「米価急落の話続出」 公開される現物取引市場がある重要性【熊野孝文・米マーケット情報】2025年11月18日
大手事業所給食会社からいきなり7年産米の購入契約を破棄された農業生産法人は法的手段を講じることを検討している。ただし、仮に裁判に勝ったとしてもキャンセルされた7年産米の在庫差損が補償されることはない。なぜならコメ価格の値下がりが予見できることはないからである。こうした類の話が他方面から聞かれるようになってきた。7年産米の値下がりは集荷時の価格が高値に踊っていたことから差損額の大きさは過去にないくらいの額になっており、契約不履行が起きる可能性が高くなっている。反対に収穫前に生産者と契約した7年産米の納入をキャンセルされたという話も少なくはない。売買契約が履行されないというケースがあるのもコメ業界の特色と言えるのかもしれない。

11月13日に千代田区の中労委ホールで開催された全米工の東日本取引会では21件808tの売り物が出たのに対して、成約したものは3件45tに留まり、成約率はわずか6%だった。
売り物の価格は、茨城コシヒカリ1等置場3万1100円、茨城にじのきらめき1等3万0100円、秋田あきたこまち主体規格外2万4000円、北海道規格外2万3500円、雑未検2万6500円、中米2万3000円、中米380匁以上2万2000円などの他もち白米、もち中米などの売り物も出たが、成約したのは置場2万円の中米、kg500円のもち精米、kg285円のうるち精米だけで大半が買い見送られた。
情報交換会では、全国から40社が出席して各地の情報が紹介されたが、集荷状況に関して商系業者が買入れをストップしていることからその分が農協に持ち込まれているといった情報やうるち米に限らずもち米も急激に値下がりしていると言った情報も伝えられた。主な産地情報の概要は以下の通り。
宮城=集荷はほぼ終わったが、農家は物を持っているところが相当多いように感じる。場所の縛りよりカネの縛りでどこまで買えるのか。精米は備蓄米の搗精が12月まで続くので7年産米を搗精する量は極めて少ない。
山形=くず米の発生は地区によって違うが全体では前年並み程度。価格が高くkg230円~240円していたが今は買い止め。一般米もこれ以上買入れできない状況で生産者は農協へ出荷先を変えている。
福島=玄米は動かず、精米は売れず閑散。パックご飯の製造も各社半分ぐらいの稼働率。
茨城=他県から未検や雑米の売り込みが毎日10、20車単位の売り込みがあるが、出口が見つからない。
千葉=集荷は終わった。農協直売玉はヒモ付になったようだ。価格は3万4000円から3万5000円で先行して逃げている。民間は倉庫に積んでおり年明けに出て来るだろう。くず米は値下がりして200円以下になった。これからどう買い下がっていくのか課題。
新潟=生産者、集荷業者などからもち米を買ってくれという話が多くなっている。最初5万円ぐらいであったが今は3万円から3万5000円ぐらい。それでも動きが良くない。
新潟=毎日「コメを買ってくれ」という話ばかり。くず米は飼料用米の作付けが主食用に廻った分は確実に増える。東北はもっと多く出て来るだろう。
兵庫=一般米も昨年より反当り1俵多く穫れているので、くず米もその分多く、品位も良い。これまで350匁クラスが今年は360匁ある。それでも価格はkg200円までいっていない。農協系統は20円下げると言ってきた。
岡山=県内の一般米は3万1000円から3万2000円であったが、買いをストップした。11月から値下げで農家からの持ち込みも一見さんはお断り。中米を作っても売れないので、来年は良いコメを確保するような動きになるのでは。
佐賀=もち米は高温の影響か胴割れが多い。収量は平年並みにあったが品質は良くない。
全米工はオープンな組織で、情報交換会はメディアに公開されているほか、取引結果も翌日には売り物の件数、数量、価格や成約状況が会員社だけでなく、メディアにも送られて来る。
全米工は設立(昭和57年 1982年)以来、毎月取引会を東日本と西日本で開催しており、一般米に比べ品位の格付けが難しい特定米穀と言う商品を売買していながら、これまでノンデリ(売買不履行)が発生したというケースはない。これは売買当事者が会員社であること以上に取引会で売りに出されたものや成約の数量、価格がオープンにされていることが大きい。
もちろん売買約定の規約はあるが、会員社はその道のプロであり、その自覚があるので取引上のトラブルは自ずと解決される。自由で公平でオープンなコメの現物市場があればそこで取引されるものがノンデリになること自体が極力なくなる。毎日取引が行われ、その成約状況が一般にも公表されることが極めて重要になってきている。
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