【今川直人・農協の核心】農協の農業経営をめぐる環境変化(1)2025年11月25日
1.法人化促進の一環としての農協の農業経営
農協に求められている供給拡大
最近の米や野菜の高騰は長期的な供給力不足の顕在化で、短期的な需給ギャップではない。2023年の農産物価格上昇は輸入生産資材の値上がりつまり外部要因によるものであった。その後の野菜価格上昇は猛暑・異常気象で説明されている。しかし、脆弱化が進む供給体制が根本にあることは国民が等しく認識している。農協はこれに対処する能力を制度的に与えられている。しかし、農産物価格高騰に際してこのことに触れる関係者の声は聞こえてこない。矛先が向かってくることは無いかも知れないが、自らの意思で対処すべき時期に至っている。
東大名誉教授谷口信和氏は出資型法人の展開過程を「部門の拡大」から「部分的対応から総合的対応へ」に至る六つの局面として分析し、現段階を「地域農業発展の総合的拠点」としている(本紙2019年5月30日)。「拠点」の意義は、現在、大きく膨らんでいる。
制度が先行
農協の農業経営に係る法制は受託農業経営(1970年)に始まる。2016年4月の農協等の総合的な監督指針は、事業の意義について「高能率機械などによる大規模経営を可能にし、農業生産力の維持拡大に大きな役割を果たす」と振り返っている。その後、農地所有適格法人への出資(1993年)、借地による直営(2009年)、農業経営規定の書面から総会決議への変更(2022年)と取り組みの促進が図られてきた。農業経営規定決議手続きの簡素化は、農業経営が通常事業の一つであることを制度で示し、農協・組合員双方に意識改革を求めるものであった。競合忌避からようやく抜け出せるかという農協の態勢に対して制度が先行している。
直営が可能になった2009年以降、農地所有適格法人等への出資も増加してきたが、農協の「通常事業の一つ」には程遠いと言わざるを得ない。現在の取り組み状況は直営81JA、293ha(令和5年度総合農協統計表)、農協が出資している農地所有適格法人による農業経営218法人、21,376ha(農地政策課、令和5年1月1日現在)である。実質直営の子会社も出資型に含まれる。数・面積の共に出資型が多い。動向は出資型で把握できる。
法人化促進の一環として
改正食料農業農村基本法第27条は農業法人の経営基盤の強化に必要な施策についての規定である。第2項で、農業法人の経営基盤の強化を図るために必要な施策を講ずる旨が規定されている。農水省はこの規定に基づき、令和6年6月に「農業法人の財務状況の特徴と経営改善のための取組について」を公表した。
農業法人の財務の特徴・他産業との比較、営農類型ごとの目安となる標準的水準の提示(類型・指標とも詳細である)、優良10法人の経営層へのヒアリングなどを通して経営改善に向けて取り組むべき事項を整理している。ヒアリングは収益性、安全性、生産・効率性の観点をもって経営努力を細大導き出している。稲作法人では二毛作や野菜との複合経営による通年生産、畜産系では食品廃棄物の飼料活用によるコスト削減といった、効用は承知しながら疎かになりがちな努力の積み重ねが「優良法人」を作り上げているようである。一部かなり高度であるが、虚飾のない、凝縮された17ページである。
法人による農業振興への行政の強い期待が、農協による農業経営の促進が法人化政策の一環であることを如実に示している。
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