産量が1.6倍、油糧種子が1.7倍(油糧種子は菜種、大豆、落花生、ゴマなど)になると予測している。そして、主要農産物の地域的な変化は、①米大陸、オセアニア、欧州では生産量が増加し純輸出量がさらに拡大する。②アフリカ、中東 では、主要作物の生産量は増加するものの、人口増加等による需要量の増加で純輸入量が大幅に増加する。③アジアでは米の生産量・輸出量は増加するが、小麦・大豆の需要量が増大し輸入量が増加する、等と見通している。
OECD-FAO見通しは貿易量、価格が詳細でバイオエネルギーとしての農産物等を取り扱っている。
予測・見通しを現実に活かす時代
上記需給予測はいずれも主要農産物の地域別需給見通しを実数で示す定量分析である。高い現実適用性を持っている。
世界需給モデルは、肉類(牛、豚、鶏、羊)、乳製品等を含む20品目について国際価格の見通しを含め需給を予測している。集計は8地域であるが、予測した31か国・地域のうち当該品目に関わりの大きい国の需給見通しを参考として表示している。
現状と見通しに立って、日本がどのような方向に進むべきか。農協は組合員にどう働きかけ、自ら何に取り組むべきか。既存の(自縄自縛の)枠組みにとらわれず、わき見をせずに最も重要なことに目を向けることが求められている。
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