【浜矩子が斬る! 日本経済】タリフマン来る:アイスマンとの違いと共通点 "攪乱力"冷静に分析を2025年4月4日
「我はタリフマンなり」。ドナルド・トランプ米大統領のこの宣言を耳にした時、筆者の脳裏にもう一人の「マン」のイメージが浮かんだ。その男は「アイスマン」だ。「アイスマン来る」というお芝居がある。20世紀米国の劇作界を代表するユージン・オニール(1888~1953)の大作の一つだ。
エコノミスト 浜矩子氏
アイスマンはカリスマ度の強い好成績セールスマンだ。アイスマンの本当の名前はヒッキー・ヒックマン。ヒッキーは、ダウンタウン・ニューヨークのしけた宿屋兼飲み屋に、半年に一度ほどの頻度でやって来る。そこで彼を待ちわびているのは、ひたすら飲んだくれで役立たずの連中だ。彼らの仲間の中で、唯一、現実世界の中で成功を博しているヒッキーが登場して、楽しい宴を繰り広げてくれる。それがこの落ちぶれ集団のお待ちかねイベントなのである。ところが、今回のアイスマンことヒッキーの到来は、それまでとはかなり異なる味わいのものとなり、一同に衝撃を与える。
ここから先の展開を語り出すと、「ユージーン・オニール論」の領域に踏み込んでしまい、本欄の趣旨からどんどん遠ざかってしまう。それは避けて、話をアイスマンからタリフマンに移さなければならない。ヒッキー・ザ・アイスマンとトランプ・ザ・タリフマンは、もとより、別物だ。アイスマンの方は、実を言えば悩み深き人間だ。彼がその心境を吐露する長広舌は、このお芝居のハイライト場面だ。
トランプ・ザ・タリフマンは悩み深き人間ではなさそうだ。次に誰をどうやっつけるのが最も得策か。これについては、悩むことがありそうだ。だが、我と我が身の在り方について、内省の淵に陥って煩悶することはないだろう。ただ、アイスマンとタリフマンには、一つの大きな共通点がある。
この共通点とは、攪乱(かくらん)力である。アイスマンが来る時、木賃宿の面々の世界は一変する。従来は、わびしい深酒の世界がにぎやかなパーティー会場と化すのであった。しかしながら、今回は陽気さの代わりに不安と狼狽と右往左往が充満するのであった。タリフマンが2回目の大統領選に名乗りを上げた時、世をはかなんでくすぶっていた人々は、自分たちの世界が一変するかも、と考えた。タリフマンについて行けば、日陰者の我らが、ついに日の当たるところに出て行けるかもしれない。
世界も、ひょっとすると、タリフマンの登場のおかげで、諸々の閉塞状態が打開されるかもしれないと一定の期待を抱いた。彼の「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」大作戦によって、米国経済がそのダイナミズムを取り戻せば、グローバル経済にとってもいいことじゃないか。そんな観測が飛び交って、世界の投資家たちがかなり色めき立った。毎年、年頭にスイスで「ダボス会議」というのが開かれる。そこには、世界中から大物経営者や政治家たち、名うてのジャーナリストたちが集結する。今年のその場では、もっぱら「アメリカにアニマル・スピリッツが蘇(よみがえ)る!」という期待感の心地良さが共有されていた。
ところが今、タリフマンが「米国が解放される日」を宣言したことで、様相は一変している。高関税政策で、米国を呪縛から解き放つ。米国をがんじがらめにして、いいように搾取して来た国々に鉄槌を下す。タリフマンはそう豪語している。この展開が、世界をパニックに陥らせている。楽観的な経済見通しは、一転して、グローバル不況の展望にとって代わられた。
この狼狽がとても怖い。特に、日本が怯え上がり切っていると思う。ショックで思考停止状態に陥っている。これはいけない。冷静にタリフマンの言動を分析すべし。場末の酒場の人々が、アイスマンの言動に振り回されたように、タリフマンに翻弄(ほんろう)されてばかりいたのでは、不幸になる一方だ。
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