AIは7年産米相場動向予測になんと答えるのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年8月26日
旧知の米穀業者からAIが7年産米の相場動向予測に何と答えたかというメールが送られてきた。AIの答えらしいと言えばそれまでだが、人間が実際の取引会で出している答えは摩訶不思議としか表現のしようがない内容だ。先週末に都内で開催された業者間の席上取引会では、新米茨城コシヒカリ1等が置場3万3700円(税別以下同)、にじのきらめき1等が3万1800円、千葉ふさこがね1等が持込み3万2000円で成約した。新米の取引会が行われるたびに値上がりしている状況で、なぜ値上がりしているのか首を傾げてしまう。今週28日にはクリスタルライスが全国規模の取引会を行う予定で、出回りが早まっていることから関東、北陸以外、北海道、東北の新米も出て、これらも不思議な価格で成約するかもしれない。
先週22日に都内で行われた業者間の席上取引会では、始まった途端に買い声が先行して千葉ふさこがね、茨城あきたこまち、コシヒカリ、にじのきらめき等に買いが入った。最初に成約したのは、にじのきらめきで、産地の集荷業者が3万1800円で売り応じたことから次ぎ次に買いが入り3件成約した。追加の買いが入ったものの売り人が売止めしたことからこの成約件数に留まった。にじのきらめきは、高温耐性の品種として急速に作付面積が拡大しており、食味の評価も高いことから家庭用精米として新米セール用の商材として確保したいという動きが出ている。取引会前の情報交換会では、各地の新米刈取り時期や品位、庭先価格等の情報が伝えられたが、福島県でも8月中にコシヒカリの刈取りが始まるとのことで、地元業者が8月に刈取りが始まるのは初めての経験だとしていた。埼玉でも来週からコシヒカリの刈取りが始まる予定だが、庭先価格の値上がりが予想され、地元の卸もあまりの高値にいくらで購入するか決めかねている状況だという。
価格高騰の筆頭はもち米で、4万円超えは確実な情勢で、その煽りを受け、加工用もち米を契約していた業者に生産者が「キャンセル料を払っても良いから契約を破棄したい」と言って来た。業者側はすでに加工用米としての申請を済ましており、買い手の需要者に対して納入出来ませんでは済まされない。そこで生産者に1俵5000円を追加で支払うことを約束して、なんとかキャンセルを思いとどまってもらった。キャンセルの申し出を受けたのは商系業者だけでなく農協系統にも来ており、最終期限の8月20日にキャンセルの申し出があったことから農協系統の担当者は「今まで長年かかって培ってきた産地と実需者との取り組みは何だったのか?」と肩を落としている。主食用米高騰の煽りを受けているのはもち米だけではなく、清酒向け原料米も同じで、一般米も加工用米も仕入れ価格が急上昇していることから大手酒造メーカーの中には「そんな高いコメは使えない」という理由で減産に踏み切った酒蔵もいるという。
AIが答えた7年産米の相場動向予想とは「価格上昇につながる可能性のある要因として
• 生産コストの上昇: 肥料や燃料などの高騰、物流コストの増加(2024年問題など)が生産者の負担となり、価格に転嫁される可能性があります。
• JA(農業協同組合)の戦略: JAは卸売価格を維持するため、農家に対して高い概算金(収穫前に支払われる前払い金)を提示し続ける可能性があります。
• 構造的な供給不足: 長年の減反政策による作付制限が、構造的な供給不足を引き起こしているという見方もあります。
• 気候変動の影響: 猛暑や少雨などの異常気象が再び発生した場合、作柄が悪化し、価格高騰につながる可能性があります。
価格下落・安定につながる可能性のある要因
• 豊作への期待: 令和7年産の作付面積が増え、天候にも恵まれれば、供給過剰となり、価格が下落に転じる可能性があります。AI予測モデルの中には、全国的な豊作を見込み、徐々に価格が下落すると予測するものもあります。
• 政府の備蓄米放出: 令和6年産米の価格高騰を抑えるために政府が行った備蓄米の放出が、市場価格の安定に一定の効果をもたらしたとされており、今後も同様の政策が行われる可能性が考えられます。
これらの要因を総合すると、専門家の間でも、以下のような様々な予測が出ています。
• 高値維持・上昇: 「来年秋(令和8年産が出回るタイミング)まで5kg4200円程度の水準が続く可能性が高い」とする見方や、2025年通年でさらに価格が上昇すると予測するものもあります。
• 下落: 「2025年産米は9月以降2,000円台/5kgになる可能性あり」とする予測もあります。
要するに「上がる要素もあれば下がる要素もある」という答えで、それ以外ない100%正解の答えなのだが、それは人間が知りたい答えとは違う。人間は未来が知りたいのだが、それにはAIも答えてくれない。そんなことを質問するより「今のコメ政策はおかしくないですか?」と訊くべきだったのかもしれない。
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