新米を5キロ4000円以上でも買う人の割合18.3%【熊野孝文・米マーケット情報】2025年8月12日
首都圏のコメ卸が記者懇談会を開催して直近の決算概要を公表した。このコメ卸は精米販売事業の他、炊飯事業、冷凍米飯事業なども手掛けていることからコメ価格高騰が各事業にどのような影響があったのか聞いてみた。精米事業においては、スーパー等量販店に納入する6年産銘柄米が端境期に品切れを起こさないように売りつなぐために販売価格を値上げして販売量を抑制しようとしたが、販売量が落ちなかったという。品切れを起こす可能性もあったが、備蓄米の投入が決まり代替品が充当されたことによって6年産銘柄米を何とか売りつなぐことが出来た。販売価格は、仕入価格以上の値上げでスーパーでの店頭価格は軒並み5キロ4000円以上になったが、7年産米は3000円台で販売できるように仕入れ対策を講じるとしている。
コメ価格高騰がコメ卸にもたらした影響と言えば、各社とも売上高が急増したことだろう。この卸の売上も前期に比べ146億3500万円、率にして30%も増え、629億9300万円になり、純利益は2倍の14億2400万円という好決算になった。量販店向けの精米販売については「このままでは端境期までに精米販売を続けられないという見通しで、販売量をセーブしなければならず、大幅に売価を値上げしたが、それでも意図しないぐらい数量が出てしまった」と言う。その後、備蓄米が放出されたことによって不足分が充当されたことで品切れを起こさずに売りつなぐことが出来た。炊飯事業は原料米が大幅に値上がりしたが、製品炊飯米の値上げ交渉には時間がかかり「このタイムラグが経営上のリスクになった」としている。経営上のリスクとしては、例として関税払いの外国産米を1万t仕入れたとして、この価格がkg100円値下がりすると10億円の差損を被るとして、そうしたリスクを抱えていることを強調していた。そのうえで7年産米の仕入れに関しては、すでに関東の早場米の交渉が始まっており、その仕入れ価格については「60kg3万円が上限目途」としており、それ以上は危険水域と見ている。
7年産米上限3万円と言う見方については、業務用専門小売店も同じような見方をしている。この小売店は入札売却された備蓄米を仕入れて外食店などにコメを供給し続けることが出来たが、この時の納入単価はkg700円であった。この売価で売り切ることが出来たとしており、新米の仕入れ価格が60kg3万円であれば、業務用としてkg700円でも販売が可能としており、大手卸もそうした読みがあるのだろうと言っている。最も不思議なことは、随意契約の備蓄米放出で一時、投げ物が出た外国産米だが、ここに来てそうした売り物が引っ込んでしまったこと。外国産米取扱い業者によると、その原因は、ある商社系食品会社が大手コンビニベンダーや冷凍米飯企業に大量にカルローズや豪州米を売り込み、納入契約が成立したためだという。その背景について、7年産国産米の価格がkg500円以下には下がらないという予測があり、需要者側も不安定な国産米より、確実に仕入れられる外国産米を選んだということなのだろうと見ている。実際、7年産米の生産量は極めて不安定だと言わざるを得ない。
以前、稲の高温障害の専門家に取材したところ、その専門家は「高温障害は白未熟粒の発生にとどまらず、稔実(ねんじつ)しないという障害を引き起こすことさえある。フェーン現象などで35度を超える高温になってしまうと、その時が受粉のタイミングであれば花粉がダメになって不受精粒になる可能性が高い。イネの花は正午の前頃の午前中1~2時間を中心に開花し、同じ花が咲くのは一度きり。その時間帯に異常な高温になると花粉がダメージを受ける」という。今、35度を超える日はざらにあり、それが開花期に当たった場合、不稔になるのだ。不稔になっているか乳白になっているのかは籾摺りしてみないとわからないので、収穫時にどのような品位になっているのか気がかりだ。
それにもまして意外と言うべきデータが公益財団法人流通経済研究所から8月4日にプレスリリースされた。それは同研究所が備蓄米に関する消費者調査を行った結果で、その中に「令和7年産米の新米を買いたいと思う価格(税別)」の回答が出ており、それによると5kg3500円以上4000円未満であれば買うと答えた人の割合が28.3%、4000円以上でも買うと答えた人の割合が18.3%もいたことで、合計すると46.6%にもなる。こうしたアンケート結果を見せられると備蓄米販売で列が出来ていた光景は何だったのだろうと思ってしまうが、この結果だけを見ると消費者の新米嗜好は依然根強いものがあるとしか言いようがない。盆明けの新米取引会も3万円がベースになるかもしれない。
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