コメ騒動にみる階級闘争の現形態【森島 賢・正義派の農政論】2025年11月25日
●鈴木農相のお念仏
米価下落の予兆が見える。
本HPに寄稿している熊野孝文氏の調査によれば、全国の各地で、コメを高値で購入契約したものが破棄されている。米価が先行き下落することを予想しているからである。
これは、鈴木憲和農相の失政ではないか。だが、農相は言い逃れするに違いない。「米価は市場で決まるものだ」とか、「米価は需要と供給で決まるものだ」、とか。
そうして、「政治はコメ市場に関与すべきでないし、米価にも関与すべきでない」とか、「実際に、政府はコメ市場に関与していないし、米価に関与していない」、とか。
市場へ政治が介入しないことは、市場原理主義のお念仏である。こうしたお念仏を唱えることで、財界に忠節を誓い、財界の歓心を買おうとしている。
だが、「おこめ券」は何なのだ。市場への関与ではないのか。米価への関与ではないのか。二枚舌の言い逃れは、止めたらどうか。見苦しい。
●パンやメンがコメに代わる
コメについて、もしも仮に、政治が市場へ関与しなかったらどうなるか。
いまの米価は、消費者にとっては高い。だから、消費者のコメ離れが続いている。スーパーでは、コメに代わってパンやメンの販売に力を入れている。ファミレスでは、ご飯に代わってパンやメンのメニューを増やしている。このままでは、主食さえも外国からの輸入小麦に依存することになる。
だが、いまの米価は、生産者にとっては高くない。米価を下げれば、離農が加速される。今でさえ、数年後にはコメ農家は激減する、という危機的状況にある。米価を下げれば、離農が加速され、コメの国内供給量が加速度的に激減する。その結果、主食さえも、外国からの輸入小麦に依存する度合いを、急速に高めることになる。
このように、米価を下げなければコメ離れ、下げれば離農。つまり、「行くも地獄、去るも地獄」で「進退ここに窮まったり」である。
●食糧自給は国家の尊厳
こうなることを、政治はどう考えるか。
政治を裏で、しかし、根源的に動かしている財界は、どうか。財界に媚びを売っている政治家は、どうか。
彼らは、食糧を外国に依存することに、全く痛痒を感じていない。むしろ、安い輸入食糧で労働力の生産費を下げれば、安い賃金で労働者の搾取を強化できるので賛成している。
その一方で、国民の大多数を占める農業者と労働者はどうか。彼らは、食糧を外国に依存することに反対である。国家としての独立と尊厳を失うからである。
このように、両者の間には根源的な対立がある。
●鈴木農相は農業者・労働者の味方か、財界の傀儡か
いったい、鈴木農相は、どのように考えているのか。
あいかわらず、「政治はコメ市場に関与すべきでない」というお念仏を唱えて、財界に忠誠を誓い続けるのか。そうして、お念仏どおりの農政を実際に行うのか。
そうなれば、国民の大多数を占める農業者と労働者の反対によって、農相の地位を追われるだろう。それだけではない。政治から追われて「タダの人」になってしまうだろう。
農村では、「サルは木から落ちてもサルだが、政治家は選挙で落ちるとタダの人になる」といわれている。
これが、いまの日本の議会制民主主義の到達点であり、歴史を動かす原動力である階級闘争の現在の形態であり、現在の協同主義、社会主義の最前線である。
●鈴木農相に覚悟があるか
もしも、鈴木農相が財界から決別して、農業者・労働者の側に立ち、食糧自給率を高め、日本の尊厳を回復するのなら、消費者米価はコメ離れを防ぐほどに安く、生産者米価は脱農を防ぐほどの高さに維持しなければならない。そして、この2つの米価は同じではないから、その差額は政治が補填しなければならない。そのための法制化を急がねばならない。
鈴木農相に問いたい。この認識があるか。財界に抗して、農業者・労働者の側に立つ覚悟があるか。それとも「タダの人」になるか。
(2025.11.25)
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